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日本のウエディングプランナー_育成プログラム

第1章 ブライダル業界

1. ブライダルの業態
2. ブライダル関連企業
3. ブライダルスペシャリストの職種

第2章 ブライダル市場

1. ブライダル市場とは
2. ブライダル市場の移り変わり
3. ブライダル市場の実態
4. ブライダル市場の地域性

第3章 ブライダルの歴史と慣習

1. 日本の歴史と慣習
2. 欧米の歴史と慣習

第4章 挙式と披露宴のスタイル

1. 挙式
2. 披露宴のスタイル

第5章 婚礼衣裳

1. 婚礼衣裳の種類
2. トータルコーディネート
3. 衣裳業務

第6章 ウエディングプランナーの業務と流れ

1. ウエディングプランナーの業務
2. ウエディングプランナーの業務の流れ

第7章 新規接客業務

1. 新規接客業務とは
2. 新規接客
3. 成約手続き業務

第8章 婚礼打合せ業務

1. 婚礼打合せ業務とは
2. 招待状
3. 婚礼料理
4. スペシャリストによる婚礼商品
5. 引出物と引菓子
6. 披露宴の進行と演出
7. テーブルレイアウトとペーパーアイテム
8. 装飾
9. 重要な書類
10. 手配(発注)業務
11. 最終打合せと確認事項
12. 打合せに必要なスキル

第9章 婚礼施行・進行管理業務

1. 婚礼施行・進行管理業務とは
2. 施行・進行管理

第10章 販売促進

1.ブライダルマーケティング
2.販売促進のツール
3.販売促進企画

付録

1.ブライダルサービス接遇
2.飲料サービスの基礎知識
3.日本の婚姻に関する法律的事項

練習問題

第1章 練習問題
第2章 練習問題
第3章 練習問題
第4章 練習問題
第5章 練習問題
第6章 練習問題
第7章 練習問題
第8章 練習問題
第9章 練習問題
第10章 練習問題

はじめに

 株式会社ジャスマックは1989 年、ハウスウエディングのパイオニアとしてゲストハウスの運営を始めました。「10 組のカップルには10 通りのウエディングを」という思いのもと、従来の日本にはなかったフリースタイルのウエディングのお手伝いをしてまいりました。そのかたわら、2000 年には米国のウエディングプランナーの資格『ウエディングスペシャリスト』を認定する『ウエディングスビューティフルワールドワイド』の日本支部として、ウエディングプランナーのスキルアップと人間力を高めることを目的とした人材育成・教育事業をスタートし、2013 年7 月にはウエディングスビューティフル協会を発足、ウエディング現場の運営から得られる情報をもとに、いま求められているブライダル教育のあり方を常に念頭に置きながら事業に携わっています。

 こうした歩みの中で数年来、米国スタイルのウエディング教育プログラムとともに“日本のウエディング”を学べる教材を望む声が、ブライダル関連の教育現場から高まってきたことから、このたび本書「日本のウエディングプランナー育成プログラム」を作成、上梓いたしました。

 本書は、日本のウエディングの歴史から伝統・慣習、そして現場での様々な実務の内容やその実践方法、さらに現在のブライダル事情まで網羅。最大の特色は、ウエディングの現場を持ち、ブライダル教育に力を注いできた『ウエディングスビューティフルジャパン』ならではの現場の声を反映させた「活きた知識の使い方」や、「研修マニュアルをもとにした実務」まで細部にわたり効率的に学習できる内容になっていることです。結婚を決意したカップルが結婚式を迎えるまでの流れに沿って、どのタイミングでどんな業務を行うのか、その業務に必要な知識は何かをわかりやすく構成し、解説しています。

 カップルのニーズが多様化する昨今、ウエディングプランナーに求められるスキルは高まる一方です。この実務テキストで幅広く実践的なスキルを身につけ、今後のブライダル現場での活動に活かしていただければ幸いです。

株式会社ジャスマック
ウエディングスビューティフルジャパン


CONTENTS

第1章 ブライダル業界

1. ブライダルの業態

 婚礼とは、婚姻を成立させるため、また確認するための儀式であり、人生の通過儀礼である。婚礼には多彩な様式があるが、日本においては一般に挙式と披露宴を行う。挙式は結婚を誓う儀式であり、披露宴は婚姻の報告とお披露目をする祝宴である。

 ブライダルビジネスはそうした「婚礼」を商品化して販売するサービス産業であり、日本には以下のような業態がある。新郎新婦が婚礼を行う際には、そのほとんどがこのうちのいずれかを利用する。また、ブライダルの仕事に就くというのは、このうちのいずれかに関わることを意味する。近年の傾向としてブライダルの業態は、新郎新婦のニーズの多様化に伴って様々な対応が必要となったため、業態による差がなくなりつつある。

1)ホテル

 今日の一般的な婚礼のスタイルはホテルブライダルから発祥し、ブライダル業界はホテルスタイルの婚礼を礎に発展してきた。ホテルとは宿泊施設であるが、その多くに宴会を取り扱う「宴会部門」があり、婚礼は宴会部門の主要な収入源となっている。

 ホテルの婚礼は一般的に、施設内に設けられた神殿やチャペルでの挙式と、宴会場(バンケットルーム)での披露宴で構成される。ホテルブライダルの特徴としては、館内の多種多様なバンケットルームで小規模から大規模まで幅広い婚礼ニーズに対応できること、控室などの設備が充実していること、衣裳・美容・装花・写真といったブライダルに不可欠なサービスの専門業者がテナントとして入っており、新郎新婦が効率よく、かつ安心して利用できる点などが挙げられる。さらにホテルは一般に地域的な知名度が高く、格調の高さやサービスの質も一定以上の水準を期待できることから、フォーマルな婚礼を望む新郎新婦には特に人気がある。

2)専門式場

 専門式場とは、婚礼を専門に取り扱う施設で、第二次世界大戦後に発展した日本特有の業態である。施設およびサービスの内容はホテルに似ているが、多くは宿泊施設を持たない。また、ブライダルが主業であるが、一般の宴会も受注し、双方により利益を得ている所もある。

 専門式場は、互助会系・公共系・一般に区別することができ、また、ブライダルをメインとした業態であるため、華やかなイメージを建物全体で表現していることも大きな特徴である。チャペルや神殿のほか多彩なバンケットルームが用意され、様々な規模の披露宴が可能であること、衣裳・美容・装花・写真などのテナントが入っていること、婚礼専門施設ならではの安心感も、新郎新婦にとって大きな魅力となっている。

互助会制度:会員制。一定期間会費を納め、積み立てることにより、葬儀や婚儀の際の高額な費用負担を軽減するシステム。

3)ゲストハウス

 ゲストハウスは、1990 年代半ばに生まれた邸宅型のブライダル施設である。「ゲストハウス」と称するものの、「家」ではなく商業施設で、宿泊設備も持たないため、主に挙式・披露宴のサービスで収益を得ており、戸建てタイプの専門式場といえる。

 特徴は大邸宅へゲストを招くイメージの婚礼をコンセプトとしている点で、敷地内に庭付き一戸建てを有することが多い。スタイリッシュな施設と他の新郎新婦と顔を合わせることのない「プライベート感」を大切にし、一軒丸ごと、あるいはフロア単位で貸し切れることをセールスポイントにしている。近年都市部では、利便性を重視した新たなビルインタイプのゲストハウスも登場し、フロアを貸し切り、従来の邸宅と同様のコンセプトを打ち出したウエディングを提供している。いずれにせよ欧米スタイルの婚礼を意識しているため、挙式用の施設はチャペルのみであることが多い。

 また、以前は衣裳や美容、装花、写真など、ブライダル関連のテナントが入っていることは少なく、各種アイテムは施設と提携している専門企業からの出張業務などにより手配されていたが、近年は関連事業を内製化する企業も増え、施設内に専門部署を構えるケースもでてきている。ゲストハウスは建物や雰囲気への憧れやプライベート志向が強く、アットホームな婚礼を求める新郎新婦に人気が高い。

4)レストラン

 レストランは、くつろいだ雰囲気とおもてなしの料理を何より重視する新郎新婦から支持を得ている業態である。形式ばらず自由度の高い婚礼が可能であること、少人数の披露宴に向いていることなども魅力とされ、新郎新婦が形式化された婚礼に疑問を抱き始めた1990 年頃から急速に人気を高めた。

 レストランは本来、料理と飲物を提供することが本業であるため、ブライダルはその延長上のサービスの1つに位置づけられ、婚礼であっても料飲サービスに主眼が置かれているのが特徴であった。施設面もブライダルを意識した造りは少なく、レストランスペースを婚礼で使用するという形が一般的で、かつては挙式スペースや来賓控室、新郎新婦の支度室、駐車場などの不備が指摘されやすかった。近年はそうした問題が徐々に改善され、ウエディングの運営を前提とした設備設計をして開業するレストランも現れ、ブライダルデスクを設置するなど、ゲストハウスと同様の施設・サービスを誇るレストランも増えてきている。

5)海外ウエディング

 近年は海外での挙式を希望する新郎新婦も多く、それに伴って海外へ進出し、日本人向けの婚礼ビジネスを展開している企業もある。海外ウエディングとは文字通り海外で結婚式を挙げることで、日本にはない、海外ならではのロケーションに憧れる新郎新婦が、新婚旅行を兼ねてこのスタイルを選ぶことが多い。最も人気の高い地域はハワイ・グアムで、ロケーションの素晴らしさや日本からのアクセスのよさ、日本人観光客の受け入れ態勢が整っていることなど数多くの利点があり、実施組数を見ても他の地域を大きく引き離している。

 挙式・披露宴に関しては、現地に日本企業が進出しているため、日本とほぼ同様のスタイルで行うことも可能であるが、現地では挙式のみ、あるいは挙式と家族の会食を行い、披露宴を行う場合は、日本に帰国後行うことが大半である。しかし、近年は海外での挙式のみで済ませ、披露宴を行わないケースも増えてきている。

 1980 年代までは挙式・旅行とも個人が 自力で手配する必要があったため、手配方法や現地の対応に不安を抱く人も多かったが、近年は海外ウエディング専門のエージェントや旅行会社が国内の各社サロンで打合せをし、挙式・旅行はもちろん、衣裳やヘアメイク、祝宴に至るまで一括手配が可能となっている。海外ウエディングは華やかな反面、いかに安心かつ確実なサービスを提供できるかが鍵といえる。

6)リゾートウエディング

 ロケーションを重視した新郎新婦のニーズは国内を対象としても高まっており、国内リゾート(避暑地・避寒地)での挙式・披露宴を扱うリゾートウエディングの企業も増えている。人気の高い地域は、沖縄・軽井沢・北海道などで、いずれも自然に囲まれ、ホテル・専門式場・ゲストハウス・レストランなどの様々な施設が都市部並みに充実している地域もある。

 舞台がリゾートというだけで一般的な挙式・披露宴が行われる場合もあるが、二人だけの挙式や、リゾート挙式後に居住地で披露宴を催すなど、その需要は多岐にわたる。国内リゾートウエディングは海外と違い、両親や親族、友人が参加しやすいことも大きな特徴である。予約方法は実施地の施設や教会に直接行う場合と、居住地付近の手配会社に依頼する方法がある。

プチウエディング・フォトウエディング
 ブライダル業界は、第二次世界大戦後の経済成長とともに、業界主導で発展してきた。しかし近年は新郎新婦の価値観やニーズが多様化・複雑化した影響で、業界主導のスタイルから、新郎新婦主導のスタイルへと移行し、ブライダル市場の変化にいち早く対応した業態も生まれてきている。その代表が「プチウエディング」である。

 プチウエディングには様々な形態があるが、共通するイメージは「小さな結婚式」で、「挙式+衣裳+記念写真」を中心としたプランを展開する企業が大半を占める。披露宴を催すつもりのないカップルでも「挙式だけはきちんとしたい」「花嫁衣裳を着た写真だけは残したい」と考えていることが多く、従来の「披露宴を中心にした婚礼」を販売する業態では、カバーしきれなかった層を主要のターゲットにした点で急成長してきた。

 また、近年は写真だけを残す「フォトウエディング」にも注目が集まっている。以前のフォトウエディングは、ウエディングドレスの写真を残すのみが主流だったが、近年は景観の良い場所でのロケーション撮影やテーマごとに装飾された専用スタジオなどを使用して撮影するフォトウエディングも人気となっている。
いずれにせよ、新郎新婦のニーズの変化に伴い、様々なカジュアルスタイルのウエディングが出現し、それらを略語で「○○婚」と表現している。


CONTENTS

2. ブライダル関連企業

1)ブライダルプロデュース会社

 ブライダルプロデュース会社とは、新郎新婦が思い描くスタイルの婚礼を形にし、実現することを主業とする企業である。

 業務形態としては、プロデュース会社が施設紹介から婚礼のプランニングおよび打合せ、当日の施行・進行管理までトータルに行うケースと、提携施設にプロデュース会社からプランナーを配属し、その施設の婚礼業務全般を請け負うケースに大別される。しかし近年は、直営婚礼施設を持たないのが一般的であったプロデュース会社が、自社の施設を経営することも増え、事業形態も複雑化してきている。収入源は、新郎新婦から直接得るプロデュース料と、契約している施設からのFB(Food & Beverage =料飲)コミッション、および付帯商品のリベートであることが多い。

コミッション:委託業務に対する手数料のことで、委任・委任状も指す。

リベート:支払い代金の一部を謝礼金・報奨金として支払い者に戻すこと。

2)ブライダルエージェント

 ブライダルエージェントとは、新郎新婦が婚礼施設を検討し選ぶ際に利用する企業である。ここでは二人が希望する婚礼のイメージや予算などをヒアリングし、希望に沿う婚礼施設を紹介する。基本的にブライダルエージェントと新郎新婦の間に費用は一切発生せず、ブライダルエージェントは婚礼施設から、婚礼が行われた後、FB(Food & Beverage =料飲)費用の5~ 10%を紹介料として得る。かつてはブライダルエージェントが主要駅周辺などにサロンを構える形態が多くみられたが、現在は少なくなっている。

結婚相談所
 結婚を希望する男女の出会いをプロデュースするのが結婚相談所である。ほとんどが会員制で、それぞれの写真・プロフィールや相手に対する希望などを登録し、結婚へ結びつけて成功報酬を得ることを目的としている。近年はインターネットを活用した出会いの場を提供する企業も増えており、気軽さから人気となっている。結婚が決まった二人に対して婚礼施設の紹介を行っている企業も増え、ブライダルエージェントと同じく、報酬として婚礼施設から紹介料を得る。

3)パートナー企業(取引先)

 パートナー企業(取引先)とは、婚礼に関連する様々な専門商品およびサービスを提供する企業である。代表的なパートナー企業には衣裳・美容・装花・写真の事業者があり、婚礼施設へテナントとして入る場合と、委託販売契約を結んで商品・サービスを受注する場合がある。基本的に、テナントとして入る場合はテナント料を婚礼施設へ支払い、委託販売では契約内容によるリベートが発生する。

1 衣裳
 新郎新婦が婚礼衣裳を入手する方法は、「借りる」または「買う」方法があり、一般的には「借りる」場合が多く、各婚礼施設では、主に「貸衣裳」を取り扱う企業とパートナー契約を結んでいる。貸衣裳業者は婚礼施設外の店舗で接客する場合と、婚礼施設にテナントとして入店する場合がある。婚礼施設との契約は、テナント料を支払うか、衣裳の売上に対して契約したパーセンテージのリベートが発生するのが一般的である。近年では婚礼施設が直営衣裳室を開設し、貸衣裳業を運営する例も多くなっている。

2 美容
 新郎新婦が婚礼衣裳を身にまとう際には、美粧や美容が施される。美粧とは、美しく化粧し、身なりを飾ることで、美容とは、髪や顔、肌を手入れして容姿を美しく整えることである。その新郎新婦の支度を一般的には「美容」といい、この「美容」を行う企業が、婚礼施設と業務提携し、パートナー企業として業務を担当する。基本的には婚礼施設内に美容テナントとして入るが、施設によっては常駐ではなく、パートナー企業からその都度スタッフが派遣されることもある。婚礼施設との契約は、テナント料を支払うか、美容の売上に対して契約したパーセンテージのリベートが発生するのが一般的である。一部ではあるが、婚礼施設が美容室を直営している場合もある。

3 装花
 花は婚礼に欠かせないものであり、用途も装飾、演出、フラワーアイテムと幅広い。その花に関するすべての業務を行う企業が、パートナー企業として婚礼施設と業務提携を結んでいる。婚礼施設内にテナントとして入る場合と、外部のフラワーショップや作業場で商品を制作し、納品・装飾を行う際にスタッフが出向く場合がある。婚礼施設との契約は、テナント料を支払うケースと、装花の売上に対して契約したパーセンテージのリベートが発生するケースが一般的である。婚礼施設が生花部を設け、直営していることもある。

フラワーアイテム:花で作られたヘア小物やアクセサリー、フラワーシャワー用の花びらなど、小さなアイテムのこと。

4 写真と映像
 新郎新婦は婚礼の記念にプロによる写真や映像の撮影を希望するが、この写真や映像に関する業務全般を請け負うのが、婚礼施設と業務提携を結んだパートナー企業である。婚礼施設内にテナントとして入り、撮影スタジオを運営する場合と、スタジオは持たずにフォトグラファーを派遣し、施設内のロケーションを利用して撮影する場合がある。婚礼施設との契約は、テナント料を支払うか、商品の売上に対して契約したパーセンテージのリベートが発生するのが一般的である。一部ではあるが、婚礼施設が撮影スタジオを直営している場合もある。

5 その他
◆ 引出物・引菓子
祝宴の際に主催者側から招待客に贈る記念品や祝い菓子を取り扱う企業で、婚礼施設内で見本を展示したり、カタログやPCデータを用いたりして商品を案内する。商品決定後は、搬入も行う。婚礼施設へは、売上に対するリベートが発生する。
◆ 印刷物
招待状・席次表・席札などの印刷物を取り扱う企業で、婚礼施設に見本を置き、商品を案内する。商品決定後は印刷業務も行い、納品する。婚礼施設へは、売上に対するリベートが発生する。
◆ 演出
挙式・披露宴で行われる演出商品を取り扱う企業で、ブライダルフェアでの実演や、PR用イメージ画像などで商品を案内する。商品決定後は搬入と、場合によっては当日のオペレーション業務も行う。婚礼施設へは、売上に対するリベートが発生する。
◆ 旅行
ハネムーンなどの旅行商品を取り扱う企業で、婚礼施設にパンフレットを置くなどして商品を案内する。最近では来館者が多い日のみ、婚礼施設内に旅行デスクを構える企業もある。決定後は手配業務を行う。婚礼施設へは、売上に対するリベートが発生する。
◆ ジュエリー
婚約指輪・結婚指輪を取り扱う企業で、ブライダルフェアでの展示やパンフレットで商品を案内する。新郎新婦が購入を希望した場合は、婚礼施設外の直営店舗などで商品を販売する。
婚礼施設へは、売上に対するリベートが発生する。
◆ 配膳会
婚礼当日のバンケットルーム内の料飲サービス業務を担う企業で、婚礼施設から婚礼に必要なサービススタッフの人数の派遣依頼があり、その人数を派遣する。スタッフの雇用形態は様々で、常勤の場合もある。契約内容に沿ったリベートが発生する。

持込料(保管料)とは
 持込料とは、新郎新婦が婚礼施設外で手配した衣裳・引出物などを持込む際に、婚礼施設へ支払う費用のことである。持込料は「保管料」ともいわれ、商品を預かる時点で商品の保管責任義務が婚礼施設側に生じることを理由に請求される。しかし基本的には、婚礼施設と委託業務契約を結んだパートナー企業の売り上げ減を防止し、業務提携を良好に保つことを目的としている。


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3. ブライダルスペシャリストの職種

 ブライダルの業務は多種多様であり、それぞれにスペシャリストを必要とする。各スペシャリストはプロフェッショナルとしての専門知識と技術を習得していることはもちろん、チームワークを円滑に進める「コミュニケーション力」や、新郎新婦とゲストを温かく迎える「ホスピタリティ」も求められる。ブライダルの職種と業務内容、必要なスキルは下記の通りである。

1)ウエディングプランナー

 婚礼施設やブライダルプロデュース会社に在籍し、「新規接客」「婚礼打合せ」「婚礼施行・進行管理」を行う。業務範囲は在籍する企業の体制や方針などによって異なるが、大きく分けると「分業スタイル」と「トータルスタイル」がある。

施行(せこう):「施行」は一般的には「しこう」と読むが、ブライダル業界では婚礼会場の当日に関わる業務を施行(せこう)という。

◆ 分業スタイル
以下のタイプがある。
①「新規接客」・「婚礼打合せ」・「婚礼施行・進行管理」の各業務に分業される。
②「新規接客+婚礼打合せ」と「婚礼施行・進行管理」に分業される。
③「新規接客」と「婚礼打合せ+婚礼施行・進行管理」に分業される。

◆ トータルスタイル
「新規接客+婚礼打合せ+婚礼施行・進行管理」を一人のプランナーがすべて担当する。

 ウエディングプランナーに求められる能力は、新郎新婦との信頼関係を築き、パートナー企業やバンケット内のサービススタッフとのスムーズな連携をはかるためのコミュニケーション力、そして新郎新婦の期待以上の婚礼を叶えるための企画力や提案力である。また、新郎新婦と長期間にわたり関わっていくため、新郎新婦を精神的にケアする支援力、相手の立場に立って真剣に話を聞く傾聴力などのヒューマンスキルも求められる。

ヒューマンスキル:良好な人間関係を築くために必要な能力。技術力や知識力などの「テクニカルスキル」に対する能力で、近年の企業採用では、この両方を備えていることが重視される。

2)ドレスコーディネーター

 貸衣裳店やドレスショップ、婚礼施設内の衣裳室などに在籍し、婚礼衣裳全般の業務を行う。企業によって業務範囲が異なるが、打合せ、フィッティング、コーディネート、衣裳直し、メンテナンス(クリーニング、プレス)、婚礼施設への搬入・搬出、買付け、ディスプレイ、在庫管理などの業務を担う。

ドレスコーディネーターに求められるのは、婚礼衣裳に関する豊富な知識とコーディネートのセンス、お客様が相談しやすい雰囲気をつくるコミュニケーション力、マナーをわきまえた接客技術などである。衣裳選びは新婦の大きな楽しみであり、夢を叶えるひとときでもあるので、満足感を高めるきめ細かな配慮も必要である。

3)ブライダルアテンダント(介添え)

 婚礼施設内に非常勤として在籍し、当日の新郎新婦のエスコートや身の回りの世話を担当する。新郎新婦が来館した時、もしくは支度完了後から披露宴終了後のお引上げまで、婚礼の進行に沿ってサポートするだけでなく、両親や列席者への細やかな配慮も大切な業務となる。

ブライダルアテンダントに求められる能力は、婚礼全般に関する知識、いかなる人とも良好な人間関係を築けるコミュニケーション力、礼儀正しく控えめな態度などである。また、婚礼当日は、温かな気配りで新郎新婦を支え、安心感を与えられる人物であることが望ましい。なお、ユニフォームが和装の場合は「介添え」、洋装の場合は「ブライダルアテンダント」と呼び分けるのが一般的に多いようだが、業務内容は同じである。近年はヘアメイクを担当するスタッフやウエディングプランナーが兼任することも増えてきている。

お引上げ:挙式・披露宴の衣裳とヘアメイクから日常の服とヘアメイクに戻すこと。

4)ブライダルヘアメイクアーティスト

 ヘアメイクサロンや婚礼施設内の美容室などに在籍し、婚礼の美容を業務とする職種である。美容師資格や和装着付け技術の有無によって担当する業務内容が異なり、新郎新婦だけでなく、両親やゲストの美容を行うことも多い。業務範囲は、ヘアメイクの打合せと当日の支度からお引上げまでが基本で、希望があればヘアメイクリハーサルを行うこともある。

ヘアメイクアーティストに求められる能力は、美容技術・着付け技術に加え、婚礼全般の知識、衣裳・ブーケ・花の知識、豊かな提案力とコミュニケーション力など多岐にわたる。新郎新婦の不安や緊張をほぐす気配りや、流行をほどよく取り入れる感性も不可欠である。

5)ブライダルフラワーコーディネーター

 生花店または婚礼施設内の生花部に在籍し、ブライダルフラワー全般の業務を行う。ブライダルフラワーは、ブーケ、装飾、演出、小物と多彩なアイテムで展開される。フラワーコーディネーターの業務も、打合せからデザイン、制作、当日の施行までと幅広い。

ブライダルフラワーは新郎新婦の婚礼のイメージを伝える重要なアイテムであるため、デザイン力、制作技術、装飾技術はもとより、新郎新婦への的確なアドバイスを含めた提案力が必要となる。説得力のある提案を行うには、婚礼全般の知識や衣裳・ヘアメイクの知識、スムーズに打合せを進めるためのコミュニケーション力なども備えておきたい。

6)ブライダルフォトグラファー・ビデオグラファー

 写真館や映像制作会社、婚礼施設の写真室などに在籍し、婚礼写真・動画の撮影やアルバム制作・映像編集などの業務を行う。また、フリーランスのフォトグラファー・ビデオグラファーが婚礼アルバム制作会社や映像制作会社などに所属(登録)し、当日の撮影のみを請け負うこともある。婚礼写真や動画は一生の記念として残る重要なアイテムで、撮り直しもきかないため、ミスが許されない厳しい職種である。

撮影技術およびセンスはもとより、当日の進行を把握して他のスタッフと連携をとるコミュニケーション力、撮影ポイントを把握するための婚礼知識なども欠かせない。さらに円滑に撮影を進めるには、新郎新婦およびゲストに対するマナーを心得ていることも大切である。また、アルバム制作や動画の編集も行う場合、昨今の新郎新婦はデザイン性の高い商品を求める傾向にあるため、高度な制作テクニックも必要となる。

7)ブライダルMC(司会者)

 MCとは「Master of Ceremony」の略で、婚礼の司会進行を専門とするスペシャリストである。司会専門の企業に在籍または所属(登録)し、婚礼当日に婚礼施設へ派遣され、業務を行う。ブライダルMCは、婚礼の進行打合せや演出の提案など、プランナーの打合せ業務の一部を担うこともある。

人前式や披露宴の司会進行を婚礼担当スタッフと連携をとりながら行う必要があるため、婚礼全般の知識、企画・提案力、コミュニケーション力が求められる。また、パフォーマンス力やハプニングにも冷静に対応できるヒューマンスキルも重要である。

8)ディレクター(キャプテン)

 婚礼施設内の宴会部門または配膳会に在籍し、婚礼に関するディレクション業務の責任者として施行確認、当日の進行管理を担当する。新郎新婦との打合せを担当したウエディングプランナーより事前に引き継ぎが行われ、バンケット内のサービススタッフに指示を与えて連携をとりながら、バンケット内での新郎新婦の先導やサポート業務を行う。

ディレクターに求められる能力は、婚礼全般の知識、スタッフとのスムーズな連携をはかるためのコミュニケーション力、洗練されたサービス接遇スキルやマナー接遇スキルなどである。司会者同様、どのようなハプニングにも冷静かつ臨機応変に対応できるヒューマンスキルも必要である。

9)音響オペレーター

 音響専門の企業や婚礼施設内に在籍または所属(登録)し、音響オペレーションを業務とする。当日のオペレーション以外に、音響の打合せから音の編集、場合によっては映像や照明のオペレーションを行うこともあり、音と光で披露宴を効果的に演出する。

音響オペレーターに求められる能力は、オペレーション技術、音楽や婚礼全般の知識、企画・提案力、スタッフとの連携をはかるためのコミュニケーション力などである。最近では新郎新婦が希望の曲をリクエストすることも多いため、曲の編集技術などのスキルも必要である。

10)その他

 ブライダルの仕事は、多くのスタッフのチームワークで成り立っている。前述した仕事以外にも以下のようなスペシャリストが婚礼に関わっている。
◆ 調理士(キッチンスタッフ)
婚礼施設に在籍し、婚礼料理の調理と盛り付けを担当する。
◆ サービススタッフ(バンケットスタッフ)
配膳会または婚礼施設に在籍し、主に料飲サービスを担当する。
◆ 演出オペレーター
演出のパートナー企業に在籍し、婚礼の演出の施行とオペレーションを担当する(花火・光の演出など)。
◆ 装飾スペシャリスト
装飾のパートナー企業に在籍し、婚礼装飾の施行を担当する(バルーンなど)。

コンセプトウエディング
 近年はフリーランスのウエディングプランナーを中心に、装飾や演出など、各分野のスペシャリスト数名とチームを組んで、新郎新婦からニーズを引き出し、ゼロからオリジナルウエディングを創り上げる「コンセプトウエディング」を行っているスペシャリストも増えている。このスペシャリストたちは必ずしもブライダル業界専任とは限らず、それぞれの専門分野で活躍しているケースも多い。いずれにせよ、デザイン性の高い技
術やセンスを兼ね備えていることが魅力の一つとなっているようだ。


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第2章 ブライダル市場

1. ブライダル市場とは

 市場(マーケット)とは、売り手と買い手が存在し、売買をする場を示す。ブライダルの市場は、戦後の経済成長とともに拡大し、複雑化している。第1章で述べたように、売り手には多くの業態があり、それに伴って多種多様な関連企業が存在している。買い手(結婚を考える二人)のニーズも多様化していることから、売り手は買い手のニーズを知り、そのニーズに適合したビジネス戦略を考えていかなければならない。

1)市場調査

 市場調査(マーケットリサーチ)とは、買い手を知り、買い手のニーズに合った商品やサービスを開発するために必要な情報の収集活動である。

2)市場調査の必要性

 ビジネスを行っていく上では、商品やサービスを提供する際、買い手の求めるものを提供しなければ意味がない。そのため買い手のニーズを知ることはとても重要であり、買い手の情報を明確に知ることで、無駄のないビジネスを展開できる。また、買い手の情報の収集だけでなく、同業他社や、それらを取り巻く企業の情報収集も重要である。近年のブライダル市場は比較的速いサイクルで変動するため、市場の動向を早めに察知する必要がある。

3)市場調査の方法

 市場調査の手段は様々であるが、一般的な方法は下記の通りである。

1 買い手のニーズを知る方法
・ メディアからの収集:ブライダル関連のウェブサイトやSNS を通して買い手の動向を探る。
・ アンケート:買い手に対してインターネットや電話を通じて直接アンケート調査を行う。
・インタビュー:買い手にインタビューすることで直接情報を得る。

2 同業他社を知る方法
・同業他社のウェブサイト:他社のサイトから、現在の商品やサービスの情報を得る。
・情報交換の場への参加:同業他社との情報交換の場へ参加し、直接情報を得る。
・情報紙・誌からの収集:関連雑誌などを通じて他社の動向を探る。

3 商圏
 市場調査の範囲の目安は、ビジネスを展開している場より半径20 ㎞圏内といわれている。この範囲が、ライバルとなり得る企業をチェックすべき対象地域である。

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2. ブライダル市場の移り変わり

 日本の婚礼は歴史上様々なスタイルで行われてきた。その中でホテルや専門式場で挙げる婚礼は、かつては上流階級の人々を中心に行われていたが、1970 年代に婚姻数のピークを迎えた頃から、一般の人々もホテルや専門式場で婚礼を挙げるようになってきた。さらにバブル期、すなわち1980 年代後半からは、それまで一部の人だけが行っていた派手で豪華な婚礼を、景気の上昇とともに誰もが行うようになった。

この時期の婚礼がいわゆる「ハデ婚」と言われているものである。有名人の華やかな婚礼も多数行われ、それに憧れた人々が派手さを競い合うように婚礼を行っていた時代である。

 一方、バブル崩壊とともに「ジミ婚」と言われるニーズが現れてきた。しかし、「ジミ婚」の現われはただの経済的な事由だけでなく、それまで行われていた派手な演出を苦手とするカップルが増えたことも要因の一つとなっている。その象徴としてこのころに出現したのが「レストランウエディング」というスタイルの婚礼である。

「ジミ婚」と言われるスタイルの婚礼は、華やかな施設で豪華な婚礼を行うことよりも、シンプルに美味しい食事とゆったりとした時間を過ごすことや、今までにない新たなスタイルの婚礼を選択している、というおしゃれ感などから急速に広まっていった。しかし、それまで行われていた婚礼に比べると、施設や演出の華やかさに欠けることもあって「ジミ婚」と表現された。

 そして、1990 年代半ばには、カップルのニーズもさらに多様化し、ホテル・専門式場・レストランウエディングそれぞれのメリットを集約した「ゲストハウスウエディング」というスタイルの婚礼が確立された。外資系ホテルの建設ラッシュの時期も重なり、都市部では婚礼施設が乱立する時代となった。その後、それぞれの業態間で、互いのメリット部分の導入が図られ、業態ごとの差別化が不明確になりながらも、婚礼施設は増え続けていった。

 しかし、2000 年の「ミレニアム婚」で数を伸ばす時期もあったが、年々婚姻数は減少し、婚礼を挙げるカップルの数は減り続けている。

 かつて、ブライダル業界の市場は、他の業種に比べると比較的社会経済の状況に左右されることが少ないといわれていたが、近年は経済的な影響も顕著に表れ、カップルだけではなく両親世代の婚礼に対する価値観も多様化し、「ジミ婚」は加速の一途をたどり、そのカップル向けのリーズナブルな商品も多数開発されてきた。
 また、人口減少・少子化・晩婚化などの社会問題も、経済の状況と並んでブライダル業界に大きな影響をもたらすようになってきている。

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3. ブライダル市場の実態

 ブライダル市場の買い手には、3つの特徴がある。第1の特徴は、結婚を考えるカップルのみであること。第2は、基本的にリピーターが存在せず、一度だけの利用であること。そして第3が、女性の意向を尊重する傾向が強いため、女性の目線を意識した商品開発が重要なことである。

 ブライダル市場の実態は、少子化や若年世代の非婚化などの影響で縮小傾向にあるが、買い手の動きに対応した新たな業態や形態も生まれており、今後も成長の余地を残した市場ということができる。従って、売り手は買い手の動向を常に把握しておく必要がある。

 ブライダル市場を計る際に使用される用語は下記の通りである。

1)婚礼件数

 婚礼件数には、一定期間に婚礼を行った実績の件数と、一定期間に婚礼を行う見込み件数がある。実績件数は1ヶ月または1年の単位で実際に婚礼を行った件数を示し、婚礼見込み件数とは、翌年度等の売上予測をするための婚礼の見込み件数のことを示す。婚礼件数は、婚礼施設のバンケットルーム数と、婚礼の回転数、受注見込み日の数により予測できる。婚礼の回転数は、婚礼施設により異なる。2回転を基本にする施設が多いが、人気のある婚礼施設では3回転まで行えるように時間を設定している。

受注見込み日:土・日・祝祭日で六輝のよい日。

回転数:1 つのバンケットルームで1 日に行える宴席の数。

2)婚礼費用

 婚礼費用とは、挙式・披露宴の費用である。婚礼にかかる費用は平均300 万円前後といわれているが、これは一般的な挙式・披露宴を行った場合の平均費用であり、婚礼のスタイルや地域性により費用は様々である。

挙式や披露宴へのこだわりの有無も影響し、5万円以下の挙式のみで済ませる新郎新婦がいる一方、1000 万円クラスの豪華披露宴を行う新郎新婦もいる。この状況は、買い手の婚礼に対する考え方が多様化していることの現れといえよう。

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4. ブライダル市場の地域性

 婚礼は「全国的に違いがなくなってきた」という見解が増えているが、地域によっては独特の風習が根強く残っていることもある。また、地域により市場の状況が異なることも多いため、市場の地域性を知ることも重要である。

1)結婚にかかる費用

 結婚が決まると、結納(結納金や結納返し)、婚礼、ハネムーン、新生活の準備など、多額の費用がかかる。総費用の全国平均は600 万円前後といわれているが、最も高額なのは東海地方である。続いて東北・近畿地方が高く、最も低いのは北海道といわれている。

2)婚礼のスタイル

 婚礼のスタイルにも地域性がある。首都圏は全国から人が集まっていることから婚礼スタイルも多様であるのに対し、東海・北陸地方は「家と家の結びつき」の伝統を重んじる傾向があり、昔ながらの風習を大切にした豪華な婚礼スタイルが根強く残っている地域も多い。一方、北海道と東北地方の一部では、招かれる側の経済的負担の少ない会費制の披露宴が主流である。こうした婚礼スタイルの違いは、費用の地域差からも読み取ることができる。

3)祝儀

 婚礼の祝儀に関しても地域性がある。祝儀の全国平均はおよそ3万円であるのに対し、最も高額な地域は中部地方で、平均4万5000 円前後といわれる。逆に最も低いのは北海道の平均2万5000 円で、これは披露宴の大半が祝儀の不要な会費制スタイルであるためと思われる。しかし、近年は各地域とも従来のスタイルから合理的なスタイルの結婚式へ変化してきており、祝儀の相場も全国平均と差異がなくなってきている。

4)営業方法

 婚礼の営業は全国的に、買い手に婚礼施設への来館を促し、接客をするスタイルが主流である。しかし、北陸地方や関東地方の一部では、売り手である婚礼施設側が買い手の自宅へ出向いて営業するスタイルが古くからのしきたりとして残っている地域もある。

5)特徴的な地方婚礼

 日本全国において、特に注目したい婚礼スタイルを行っている地域がある。ただし、近年は簡素化されたり、関東圏のスタイルに準ずるようになったりと、時代とともに変化している部分も多く見られる。しかし、ウエディングプランナーとしては押さえておきたい風習であるため、下記に紹介する。

1 北海道の婚礼
 北海道の婚礼は、会費制が一般的である。会費制ウエディングとは、招待客が祝儀を贈る代わりに会費を支払うスタイルの婚礼で、招待状には会費が明記されている。会費は1万5000円程度であることが多いが、祝儀並みの2万円に設定される場合もある。

最大の特徴は、祝宴が両家の催す「披露宴」ではなく、新郎新婦の友人数人が「発起人」となって開く「結婚祝賀会」であることにある。そのため、招待状の発送や出欠の確認、祝宴の準備は発起人を中心に進めるのが原則となるが、最近は「友人に大変な思いをさせたくない」というカップルが増えていることから、「発起人代行業」なる専門の企業も存在する。また、新郎新婦と面識のない人々も招待され、非常に出席者が多いことも北海道ならではの特徴である。

2 東海地方の婚礼
 東海地方の婚礼は、「家と家の結びつき」という考え方が強く、地元出身者同士の結婚の比率が高いといわれている。昔ながらのしきたりも色濃く残っており、結納当日に新婦の家へ土産を持って行き、先祖には線香を持って行くという決まりがある。

また、新婦の嫁入り道具を運ぶ際には、嫁入り道具を近所の人にお披露目してから新郎の家に送る「荷送り」というしきたりがある。この時には荷台を紅白の布で覆ったトラックが用意されるが、中の嫁入り道具がよく見えるように、荷台部分が透明なガラス製になっていることもある。

これは嫁入り道具で「家格」を判断する東海地方独特の風習を意識したものであるが、経済的に厳しい家では荷送りの際、嫁入り道具のレンタル会社を利用する場合もあるという。その他、婚礼当日に新婦の家が近所の家に菓子を配る風習もあるため、一般的に東海地方の婚礼は「派手」な印象を持たれがちである。

3 沖縄の婚礼
 沖縄の婚礼には、他の地域と異なる独特の風習が数多くある。まず、結婚式の日取りが決まると、他地域では通常2ヶ月前に「招待状」を発送するが、沖縄ではあらかじめ招待客に電話で出欠を確認し、約1ヶ月前に出席予定者にのみ、返信はがきを同封しない「案内状」を送る。

招待客数が非常に多いのも特徴で、平均200 〜 300 名。招待客は1万円程度の祝儀を持参し、出席する。披露宴の席次が他地域の逆となり、高砂に一番近いテーブルに新郎新婦の家族、次に親族、友人、会社関係者の順で配席されるのも沖縄独特である。

披露宴では余興が次々と繰り広げられ、祝いの席に欠かせない琉球舞踊「かぎやで風(ふう)」を皮切りに、友人総出のパフォーマンスが続き、新郎新婦と招待客が入り混じって踊る「カチャーシー」を経てお開きとなるのが一般的である。3時間以上の祝宴となることも珍しくないという。

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第3章 ブライダルの歴史と慣習

1. 日本の歴史と慣習

1)歴史

 日本における結婚の習俗は、時代とともに以下の通り変遷してきた。今日の日本で行われている婚礼は、どれも長い歴史から見れば比較的新しいスタイルであるが、いにしえの時代から続く式次第や慣習、衣裳なども随所に見ることができる。ここではウエディングプランナーとして知っておきたい日本の婚姻および婚礼の歴史を解説する。

1 奈良時代以前
 古代の日本は、母系の血縁集団で暮らす「母系氏族制社会」であった。婚姻は同村内での自由恋愛による「共同婚」で、生まれた子供は母親のもとで育てられる。それが飛鳥時代を経て奈良時代には男性が女性のもとへ通う自由結婚「通い婚」に変化し、夫が妻のもとへ通うだけで同居しない「妻問婚(つまどいこん)」が主流となった。奈良時代の『養老律令』では日本で初めて婚礼の様式が成文化され、媒酌人や結納の原型と思われる記述もされている。

養老律令:718 年(養老2年)に藤原不比等らが編纂を始め、757 年に施行された日本初の法典。

2 平安時代
 平安時代の貴族社会においては、「妻問婚」がさらに「婿入り婚」に発展した。これは妻方で婚礼を行い、しばらく通い婚を続けてから同居するスタイルで、子供が生まれると婿方へ移ることもあった。

婚礼は、男性を女性の一族が夫と認める場合、男性が通い始めて3日目の夜に「三日の餅(みかのもちひ)」という祝いの餅を出し、二人で食べるという素朴な儀式であった。そして女性の家で用意した酒肴とともに、女性の両親や親族と対面する祝宴「露顕(ところあらわし)の儀」が行われた。この祝宴は今でいう結婚披露宴のようなものであった。

三日の餅:「三日夜の餅(みかよのもち)」と呼ぶこともある。

3 鎌倉時代
 鎌倉時代から室町時代の武家社会になると状況は一変し、夫の家に妻を迎える「嫁入り婚」が主流となった。嫁入り婚は武家の婚姻様式であるが、これは、それぞれが領地を所有したり割り当てられたりし、常に外敵の侵入や戦(いくさ)に備えていなければならなかった武士が、いざという時に妻の実家にいては仕事にならなかったためである。

室町時代には武家の儀式や礼法などを著した「武家故実書」に婚礼の作法が記され、そこには夫婦固めの杯(三三九度)や白無垢、お色直しの原型も見出すことができるが、それは武家らしく、親戚・友人が集まって行う簡素な儀式と祝宴であった。結婚において「家と家の結びつき」を重視するようになったのも武家社会の影響といわれ、仲人による「見合い婚」もこの頃から見られるようになった。

4 江戸時代
 江戸時代に入ると、嫁入り婚は武家のみならず、公家や豪商・豪農などの上流層にも浸透していく。
江戸幕府の政策は「家」を基本とするもので、その秩序を守るために、女性は「生まれて親に従い、嫁しては夫に従い、老いては子に従う」という三従が強いられた。武家社会では男女が出会う機会が少なかったため、仲人が家柄にふさわしい相手を紹介する「見合い婚」が広まったが、農村部では明治時代前半まで自由恋愛が一般的であった。婚礼は、宮中のみ平安式で、他は一般庶民にも武家様式の祝言が浸透した。

5 明治時代
 明治時代には法律で一夫一婦制が定められ、身分や国籍に関係なく結婚ができるようになった。
婚礼は江戸時代と同様に自宅で行うのが一般的であったが、宗教による結婚式も行われるようになり、1876 年(明治9 年)に同志社大学創始者、新島襄・八重夫妻の婚礼がキリスト教式の流れで行われている。1900 年(明治33 年)に行われた皇太子(後の大正天皇)の婚儀を機に、日比谷大神宮(現東京大神宮)で一般向けの「神前式」が創始された。

6 大正時代~第二次世界大戦
 上流階級の婚礼は、神社での神前式と料亭やホテルでの披露宴というスタイルが増えていたが、1923 年(大正12 年)の関東大震災を機に、支度から挙式、披露宴まですべてを1軒のホテルで行う「ホテルウエディング」が誕生する。これは帝国ホテルが顧客から「大震災で神社が被害を受け、式を挙げられなくなった」と相談を受けて館内に神殿を設け、披露宴だけでなく挙式も行えるようにしたのが始まりといわれ、今日の婚礼スタイルの礎となった。

7 第二次世界大戦後
 戦後になると自宅での婚礼は徐々に少なくなり、専門式場での婚礼が一般的になっていく。
ホテルは上流の婚礼が主であったが、高度成長期のホテル建設ラッシュ以降は急速に一般へ広まった。1990 年頃にはレストランでの婚礼がブームとなり、1990 年代半ばにはゲストハウスが誕生。海外や国内リゾートでの挙式も注目を集め、日本の婚礼は多様化を進めている。

2)慣習

 日本の伝統的な婚礼には、独特の風習や慣わしが数多くある。ここではその中でも現代まで受け継がれ、ウエディングプランナーおよび婚礼施設の業務にも深く関わるものを取り上げる。

1 六曜(六輝)
 大安・仏滅などで知られる「六曜(ろくよう)」あるいは「六輝(ろっき)」は、暦、つまりカレンダーに記される「暦注」の一種である。日本では古くから多くの暦注が用いられてきたが、六曜は室町時代に中国から伝わったものの、一般に広まったのは明治維新以降という比較的新しい暦注である。

旧暦の1月1日を先勝とし、先勝・友引・先負・仏滅・大安・赤口の順に6種類の日が巡るのが特徴で、2月1日は友引、3月1日は先負、4月1日は仏滅…と月初めに順番を改め、7月1日から再び先勝で始めて、その年の日の吉凶を占う。暦注の種類としては科学的根拠のない迷信的なものに分類されるが、現代の日本でも年配を中心に冠婚葬祭で六曜にこだわる人は多く、婚礼の開催日も大安が好まれる傾向にある。

暦注:暦に記される事柄。日曜・月曜・火曜などの「七曜」や潮の満ち干、干支(えと)、立春・秋分などの「二十四節気」などのほか、日の吉凶を記した占いの類がある。

◆ 六曜の意味

先勝 せんしょう・さきがち 先んずれば勝つ、万事急いで吉とされる日。午前中が吉、午後が凶、また急用や訴訟などによいとされている。
友引 ともびき・ゆういん 朝晩は吉、正午は凶、とされる日。友を引くという文字から、葬儀には適さない日とされている。
先負 せんぷ・さきまけ・せんまけ 先んずれば負け、何事も控え目に過ごすとよいとされる日。午前中が凶、午後が吉、急用や勝負事は避けるとされている。
仏滅 ぶつめつ 「物滅」の音読みが転じて「仏滅」となった日。仏の命日とは関係がない。勝負事や開店、新規事は万事凶とされている。
大安 たいあん・だいあん 一日中が吉とされ、万事進んでよいとされる日。その縁起を担ぎ、結納・結婚式などに人気の高い日。もとは「泰安」と
記したことがあり、本来はこの日に何も行うべきではない。「大いに安らかであれ」という説もある。
赤口 しゃっこう・しゃっく・せきぐち 午前11 時~午後1時が吉、それ以外は凶とされる日。物事を始めるのには向かず、障害が出やすいとされている。

2 お見合い
 お見合いとは、第三者の仲介で「結婚したい」という意思のある男女を引き合わせる、日本の伝統的な「出会い」のシステムである。お見合いの前には第三者を通じて、学歴・職歴・収入などを記した「履歴書」と家族の状況・趣味・健康状態などを書いた「身上書」、写真などが交換される。その写真や書類を見て、両者に縁談を進めたいという希望があれば、お見合いの場所が設けられ、第三者の立会いのもと本人同士が会って、相手の容姿や性格、雰囲気や自分との相性を判断する。

◆ 履歴書の一例

◆ 身上書の一例

◆ お見合いの歴史
お見合いの起源は、武家社会にあるといわれている。武家社会は外敵に備えた家父長的家族主義社会であり、男女を隔離して自由恋愛を禁じていたため出会いの機会が少なく、第三者の仲介を必要とした。また、結婚は「家と家との縁結び」であり、両家の繁栄を目的としたため、縁組は家格の釣り合いが重視され、決断も家長が下して本人の意思は二の次であった。
しかしこの時代、人口の8割を占める農民は、同じ集落で暮らす男女の合意による「恋愛結婚」が普通であったため、庶民にとって「見合い結婚」は案外目新しい結婚の形であった。明治時代になって政府の方針で庶民にも武家風の家父長的家族主義ライフスタイルが広まると、恋愛結婚はすたれ、お見合い結婚が主流となったが、本人の人柄より家柄や財産の有無が重視されがちで、お見合いにマイナスイメージが持たれた時代もあった。しかし現在では、自分の条件に合った結婚相手を探す合理的な方法として、再び見直されている。
◆ 日取り
以前は婚礼と同様に「大安」「友引」が選ばれていたが、最近は双方の都合のよい土曜・日曜・祝日の日中に設定することが多い。
◆ マナー
政治や宗教などの堅い話題は避け、お互いの趣味や仕事の内容など、本人同士の人柄がわかりやすい会話をする。なれなれしい態度や若者言葉は相手を不快にさせるので、カジュアルな口調になり過ぎないように注意する。当日の費用は仲介者の分も含めて両家で折半するが、二人きりになって食事をした場合などは男性側が支払う。その日のうちに仲介者にお礼と報告の電話をし、返事はなるべく早くする。断る場合は、相手を立てる言葉遣いを心がける。その後のデートは本人同士で決めるが、仲介者への報告を適時入れる。
◆ 語源
お見合いの語源は「妻(め)合わす」。「目と目を合わす」「女(め)合わす」という意味があり、かつての武家社会での男性主導の発想から生まれたものである。

3 仲人
 仲人(なこうど)とは、縁談の仲介をする世話人のことである。かつては縁談を世話し、見合いの設定から結納の進行、挙式、披露宴、その後の家庭生活における社会的な後見人まで果たす第三者のことを指した。媒酌人(ばいしゃくにん)とも呼ばれ、「媒」は一字で「なこうど」と読む。

 仲人を立てるのは日本独自の風習で、結婚が家同士の結びつきであった武家社会の名残といえる。この時代の仲人は、両家の家柄を見比べ、家風が合うか否かを判断し、婚姻の申し入れや結納を納める使者の役割も果たしたが、現代では新郎新婦の結婚の証人であると同時に、末永く二人を見守る親代わりのような存在になっている。現在では縁談から披露宴まで世話する人を「仲人」といい、婚礼当日のみのいわゆる「頼まれ仲人」を媒酌人という場合が多い。また、結婚式当日は「仲人さん」ではなく「ご媒酌人様」と呼ぶ。

◆ 由来
仲人の原点は、平安時代の貴族社会における婚礼「三日の餅(みかのもちひ)の儀式」の介添え役といわれている。鎌倉時代には妻となる女性を紹介し、報酬を得る「中媒(なかだち)」という職業が生まれた。江戸時代にはお見合いが町人階級にも広まって仲人が活躍し、婚姻が成立すると結納金や持参金の一部を礼金として受け取っていたという。明治時代以降、戦前までは家格の釣り合いを重んじた「見合い結婚」が主流となり、誰が仲人かということが家柄を象徴したため、社会的地位の高い人が選ばれた。
◆ 条件
仲人・媒酌人は夫妻で務めるもので、正式に結婚していることが第一条件である。交際範囲が広く、世話好きな人、社会的信用・地位がある人、若い人の考えを理解し信望の厚い人が適任である。一般的には新郎の上司、親の知人という例が多い。

4 結納
 結納は、正式に婚約したことを形に表す日本の伝統的なしきたりで、両家の間で金品などの贈り物を取り交わす儀式である。本来は仲人または使者が両家を往復し、結納品を運ぶのが正式なスタイルだが、近年では仲人を立てないケースや、立てたとしてもホテルの個室などに一同が集まる略式で行うケースが増えている。

結納は地域ごとにしきたりが少しずつ異なるが、大きくは「関東式」と「関西式」に分けることができる。関東では「結納を交わす」といい、男女双方の結納品を交換するのに対して、関西式は男性だけが女性に結納品を贈るため「結納を納める」という。

◆ 由来
日本書記には今から1400 年前、仁徳天皇の皇太子(後の履中天皇)が羽田矢代宿禰(はたのやしろのすくね)の娘、黒媛(くろひめ)を妃とされた時に「納菜」が贈られた、と記されており、これが現在の結納の原点にあたる。もともとは中国から伝わった習慣といわれるが、現代に続く作法は室町時代、武家の有職故実を伝える名門であった小笠原家などによって調えられた。
しかし当時、結納は公家や武家が行うもので、婚礼様式すら定かでなかった庶民には縁のない話であった。江戸時代になると豪商や豪農などが結納や祝言を行うようになったが、一般庶民に広まったのは明治時代になってからである。
◆ 語源
新たな婚姻関係を結ぶ両家の祝いの席で双方が持ち寄った酒と肴を意味する「ゆいのもの」、あるいは「言納( いいいれ)」という婚姻を申込む言葉から転じたものといわれている。
◆ 結納のスタイル
・関東式:往復式
本来は両家それぞれに使者を立てるのが最も正式な方法であるが、一般的には仲人が両家を行き来して結納を取り交わす。まず仲人夫妻が男性側の家を訪ねて結納品を受け取り、女性側の家へ届ける。次に女性側から受書と結納品を預かり、男性側の家へ届ける。さらに男性側から受書を預かり、女性側の家へ届ける。
・関西式:片道式
関西式は、男性側から女性側への結納品を贈るだけの片道方式。仲人が男性側の家を訪れて結納品を預かり、女性側の家へ届けて受書を預かり、受書を男性側へ届けるのが正式とされる。女性側から結納品を贈らないのは、結納が「男性から結婚の申し入れ」という意味合いで行われるからといわれている。
◆ 現代の結納スタイル
古くからのしきたりや地方色が色濃く残っている結納であるが、現代では全国的に、関係者が一堂に会する略式スタイルが主流になっている。女性宅やホテル・専門式場・料亭・レストランの個室などに仲人と両家両親、本人が集まって結納の儀式を行い、その後、祝いの食事会を開くのが一般的である。また近年は、仲人は立てずに両家だけで結納を行うことも増えており、その場合は仲人夫妻の役割を両家の両親が担う。
◆ 結納までの準備
・結納スタイルの決定:関東式・関西
・結納日時の決定:結婚式の3~6ヶ月前
・結納場所とその手配
・結納品、結納金、婚約記念品、目録、受書、家族書、親族書を双方で交換するのか決める。
◆ 結納品
結納品は、相手の支度のために贈る布地や慶事の進物に欠かせない品、祝宴のための酒肴が様式化したもので、5品・7品・9品と奇数にまとめられている。品目は地域によって様々であるが、「関東式結納品」と「関西式結納品」に大別される。前者は武家文化の流れをくんでいるため比較的簡素、後者は豪華な公家文化の名残が感じられる。

◆ 関東式結納品9品目とその意味
結納品すべてを1台の白木台に並べる「一台飾り」が一般的。水引飾りは平面的。

品目 意味
①目録(もくろく) 結納品の品名や数を記したもの。水引は付けないことが一般的だったが、近年は華やかさを求めて付けることが多くなった。
②長熨斗(ながのし) あわびの肉を薄く伸ばし干したもので、不老・長寿を意味し、祝儀の時に必ず添えられるもの。
③金包(きんぽう) 結納金。表書きは男性から女性へは「御帯料」、女性から男性へは「御袴料」とする。
④末廣(すえひろ) 一対の純白の扇。純潔無垢と末広がりの繁栄を意味する。
⑤友志良賀(ともしらが) 白い麻糸、または麻のひもで「ともに白髪の生えるまで仲良く」を意味する。
⑥子生婦(こんぶ) 昆布。「喜ぶ」に通じ、「子宝に恵まれるように」を意味する。
⑦寿留女(するめ) 日持ちがよいことから、幾久しく、末永い縁続きを意味する。
⑧勝男節(かつおぶし) 鰹節。男性の力強さの象徴。酒肴と不時への備えの意味もある。
⑨家内喜多留(やなぎだる) 祝酒。柳樽の当て字で現金で代用することも多い。

◆ 関西式結納品9品目とその意味
結納品を1品ずつ、それぞれの台にのせるのが一般的。水引飾りは立体的。

品目 意味
①小袖料(こそでりょう) 結納金。松飾りの下に置く。
②松魚料(しょうぎょりょう・まつうおりょう) 鯛の代わりに贈る現金で竹飾りの下に置く。
③家内喜多留料(やなぎだるりょう) 酒の代わりに贈る現金で梅飾りの下に置く。
④長熨斗(ながのし) あわびの肉を薄く伸ばし干したもので、不老・長寿を意味し、鶴飾りとともに置く。
⑤高砂(たかさご) 翁(おきな)と姥(うば)の人形。仲睦まじく添い遂げられるようにとの願いを込めて置く。
⑥寿恵広(すえひろ) 一対の純白の扇。万年長生きするといわれる亀飾りとともに置く。
⑦寿留女(するめ) 日持ちがよいことから、幾久しく、末永い縁続きを意味する。
⑧結美和(ゆびわ) 婚約指輪。
⑨子生婦(こんぶ) 昆布。「喜ぶ」に通じ、「子宝に恵まれるように」を意味する。
⑩目録(もくろく) 結納品の品名や数を記したもので、品数として数えない。

◆ 結納金
結納金をいくらにするかは本人の考え方や地域の慣習によってまちまちであるが、相場は月収の2~3ヶ月分といわれており、50 万円・100 万円が一般的。関東では男性側が女性側に贈った金額の半額を「御袴料」として返す「半返し」の習慣があるが、近年は半返しを省略し、最初から通常の半額を贈るケースも増えてきている。また、両家で話し合い、結納金をまったく贈らないケースもあるが、この場合でも結納品の「金包」「小袖料」は省かずに台の上に置く。
◆ 婚約記念品
男性から女性へ贈る記念品は「婚約指輪」が一般的である。女性から男性へは実用的なものを選ぶ傾向があり、腕時計やスーツのほか、楽器、カメラなどが贈られることもある。ただし、あくまでも記念品なので、長く愛用できるものを選ぶとよい。

◆ 目録の書き方
※男性から女性へ

※女性から男性へ

◆ 受書の書き方

◆ 家族書の書き方

◆ 親族書の書き方

※近年は家族と親族を一緒に書き入れ「○○家親族書」とすることも多い。

◆ 結納時の服装
男性はブラックスーツかダークスーツを着用し、ワイシャツは白、ネクタイもフォーマルな印象のものにする。女性は和装なら振袖や付け下げ、洋装ならセミフォーマルなドレスやドレッシーなスーツがふさわしく、肌の露出が多いものや極端なミニ丈、黒色の服は避ける。双方の両親は本人たちと格を合わせ、両家のバランスが取れるよう事前に相談するとよい。

◆ 結納の席次(家/父親主体)

※全員が一堂に会する結納の例
※ 仲人が床の間側に結納品に背を向けて座るとする説もある。
※ 仲人が入らない場合も同じ席次となる。

 

結納の豆知識
◆ 座布団
和室で行う結納では、儀式が終了するまでは座布団を使用しないのが本来のしきたりである。ホテル・式場・料亭などではサービスの一環として用意する場合があるが、本式で行う場合は各自、座布団を外して座り、結納終了後の会食から使用する。
◆ 桜湯
お茶は「茶を濁す」「茶々を入れる」など悪い表現に使われ、不祝儀のお返しにも多く、慶事には出さないのがしきたりである。結納の席では縁起のよい「桜湯」「昆布茶」を使用する。「桜湯」とは、塩漬けにした桜の花に湯を注いだ飲物で、湯呑みの中で桜が花咲くことから慶事にふさわしい飲物とされている。婚礼当日の親族控室でも使用する。
◆ 結納飾りの処分方法
結納飾りは花嫁の厄を吸い取るといわれるため、挙式まで自宅の床の間やリビングの一角などに飾る。挙式後、処分したい場合は正月飾りなどと一緒に氏神様へ奉納するとよい。
近年は羽子板や額飾りなどに加工するサービスを提供する店もある。

5 引出物
 披露宴の列席者へ感謝の気持ちを込め、婚礼の記念品として贈る品物のことで、引菓子は祝い菓子として持ち帰ってもらうのが一般的である。本来はいただいた祝儀の金額に関係なく、同じ品物を贈るのを基本とし、品数は「割りきれない」との縁起を担いだ3品・5品・7品などの奇数がよいとされているが、現在では主賓や親族、友人など贈る相手により品数や内容、価格を変え、その人たちに喜ばれるものを選ぶ傾向がある。

◆ 由来
平安時代、招待した客人に土産として馬を贈る習慣があり、その馬を庭に引き出してから贈ったことが語源といわれ、のちに「饗宴の主催者からの土産」を意味する言葉となった。現在も婚礼に限らず、様々な行事に引出物を贈る習慣がある。
◆ 選び方
以前は包丁やナイフ、鋏などの刃物類は忌み言葉「切れる・分ける」を連想することから、また陶磁器やガラス製品は「割れもの」であることから縁起が悪いと避けるのが一般的であったが、近年はあまりこだわらなくなってきた。新郎新婦の趣味や嗜好で選ぶことが多くなり、ライフスタイルの多様化に対応した「カタログギフト」も人気である。
昔ながらの引出物の1つである鰹節は、「勝男節」とも書き、雄節と雌節を組み合わせると夫婦一対となるうえ、互いを組み合わせた形が亀の甲羅に似ていることから縁起が良いとされ、今でもつける地域が多い。
一方、以前よく見られた折詰料理は、都市部ではほとんど姿を消している。これはもともと、祝い膳を本膳のほか五の膳まで出していた昭和初期までの時代、客がそのほとんどに手をつけず、折に詰めて引出物として持ち帰った名残であったが、近年では食品衛生の観点から食品の持ち帰りが難しくなったため、すたれつつあるのが現状である。引出物は地方独特の文化風習があるので、あらかじめ両親に確認を取り、両家でよく話し合って決めるとよい。

熨斗と水引
 日本では古くから金品を贈る際、品物や金包みに水引を掛け、熨斗(のし)をつける伝統がある。婚礼でも引出物や引菓子、祝儀袋などに用いられるので、その意味合いや正しい使い方を覚えておきたい。

◆ 熨斗(のし)
鮑(あわび)を薄く伸して(伸ばして)干した「熨斗鮑(のしあわび)」の略。昔は海産物が貴重品であったため、それを添えることによって心を込め、進物をより高価にする意味合いがあった。また、熨斗鮑をつけることは、その品物が穢(けが)れていない証でもあったという。
現在の熨斗紙の右上についている熨斗は、紅白の紙で包んだ熨斗鮑を簡略化したものであり、水引と一緒に印刷されている。また、祝儀袋の右上についている熨斗の黄色い紙片も簡略化した熨斗鮑を表している。なお、仏教では生臭ものを避けることから、弔事の不祝儀袋や進物には熨斗はつけないのがしきたりである。

◆ 水引(みずひき)
進物の包みに用いる紙糸で、こより(細く切った紙をよったもの)に糊をひき、乾かして固めたもの。もともとは現金や品物を束ねるのに使われ、水引を掛けることは「自分を正して先様を敬う」という意味があるといわれている。慶事には金銀・紅白、弔事には黒白・黄白・銀を用い、結び方で表意を使い分ける。最近は祝いごとにはカラフルな水引も使われる。
結びきり: 婚礼や弔事のような二度繰り返したくない行事用の水引は、結び目がほどけない「結びきり」にする。
婚礼では金銀または紅白の10 本取りの水引が用いられる。
蝶結び: 何度あってもよい、婚礼以外の喜びごとには、ほどけてもまた結ぶことのできる「蝶結び」を用いる。
あわび結び: 中央に1つ、左右に2つの輪を並べた飾り結び。「淡路結び」ともいい、慶弔どちらにも使用できる。

◆ 祝儀袋の包み方
奉書または檀紙の中央に半紙で包んだ紙幣を置き、慶事の場合は左端を少し開けるようにして縦3つ折りにした後、上側を折り、最後に下側を折る(喜びごとの際は上向き)。

◆ 袱紗(ふくさ)の包み方
袱紗のやや左中央に祝儀袋をのせ、左、上、下、右の順に折りたたみ、余った端は裏側へ折り返す。なお、不祝儀袋を包む時は逆になり、右、下、上、左の順になる。


CONTENTS

2. 欧米の歴史と慣習

1)歴史

 欧米の結婚の習俗および婚礼は、ギリシャ・ローマ文化とキリスト教文化を中心にしながら発展を遂げてきた。今日、世界中で一般的になった婚礼慣習の多くも、西洋の婚礼史の中にそのルーツを見出すことができる。一口に欧米の婚礼といってもその範囲は広く、地域・民族等により多彩であるが、ここではその根幹をなす流れを紹介する。

1 古代ギリシャ時代
 いにしえの時代のヨーロッパは、父系首長が支配する親族集団社会で、女性の地位は低く、父系首長の所有物とみなされていた。結婚も親同士の契約により決まるもので、女性は結婚すると男性の氏族の一員になった。ヨーロッパの黎明期に栄えた古代ギリシャの婚礼は、まず新婦の家で父親が神に生贄(いけにえ)を捧げ、娘を新郎に与える旨を宣言する儀式を行う。そして集まった親族や友人と宴会を開き、夜になると行列をなして松明(たいまつ)をかざし、歌を歌いながら新郎の家へ向かった。新婦は新郎によって竈(かまど)の前に運ばれ、木の実や小さな硬貨を浴びせられたという。

その後、聖火の前で新郎新婦が食事をともにし、ゴマのケーキを一緒に食べる「テロス」という儀式が行われた。新郎は白い衣裳をまとい、新婦は色物の衣裳を着てベールを被り、ともに花の冠をつけたという。新郎の家からすべての客が帰り、部屋の中に二人きりになって初めて新婦はベールをはずし、新郎に顔を見せた。

古代ギリシャ:ローマ帝国の統治下に入る前の古代のギリシャのこと。トロイア文明やクレタ文明、ミケーネ文明を受け継いだギリシャ人がエーゲ海各地へ植民して都市国家群を築き、紀元前5世紀頃に黄金時代を迎えた。

2 古代ローマ時代
 古代ローマの文化は、土着のエトルリア文化とギリシャ文化が織り交ざったものであったため、婚礼も古代ギリシャと似たスタイルが多い。新婦宅で新郎へ新婦を引き渡す儀式があり、花嫁行列を組んで新郎の家へ向かい、新郎宅で妻を迎える儀式を行うのは基本的に同じである。

新婦の家ではまず神々への供犠があり、ローマ法に定められた10 名の証人による結婚契約書の署名後、新郎新婦の誓約が行われた。新郎新婦が右手を重ね合わせる儀礼もあり、夫婦が一体となることを象徴したといわれる。また、新郎の家に到着した際は、新婦がつまずくのは不吉とされたため、新郎が新婦を抱きかかえて家に入る慣習があった。
その後、「ファール」と呼ばれるケーキを穀物の神に捧げ、証人の前で一緒に食べるしきたりもあり、これが今日に続くウエディングケーキの源と考えられている。古代ローマでは、初期には婚姻法で定められた儀式を行うことで結婚が成立したが、徐々に儀式なしでも「相互に夫婦となる意思」を持っていればよしとされる、本人の合意を前提とした自由な結合となった。

古代ローマ: 紀元前500 年頃から西暦500 年頃まで約1000 年間にわたり地中海世界を支配した大国。古代ギリシャとともに後の西洋文化に多大な影響を与えた。

供犠:生贄を捧げること。

3 中世
 西洋史における中世は一般に、西ローマ帝国が滅亡した西暦476 年からルネサンスの幕開けまでの約1000 年間を指す。この時代は様々な国が誕生しては消え、長く不安定であったことから「暗黒の時代」とも呼ばれ、また、ローマ帝国がその末期に国教と定めたキリスト教がヨーロッパ全土に広まり、ローマ法王およびローマ教会が勢力を強めた時代でもあった。

結婚はキリスト教の秘跡とみなされるようになり、結婚式も世俗的風習からしだいにキリスト教の宗教行事になっていく。中世初期は共同生活に入る前に任意で司祭の祝福を受けるだけであったが、1215 年のラテラノ公会議で司祭による祝福を受けることが宗教的義務と決められ、1563 年のトリエント公会議では「結婚式を司祭および最低2名の証人の面前で行うこと」が婚姻の必須条件として定められた。

挙式も教会の戸口でローマ風に誓いの言葉を交わし、祝福された指輪を新郎が新婦の薬指にはめ、それを見守った人々とともに教会に入ってミサにあずかるというスタイルから、だんだんとすべてが教会内で行われる典礼へと変わり、形式が調えられていった。

挙式後、友人たちが子宝を願って穀物の種を浴びせる中を新郎新婦が帰宅すると、ご馳走とダンスが彩る祝宴が始まった。婚礼の祝宴は、娯楽などほとんどなかったこの時代の数少ないイベントであったため、街や村をあげて盛大に行われたという。

秘跡:神の特別な恵を受ける手段・方法。

公会議:ローマ・カトリック教会における聖職者の会議。ローマ教皇が招集する会議で、教義決定の最高権威を持つ。

4 近世以降
 16 世紀の宗教改革以降、プロテスタントを中心に、結婚はキリスト教の秘跡ではなく個人的な契約とする考え方が興り、国が関与するようになっていく。フランス革命後はしだいに宗教と切り離されるようになって、市長や村長などの前で儀式を行わないと法的に婚姻が認められない「民事婚」が確立していった。

アメリカでは1776 年の独立時より婚姻は民事契約とする考え方が一般的で、州ごとに独自の婚姻法が制定され、現在に至る。しかしながらヨーロッパでもアメリカでも基本的に宗教的儀式が禁じられているわけではないため、多くは法的婚姻手続きと並行してキリスト教会での挙式が続けられ、伝統的な儀礼も数多く受け継がれている。

2)慣習

 現在の日本では、ハリウッド映画などを通して知られるようになった欧米由来の婚礼慣習が数多く行われている。それぞれの歴史を知ることは、「温故知新」の意味からも大変、有意義である。

1 結婚指輪・婚約指輪
 結婚の誓約のしるしとして指輪が使われるようになったのは、古代ローマ時代からといわれている。指輪を贈る習慣は古代エジプトから伝わったが、始まりも終わりもない円い形が「永遠」を表すとされ、大切な契約を守る証として用いられた。ただし、古代ローマ時代に結婚指輪と婚約指輪の区別はなく、ただ1つの指輪が使われた。

指輪はまず、結婚式に先立つ婚約式で将来の夫から贈られ、その場で「愛の血管が直接心臓とつながっている」と信じられていた薬指にはめられた。昔のアングロ・サクソン人は婚約式で女性の右手に指輪をはめ、結婚式では左手にその指輪をはめたという。16 世紀のエリザベス王朝時代には指輪が3つ用意され、婚約期間に花嫁、花婿、証人がそれぞれを身につけ、結婚式で花嫁がその3つの指輪をはめた。

結婚指輪と婚約指輪が分かれたのは13 世紀、ローマ教皇が「結婚前に互いを知る期間を設けよ」と婚約期間の設定を布告したのがきっかけとされる。婚約指輪にダイヤモンドが使われるようになったのは15 世紀からで、地上の何よりも硬く、熱にも溶けない性質が「不滅の愛」や「二人の固い結びつき」を象徴するといわれている。

アングロ・サクソン人:5世紀半ば頃より現在のドイツからイギリスへ渡ったゲルマン民族の一派。

2 ベール
 ベールは古代から純潔のしるしや悪霊から身を守るアイテムとして世界各地で使われていた。古代ギリシャや古代ローマの花嫁は結婚の神への忠誠を示す黄色のベールや魔除けの効果があるとされていた赤いベールをまとい、初期キリスト教徒の花嫁は清浄と祝賀を表す白や聖母マリアを象徴するブルーのベールをつけて挙式に臨んだという。キリスト教式で新郎の手によりフェイスベールが上げられるのは、新婦が父親の保護下を離れ、新郎の妻として姿を現すことを象徴する。

3 ウエディングキス
 婚約中の男女のどちらかが結婚式の前に亡くなった時、すでにキスをしていた場合のみ、残された側が故人からの贈り物を持ち続けられるとしたローマ法に由来する。このため、古代ローマ時代には式典の一部にキスが取り入れられ、結婚式でのキスは二人の信頼と愛、敬意、相互利益への服従の証であったという。

4 ブーケ・ブートニア
 ブーケは幸福への祈りを込め、古代から新婦が手にしたアイテムである。花材には魔除けの効果があるとされたハーブや不変の愛を象徴するアイビー、豊穣を願う穀物の穂などが用いられた。男性がプロポーズのしるしとしてブーケを贈り、女性がその中から1輪を抜き取って男性に返すのが承諾のしるしで、ブーケとブートニアの由来となったという説もある。花嫁が後ろ向きに投げ上げたブーケをキャッチした女性が次の花嫁になるという言い伝え「ブーケトス」は、14 ~ 15 世紀のイギリスで始まった慣習といわれている。

豊穣(ほうじょう):豊かな実り、豊作のこと。ウエディングにおいては子宝に恵まれることや子孫繁栄への願いを表す。

5 フラワーシャワー・ライスシャワー
 花嫁が歩く道に花びらをまくことも、はるか昔から続く習慣である。ヨーロッパでは花やハーブの香りが魔除けになると信じられていたためで、フラワーガールがバージンロードに花びらをまいたり、小さな花束や花かごを手に花嫁を先導したりするのは、その芳香で道を清める意味合いがある。また、挙式を終えた新郎新婦に米などの穀粒を浴びせかけるしきたりは古代オリエントの発祥で、「食べるのに困りませんように」「子宝に恵まれますように」との願いが込められている。

6 ウエディングケーキ
 ウエディングケーキの起源は古代ローマ時代にさかのぼる。当時は結婚式で豊穣のシンボルである小麦の粉と塩、水で作った素朴なケーキを花嫁の頭上で砕くしきたりがあり、そのかけらを手に入れると幸運が訪れるとされていた。中世の披露宴では小さなケーキを山積みにし、その山越しに新郎新婦がキスをするよう求める習慣があったという。

17 世紀にはフランスの料理人がケーキを砂糖の衣で固めて積み上げることを発案し、19 世紀のヴィクトリア王朝時代からは入念な飾りつけがされるようになった。現在もウエディングケーキは豊穣を願うシンボルとして披露宴になくてはならないものとされるが、欧米では長い歴史の間に各地で特有のケーキが生み出されている。たとえばフランスの伝統的ウエディングケーキ「クロカンブッシュ」は、小さなシューを飴で接着しながらピラミッドのように積み重ねたもので、ナイフを入刀するのではなく、小槌(こづち)で軽くたたいて崩すのがしきたりである。

また現在、主にアメリカで見られるセカンドウエディングケーキ「グルームズケーキ(花婿のケーキ)」は、19 世紀に繊細なスポンジケーキが作られるようになった時、昔ながらの重く濃厚なフルーツケーキも捨てがたいと思う人々が繊細なケーキを「花嫁のケーキ」、伝統的なケーキを「花婿のケーキ」として出したことに由来する。未婚の女性が切り分けられた花婿のケーキを持ち帰り、枕の下に置いて眠ると、未来の夫の夢を見られるという言い伝えもある。

アメリカ式ケーキ・イギリス式ケーキ:ウエディングケーキはアメリカ式とイギリス式に分けられる。アメリカ式は1段で長方形、イギリス式は3段のシュガーケーキで、入刀後、1段目は列席者へふるまい、2段目は来られなかった人へ、3段目は保管し、第一子が生まれた日や最初の結婚記念日に食べるといういわれがある。

7 サムシングフォー
 「Something old, something new, something borrowed, something blue, and a silversixpence in her shoe.」というイギリスの古い韻文による幸運の言い伝えで、何か古いもの・新しいもの・借りたもの・青いものの4つを身につけ、靴の中に6ペンス銀貨を忍ばせて挙式に臨んだ花嫁は幸せになるといわれている。「何か古いもの」は継続性を象徴し、家族から譲り受けたジュエリーなどが適当とされる。同様に「何か新しいもの」は楽天主義や希望を象徴し、ウエディングドレスなど、「何か借りたもの」は幸福の共有を象徴し、幸せな結婚をした女性から借りたハンカチやアクセサリーなど、「何か青いもの」は忠誠・愛・純粋を象徴し、ウエディングガーターなどがよく使われる。片方の靴に入れる6ペンス銀貨は、幸運な生活を保障するものとされるが、現在は貨幣単位が変わって流通していないこともあり、アメリカでは銀色の10 セント硬貨で代用されている。

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第4章 挙式と披露宴のスタイル

1. 挙式

1)挙式とは

 挙式とは、男女が夫婦になるために結婚の誓いを交わし、それを周囲に認めてもらう儀式である。日本で現在行われている挙式スタイルは、「神前式(しんぜんしき)」「仏前式(ぶつぜんしき)」「キリスト教式」「人前式(じんぜんしき)」の4つがある。このうち3つは宗教的儀式であるが、日本人は一般に宗教的な信仰心ではなく、イメージや好みで挙式スタイルを選ぶ傾向がある。ここでは挙式スタイル別に、それぞれの特徴や儀式の流れなどについて解説する。

2)神前式

 日本固有の宗教である神道(しんとう)のしきたりにのっとった挙式で、平安時代から続く天皇家の婚礼が原型とされる。神前式が一般に広まったのは明治33 年(1900 年)、当時皇太子であった大正天皇の婚儀が宮中三殿の賢所の神前で行われたことを記念して、翌明治34 年(1901 年)に日比谷大神宮(現東京大神宮)が一般向けの挙式を創始したことによる。神前式は本来、神社で行われるものであるが、現在はホテル・専門式場に設けられた神殿で執り行われることが多い。

1 特徴
 神前式は「家」と「家」との結びつきという考え方から、従来は親族のみ参列するのが一般的であった。以前は神社では親族のみとされるケースが多かったが、近年はホテル・専門式場の神殿と同様に友人などが参列できる所も増えている。伝統的なしきたりに沿って挙式が進行し、祝詞(のりと)などの古語が使われ、式全体の格調が高いのが特徴である。

2 式次第例

式次第 内容・動き
さんしんのぎ
参進の儀
新郎新婦・媒酌人夫妻・両親・家族・親族が入場する。
【神前式席次例】
しゅうばつのぎ
修跋の儀
全員起立して拝礼し、神職(斎主ともいう)が大麻(おおぬさ)を持ち左・右・左と振って、祓詞(はらえことば)を唱えながら、
新郎新婦・参列者の身を清めるお祓いをする。大麻は榊の枝に麻や木綿、紙などをつけたお祓いをするための道具。その後着席する。
さいしゅいっぱい
斎主一拝
全員起立して神職(斎主)とともに神棚に向かい、敬意を込めて一礼する。その後着席。
けんせんのぎ
献饌の儀
神職(斎主)が神前に供え物をする。この供え物を神饌(しんせん)というが、実際には海山の幸(水・塩・酒・果物・野菜など)を
すでに供えてあるので、ここではお神酒(おみき)を入れた瓶子(へいし)の蓋を取り、献饌とする。
のりとそうじょう
祝詞奏上
全員起立し、神職(斎主)が神に結婚の報告と二人の末永い幸福、両家の繁栄を願い、大和言葉(やまとことば)で書き綴られた祝詞を読み上げる。
その後着席。
さんこんのぎ
三献の儀
三三九度の杯(さかずき)のことで、巫女の介添えにより、神前に供えたお神酒で新郎新婦が酒を酌み交わす。
飲む際には1、2、3、と3回杯を傾けるが、1・2回目は口をつけるだけで、3回目に飲み干すようにする。
3つの杯を3回ずつ飲むので「三三九度」といわれる。
1:小の杯・・・新郎→新婦(→新郎)
2:中の杯・・・新婦→新郎(→新婦)
3:大の杯・・・新郎→新婦(→新郎)
ゆびわこうかん
指輪交換
新郎新婦が結婚指輪を交換する。本来の神事にはないので省略してもよい。
せいしそうじょう
誓詞奏上
新郎新婦が神前に進み、誓いの言葉を読み上げる。巻紙に書かれた誓詞を新郎が読んで最後に名前を述べ、その後に新婦が自分の名前を述べる。
読み終えたら、新郎は誓詞を元通りにたたみ、玉串案に献上する。
たまぐしほうてん
玉串奉奠
玉串を神前に捧げる儀式。新郎新婦が巫女から玉串を受け取って神前に進み、一礼して玉串案に供え、一歩下がってから二人揃って二礼二拍手一礼する。
その後媒酌人・両親・親族の順で玉串を供える。玉串とは榊の枝に神垂(かみしで)という白い紙をつけてあるもので、
神と祈りを捧げる人の霊性を合わせる仲立ちをするものと考えられている。
しんぞくはいのぎ
親族杯の儀
「両家固めの杯」「親族固めの杯」ともいい、両親はじめ親族一同が「かわらけ」という杯に注がれたお神酒を同時に飲み干す。
この時、三三九度の時のように1、2、3回と杯を傾け、1・2回目は口をつけるだけで、3回目に飲み干すようにする。
てっせんのぎ
撤饌の儀
神職(斎主)が神前に供えられている神饌を下げる。実際には瓶子の蓋をすることで、撤饌とする。
さいしゅいっぱい
斎主一拝
全員起立し、神職(斎主)とともに神棚に一礼する。
たいじょう
退場
神職(斎主)が退場する。その後に新郎新婦・一同が式場から退場する。

 

神職(斎主):神前式を司る者

◆ 誓詞例
◆ 玉串
◆ 玉串奉奠の作法
1: 巫女から玉串を受け取り、玉串の根元を上から右手で、葉先を左手で下から支えるように胸の高さに持ち(A)、神前の玉串案まで進む。
2:玉串案の前で一礼する。
3:玉串を納める。
①玉串を時計回りにまわして立てる(B)。
②左手を根元まで下ろし、祈念を込める。
③右手で葉先を持ち、左手で玉串の根元を持って(C)
時計回りにまわす。
④玉串の根元を神棚に向け、左手に右手を添える(D)。
⑤玉串を玉串案に供える。
4:一歩下がって二礼二拍手一礼する。

3)仏前式

 仏前式とは、「仏の慈悲による前世からの深い縁によって二人が結ばれる」との仏教思想に基づいた挙式である。仏教の作法にのっとり、仏の前で生涯苦楽をともにすることを誓い、加護を願うもので、式次第は宗派によって異なる。新郎新婦の実家の菩提寺の本堂で行うのが本来であるが、信徒でなくても挙式が可能な寺院、ホテル、専門式場も少数ながら存在する。日本は仏教徒が比較的多いものの、仏前式の知名度は低く、このスタイルを選択するのは寺院関係者が大半となっている。

 
1 特徴
 挙式は厳かな印象で、仏教ならではの焼香や念珠授与(ねんじゅじゅよ)といった式次第が特徴的である。仏教は「縁」を大切にする宗教で、人間は周囲の人たちとのつながり、つまり「縁」があるからこそ生きていくことができ、結婚は人生で最も重要な縁と捉える。また、そうした縁は仏(先祖:仏教では亡くなった人は皆、仏になる)の導きによりもたらされるものであり、仏前で誓うことは、先祖へ新しい家族の誕生を報告し、感謝を捧げることにもなると考えることができる。

2 式次第例

式次第 内容・動き
にゅうどう
入堂
両親・家族・親族の順で入場し、続いて媒酌人夫妻の先導で新郎新婦が入場する。
【仏前式席次例】
けいびゃくもん
(ぶん)ろうどく
敬白文朗読
司婚僧が入場し、本尊に向かって結婚式が行われる旨を報告する敬白文を読み上げる。
この間、新郎新婦は頭を垂れて聞き、参列者一同は起立して聞く。
ねんじゅじゅよ
念珠授与
新郎新婦は司婚僧の前に進み、着席する。司婚僧はあらかじめ仏前に供えてある念珠(数珠)のうち、白い房のついた念珠を新郎に、
赤い房のついた念珠を新婦に授ける。二人は両手で受けて左手に掛け、基本的に式終了まで外さない。
ゆびわこうかん
指輪交換
本来の仏前式では指輪の交換は行わないが、希望により取り入れることが出来る。
しこんのじ
司婚の辞
仏前で司婚僧が新郎新婦に誓いを求める。「誓約の辞」ともいう。
新郎新婦双方に問いかけて「誓います」の言葉を促す場合と、新郎新婦が誓約文を読み上げる場合がある。
しょうこう
焼香
新郎新婦はともに念珠を左手に下げ、右手で焼香を行う。その後媒酌人夫妻も行う。
せいはい(しきはい)
誓杯(式杯)
しんぞくはい
親族杯
神前式の三三九度にあたる夫婦固めの杯を酌み交わす儀式。順番は神前式と逆になる。
一の杯 新婦→新郎(→新婦)
二の杯 新郎→新婦(→新郎)
三の杯 新婦→新郎(→新婦)
その後、参列者一同で親族固めの杯を行う。
しゅくじ
祝辞
司婚僧が仏教上の結婚の意味を説き、祝いの言葉を述べる。
たいどう
退堂
全員で本尊に向かって合掌し、礼拝して式が終わる。司婚僧が退場し、次に媒酌人夫妻に導かれた新郎新婦、続いて一同が退場する。

 

司婚僧:仏前式を司る者

 

4)キリスト教式

 キリスト教式は、キリスト教の教義にのっとって執り行われる挙式である。日本におけるキリスト教はカトリックとプロテスタント諸派に大別され、カトリック教会では原則として信者の挙式しか行わないが、結婚講座の受講などを条件に未信者の挙式が許可されることもある。一方、プロテスタントの場合は宗派にもよるが、未信者の挙式も認めることが多いようだ。ホテルや結婚式場で行われるキリスト教式は、ほとんどがプロテスタントの挙式である。

1 特徴
 カトリックは「結婚は神が定めた人間の義務で、結婚式は神に対する誓約の儀式」という考え方から、挙式を宗教行事と捉えている。一方、プロテスタントは「結婚は二人の愛情によって成り立つもの」で、「神に祝福されなければならない個人と個人の契約」と捉えている。いずれにしても、キリスト教における結婚とは、個人と個人の結びつきという考え方である。

2 式次第例(プロテスタント)

◆ カトリックとプロテスタントの違い

カトリック プロテスタント
司祭・神父(様) 牧師(先生)
聖堂 礼拝堂
典礼(ミサ) 礼拝
聖歌(集) 賛美歌(集)
十字架にイエス・キリスト像 十字架のみ
◆ 教会歴に従って定められた色の決まり事

決まり事
光・喜び・勝利・純潔 ※結婚式・復活祭・降誕日に用いられる
希望・平和・生命・成長・自然
精霊降臨日・殉教者の祝日
悔い改め、懺悔  ※待降節・四旬節・葬儀に用いられる

 

式次第 内容・動き
参列者入場 参列者が入場する。
新郎新婦入場 牧師に続いて新郎が入場し、祭壇前で入場口に向き、新婦の入場を迎える。新婦は父親(いない場合は他のエスコート者)とともに入場。祭壇に近づいたら、
父親は新婦を新郎に引き渡す。新郎は新婦と腕を組み、二人並んで牧師の前に進む。
【キリスト教式席次例】
賛美歌合唱 一般的には賛美歌312 番。
聖書朗読 牧師が聖書の中からコリント前書13 章など、結婚式にふさわしい一説を朗読する。
式辞・説教 牧師が聖書の言葉や自身の信念などをもとに話をする。
誓約 牧師から新郎新婦に結婚の誓いを求める。キリスト教結婚式の最も重要な箇所、挙式の中心。
指輪の交換 結婚指輪を交換する。
署名 結婚証明書に署名をする。
祈祷 牧師が聖書の上に新郎新婦の右手を重ね、その上に牧師自身の右手を重ねて祝福を神に祈る。
結婚宣言 牧師が新郎新婦の結婚の成立を宣言する。
賛美歌合唱 一般的には賛美歌428 番。
祝祷 牧師が参列者全員に祈りを捧げる。参列者は黙祷をする。
新郎新婦退場 新郎新婦が腕を組み、拍手の中、退場する。

 

5)人前式

 人前式とは、神仏に誓うという宗教的な背景がなく、家族・親族・ゲストなど列席者全員を証人として結婚を成立させる挙式形態である。日本では古くから床の間のある座敷などで家族・親族立会いのもと、三三九度の杯を交わす「家婚式」を行っていたが、これも人前式の一種と考えることができるため、日本人にはなじみやすい挙式スタイルといえる。
現代の人前式は、決まった形式や式次第がないので自由度が高く、披露宴会場内で行う「宴内人前式」や披露宴後に行う「宴後人前式」も可能であることから、自分たちらしいオリジナルな誓いを重視するカップルに人気がある。

1 特徴
 新郎新婦からの結婚宣言を中心に、列席者全員が二人の結婚の証人になるという以外、式の流れも、音楽の選曲も、演出の組み方も、すべて自由なのが最大の特徴である。しかしその分、あっという間に終了して手軽なイメージになったり、奇をてらったサプライズや面白おかしい演出で儀式としての品格を損ねてしまう恐れもあるので、式次第作成には注意が必要である。

また、世代によっては人前式になじみが薄く、受け入れられにくい場合もあるため、挙式進行に司式者を設け趣旨を説明するなど、両親や親族の理解を得やすい式次第を心がけたい。

◆ 誓いの言葉例

2 式次第例

式次第 内容 アレンジ方法
列席者入場 結婚の証人となる家族・親族・ゲストが入場する。
(立会人代表入場) 列席者を代表して立会人代表が入場する。 ・立会人代表を立てる 新郎側/新婦側
・立会人代表を立てない
・親族が立会人代表になる
・両家父親が立会人代表になる
挙式説明 人前式の趣旨を司式者から説明する。
新郎新婦入場 新郎新婦が入場する。
【人前式席次例】

※新郎側・新婦側に決まりはない
・新郎入場後、新婦が父親と入場
・両親とともに入場
・立会人代表と入場
・ブーケ・ブートニアセレモニーの入場
・新婦の母親によるベールダウン後に入場
・キャンドルリレー
誓いの言葉 結婚の誓いを本人たちの言葉で行う。 ・パートナー宣言
新郎から新婦へ/新婦から新郎へ
・新郎新婦から列席者への誓いの言葉
誓う/宣言する/問いかける
指輪の交換 結婚指輪を交換する。 ・リングリレー
結婚証明書署名 新郎新婦、立会人代表が結婚証明書に署名する。
※他の列席者は受付などで事前に署名してもらう。
・婚姻届署名捺印
・ユニティキャンドル点火
署名披露 新郎新婦の署名の入った結婚証明書を列席者へ披露する。
結婚承認宣言 結婚の成立を承認してもらう。 ・立会人代表から承認宣言
・列席者全員で承認のベルを鳴らす
・列席者全員から承認のカードを集める
・列席者全員で契り杯
新郎新婦退場 新郎新婦が退場する。 ・ 宴内人前式の場合は退場せずにそのまま披露宴へ
・フラワーシャワー/ライスシャワー

 

ブーケ・ブートニアセレモニー:プロポーズのしるしに新郎から新婦へブーケを贈り、新婦から新郎へプロポーズの返事としてブートニアを贈る。

キャンドルリレー:一般ゲスト→親族→両親→新郎新婦の順にキャンドルの灯をリレーし、メインキャンドルに点火する。

リングリレー:指輪交換の際に、長いリボンに通した結婚指輪を列席者に運んでもらうセレモニー。

婚姻届署名捺印:挙式中に列席者の前で、婚姻届に署名・捺印する。

ユニティキャンドル:両家のキャンドルから新家庭のシンボルのキャンドルに灯を移し、両家のキャンドルの灯を、幸せを封じ込めながら吹き消す。

契り杯:和の人前式で、三三九度を模して列席者全員で杯の酒を飲む。

 
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2. 披露宴のスタイル

1)披露宴とは

 通常、結婚披露宴は「披露式」と「披露宴」の2部構成になっている。披露式は、披露宴に先立ち行ういわば第1部で、新郎新婦が結婚式を挙げ、夫婦となったことを招待客に報告し、改めて二人の経歴等を紹介する時間である。

一方、その後に続く披露宴は、文字通り新夫婦を披露する「宴」で、料理や飲物で招待客をもてなすことを目的とする。喜びを分かち合い、楽しく過ごす祝いのひとときである。最近では披露式を省いたカジュアルな披露宴も増えているが、まずは披露式を含むフォーマルなプログラム構成を覚えておきたい。

1 披露式
 披露式では通常、媒酌人もしくは司会者から、挙式(結婚)の報告と新郎新婦の紹介が行われる。その後、両家1名ずつの主賓が祝辞を述べる。通常30 分程度の時間を要する。
2 披露宴
 形式にのっとった披露式が終わると、食事や飲物の提供が始まり、披露宴となる。披露宴は、新郎新婦および両家の両親が日頃からお世話になっている招待客に改めて感謝の意を伝え列席の労をねぎらい、心尽くしのもてなしをするための時間である。新郎新婦や両家両親は招待客のもとへ挨拶にまわり、宴の後半には祝宴を盛り上げる演出や親族・友人による余興なども行われる。通常2時間程度の時間を要する。

 

2)披露宴の出席者

 披露宴に誰を招くかは、新郎新婦と両家両親にとって重要な問題のひとつである。また、招待客の顔ぶれは、二人と両家の婚礼への価値観を物語り、披露宴のスタイルを決める大きな要素となる。一般的な披露宴の出席者は以下の通りだが、最近はプライベート志向の高まりから家族のみ、親族のみで行う少人数披露宴や、親族を中心にごく親しい友人のみを招く内輪的な披露宴も増えている。

・両家両親と家族:新郎新婦の親、兄弟、姉妹
・両家親族:新郎新婦の親戚(祖父母、おじ、おば、いとこなど)
・主賓:新郎新婦や両家両親がお世話になっている人(一般にある程度社会的地位の高い方が多い)、学生時代の恩師など
・職場の上司
・職場関係者:職場の先輩、同僚、後輩
・友人

3)披露宴のスタイル

 披露宴は一般に、挙式と同じ日に、同じ場所で行うことが多い。一昔前までの披露宴は、「結婚は家と家の結びつき」という考え方から両家の家長が主催者となり、「新郎新婦を披露する」形式で行われていたが、近年はそうした意味合いを強く打ち出すことは少なくなり、現代のライフスタイルに即した形での多様化が進んでいる。現在、日本で行われている披露宴には以下のようなスタイルがあるが、最近は「自分たちらしく」という思いや、「新郎新婦自らがホスト・ホステス(主催者)となり、ゲストをもてなす」という意識が高まり、形式ばらずにゲストと楽しむスタイルが好まれる傾向にある。

1 フォーマルスタイル
 伝統的な披露宴を基にしたスタイル。「挙式」「披露宴」は同日・同所にて行うことが多く、媒酌人を立て、列席者の顔ぶれも主賓、職場関係者、友人、親族、家族と多彩で、比較的大人数で催される。基本的に両家の家長が主催し、両親の関係者が出席することもある。料理・飲物は正餐スタイルで提供され、進行内容は主賓の祝辞やスピーチといったオーソドックスなプログラムで、お色直しの回数は一般に多めである。

しかし最近は、媒酌人を立てないケースや新郎新婦が主催するケースも増えており、一口にフォーマルスタイルといっても、フォーマルからセミフォーマルまで幅広い様式が展開されている。

2 カジュアルスタイル
 カジュアルスタイルの披露宴は、従来の披露宴から堅苦しく形式的な要素を省いた、「パーティ」のイメージの披露宴である。こちらも比較的フォーマルに近いものから二次会に近い形までスタイルの幅が広く、新郎新婦の希望に応じて様々にカジュアル度の調整が可能である。フォーマル寄りの披露宴は祝儀制にするのが一般的だが、挙式を海外などで済ませた後に1.5次会スタイルで行う場合などは、会費制にするケースもある。

いずれにせよ、列席者の顔ぶれとしては主賓を定めることは少なく、親族や親しい友人を中心にして行われることが多い。

3 2部制披露宴と1.5 次会
◆ 2部制披露宴
挙式後、同じ日に披露宴を2回行うスタイルを2部制披露宴という。挙式と第1部披露宴を親族中心で行い、第2部には会社の同僚や友人を招くといったスタイルで、親族の人数が多い場合や、招待人数が多くて意中の披露宴会場に収容しきれない場合によく利用される。また、新郎新婦が自らゲストをもてなす意識が高まっている近年は、「親族へのもてなし」と「友人へのもてなし」をそれぞれに合わせた形で行いたいという希望から人気を博している。
◆ 1.5 次会
披露宴ほど形式ばらず、二次会ほどくだけた雰囲気ではない、そんなイメージで行う祝宴を俗に「1.5 次会」という。海外で挙式した新郎新婦の帰国後パーティや、故郷での挙式・披露宴後、現在の居住地で友人や同僚を招いて気楽に、というケースに適し、立食スタイルや会費制が多いことが特徴である。

二次会:披露宴終了後同日に別の場所で行われるパーティで、友人が幹事となり、会費制とする事が一般的である。

 

祝儀制と会費制
◆ 祝儀制披露宴
日本の婚礼では、招待状に「会費制」と記されていない限り、その披露宴は祝儀制であることを意味する。祝儀制披露宴とは、招待客が任意で祝儀を贈り列席するスタイルの披露宴である。日本には古くから慶事や弔事に相手を思いやって金品を贈る慣習があった。婚礼の祝儀は本来、婚礼の前に品物を贈るのが正式であり、披露宴で招待客を手厚くもてなすのは、この祝儀のお礼の意味も込められているからである。しかし近年は、品物が相手の趣味に合わなかったり、同じ品が重なったりするのを避けるため、婚礼の当日に現金を持参し、贈るのが一般的となった。現在の婚礼で、たとえ主催者から特に促されなくても、祝儀を持参するのが常識となっているのには、このような背景がある。祝儀の相場は地域・年齢・主催者との関係などによって異なるが、現在は3~5万円が一般的である。

◆ 会費制披露宴
会費制披露宴とは、招待客が招待状で一律に指定された会費を支払って列席するスタイルの披露宴である。会費制披露宴は本来、両家の家長や新郎新婦が「主催」するのではなく、新郎新婦の友人などが「発起人」となり、「二人を祝う会」として開くものであるが、近年は招待客の高額な金銭負担や「いくら包むべきか」と気を遣わせてしまうことを避けたいという理由から、「気遣い無用」の意味を込めて一般的な祝儀の相場より低い金額の会費を設定し、自ら会費制披露宴を催すカップルも増えてきた。この場合は「新郎新婦が祝い金(にあたる金銭)を催促している」と誤解されることを防ぐために、招待状で「当日は会費制にさせていただきましたのでお心遣いはなさいませんようお願い申し上げます」などと趣旨を伝える配慮が必要である。

 

4)披露宴スタイルの判断基準

 その新郎新婦に合った披露宴のスタイルは、招待客の顔ぶれにより判断することができる。

友人中心で行われる披露宴と主賓や会社関係者、親族を中心に招く披露宴では、両親の立場や列席者への配慮に違いが生じる。婚礼のスタイルが多様化しても、「結婚は家と家の結びつき」であることや、披露宴の目的が夫婦となった二人の人となりを紹介し、これまでお世話になったことへの感謝と「今後もよろしくお願いいたします」という気持ちを伝えることであるのに変わりはない。新郎新婦の希望も大切であるが、まずは列席者に心地よく過ごしてもらえる披露宴のスタイルを選択する必要がある。

ウエディングプランナーは、新郎新婦の希望と列席者への心配りを考慮しながら、バランスのとれた提案をすることが大切である。
 
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第5章 婚礼衣裳

1. 婚礼衣裳の種類

1)新郎の衣裳

 新郎の衣裳は、挙式スタイルや披露宴の形式または好みにより選択される。神前式には和装、キリスト教式や人前式には洋装を着用するのが一般的で、昨今は神前式よりキリスト教式や人前式が増えているため、洋装が主流となっている。披露宴中に衣裳を替える(お色直し)場合は、新婦の衣裳に合わせて選ぶのが一般的であり、「黒紋付羽織袴→タキシード」や「白のタキシード→カラーのタキシード」といったパターンが多い。

また、上着とズボンはそのままでインナーのシャツを白から色物にし、タイやチーフなどの小物を替えて着こなしの印象を変える「イメージチェンジ」なども行われている。新郎の衣裳はレンタル利用が大半であるが、衣裳はレンタルでも、肌に直接触れるシャツなどは購入しなければならないこともある。

1 新郎の和装
 和装における男性の第一礼装を「紋付羽織袴」という。紋付の長着に袴をはき、紋付の羽織を合わせるスタイルで、最も格の高い正礼装は五つ紋の「黒紋付羽織袴」である。これは主に神前式の式服として着用され、お色直しの場合は、新婦の着物に合わせた「色紋付」を選ぶこともある。

◆ 新郎の和装小物
羽織ひも
羽織の襟の胸のあたりにある乳(ち)という小さな輪につけるひも。
角帯(かくおび)
男帯の1つ。礼装の袴の下には博多織の角帯を締める。
白扇(はくせん)
婚礼の際に持つ扇のこと。竹骨の扇で、地の紙に文字や絵などがかいていない白紙張りの扇。
雪駄( せった)
鼻緒が白の畳表のものを用いる。
足袋
白足袋をはく。

【黒紋付羽織袴】

2 新郎の洋装
 昼の婚礼では、昼の正礼装である「モーニングコート」を着用するのが基本である。モーニングコートはかつての昼の第一礼装「フロックコート」の前裾をカットし、狩猟服として生まれたスタイルであることから「カッタウェイ」ともいい、下にダークグレーのストライプのズボンを合わせる。その他、クラシカルなフロックコートを新郎用衣裳としてモダンにアレンジしたものもある。

 夜の婚礼では、夜の正礼装である燕尾服またはタキシードを着用する。燕尾服は、後ろの裾が燕の尾のように割れているのが特徴で、「テイルコート」とも呼ばれている。本来はタキシードより格上の第一礼装であるが、現在は皇室行事等の非常に格式の高い場面でしか着用されなくなってきたため、婚礼ではタキシードが主流となってきた。タキシードはデザイン性の高いものも多く、幅広いイメージで着こなせるのが特徴である。

◆ 新郎の洋装小物
カマーバンド
タキシード着用の際にウエストに巻くサッシュベルト(腹帯)。ベストの代用品であり、カマーベルトともいわれることもある。
サスペンダー
肩から吊り下げてズボンを留める留め具。正装にはベルト通しのないズボンが多いため、必需品である。
カフリンクス
シャツの袖を留めるもの。アクセサリーの役割も果たす。
ポケットチーフ
上着の胸ポケットに入れる装飾用のチーフ。
白手袋
礼装用の手袋。
タイ
モーニングコートには白と黒のストライプまたはシルバーグレーのネクタイやアスコットタイ、燕尾服には白のボウタイ(蝶ネクタイ)を合わせる。タキシードには黒のボウタイが基本だが、披露宴ではファンシーなボウタイやクロスタイを合わせることも多い。
シューズ
モーニングコートには黒のストレートチップ、燕尾服とタキシードには黒エナメルのオペラパンプスを合わせる。
靴下
黒の薄手の靴下。シルクが正式である。

【モーニングコート】

2)新婦の衣裳

 新婦の衣裳も新郎と同様に、挙式や披露宴のスタイルまたは好みによって選択される。神前式には和装、キリスト教式や人前式には洋装を着用するのが一般的で、キリスト教式や人前式が多くなるにつれ、洋装が主流となってきた。

 新婦は披露宴でお色直しをすることも多く、パターンとしては「ウエディングドレス→カラードレス」が最も人気で、「ウエディングドレス→振袖→カラードレス」「白無垢→色打掛→ウエディングドレス」などと、2回お色直しを行うこともある。

近年はレストランウエディングやリゾートウエディングのようにカジュアルなイメージの結婚式が増えたことや、お気に入りのウエディングドレスを1 日中ずっと着ていたいという新婦の希望も多くなり、1着のウエディングドレスのまま、祝宴半ばにヘアスタイルや小物を替えてまったく違う印象にコーディネートを変える「イメージチェンジ」も人気がある。

新婦の衣裳も新郎同様にレンタルが多いが、ブライダルインナー(下着)やベール、グローブといった小物は購入しなければならないことが一般的である。

1 新婦の和装
 新婦の和装には、「白無垢」「色打掛」「本振袖」などがある。
 白無垢は、神前式で着用する和装の婚礼衣裳の中でも最も格の高い正礼装で、打掛、掛下(打掛の下に着る振袖)、帯、小物に至るまで白一色に統一するのが特徴である。白には「嫁ぎ先の家風に染まる」という意味があり、頭には「角隠し」または「綿帽子」を被る。
 色打掛は、神前式や披露宴に着用する正礼装で、地紋の入った色地におめでたい柄の華やかな刺繍がされたものが多く、文字通り打ち掛けて着たことから「打掛」といわれる。
 本振袖も新婦の正礼装であるが、近年は江戸後期から昭和までの一般女性の花嫁衣裳であった黒振袖、それもクラシカルに裾を引きずって着る「黒引き振袖」のスタイルが人気である。披露宴のお色直しで和装を着用する場合は、色物の本振袖を着用することも多い。

◆ 新婦の和装小物
抱帯( かかえおび)
丸帯の下に結ぶ細帯。もとは江戸時代の女性が外出時におはしょりを留めるために用いた帯だが、花嫁の和装の装飾用小物になった。
懐剣( かいけん)
武家女性が身につけた護身用の短剣が装飾品化したもの。また嫁ぐ花嫁の決意の表れとして身につけたともいわれている。帯にさす。
掛下帯(かけしたおび)
打掛の下に着る掛下振袖に用いる帯。本振袖には丸帯を締める。
筥迫( はこせこ)
江戸時代の上流女性が用いた箱型の小物入れ。襟にさす。
末広( すえひろ)
婚礼の際にもつ扇子のこと。
角隠し(つのかくし)
新婦の和装の髪型「文金高島田」につける帯状の白い布。挙式のみ着用し、披露宴では外すのが一般的。白無垢、色打掛、本振袖、どの衣裳にも用いることができる。
綿帽子(わたぼうし)
文金高島田を覆うように被る、袋状の白い布。白無垢にのみ用いる。
簪( かんざし)
着物用の髪飾り。べっ甲や、金や銀をめっきした金属製のものがある。
笄( こうがい)
日本髪の髷(まげ)にさす棒状の髪飾り。べっ甲や象牙製が高級品である。

【白無垢】

2 新婦の洋装
 新婦の洋装には、「ウエディングドレス」と「カラードレス」がある。
 ウエディングドレスは本来「式服」を意味し、一般に「白」が選ばれるが、これは1840 年、英国のヴィクトリア女王がすべてを白で統一した花嫁衣裳を身につけたことをきっかけに定着したといわれている。デザインはロングドレスが多く、後ろのトレーンが長くなるほど格調が高くなる。デザインに特に決まりはないが、キリスト教式で着用する場合、教会によっては「肌を露出してはならない」と指示されることもあるので注意が必要である。また、和装で式を挙げた後にお色直しとして着る白ドレスの場合は、より華やかでスタイリッシュなデザインが選ばれる傾向にある。
 もう一方のカラードレスは、お色直しとして着用する日本独特のドレスで、文字通り有色の華やかなデザインが特徴である。披露宴専用であることから、イブニングドレスのように肌を大胆に露出するものや流行を意識したデザインも多く、新婦の個性をよりアピールしやすい衣裳といえる。カラーは新婦の好みや季節、披露宴のイメージを考慮して選ぶのが一般的である。

◆ 新婦の洋装小物
ベール
ベールは新婦の顔や頭を覆う布で、チュールやレースなどの薄い布で作られ、ショートからロングまで様々な長さがある。キリスト教式ではベールアップの儀式に必要な重要アイテムであるが、聖母マリアを思わせる「マリアベール」などの顔を覆わないタイプは着用不可の教会もあるので注意する。
ヘッドドレス
新婦の髪飾りのことで、生花、造花、クラウン、ティアラ、ボンネ、カチューシャ、シャポー(帽子)などがある。ウエディングドレス着用の際に人気のあるものは、ブーケと同じ花材を使った生花や、王冠の形をした「クラウン」、女性の正装用の宝冠で皇族の婚儀にも用いられる「ティアラ」などがある。
グローブ
腕の3分の2を覆うロンググローブから手首までのショートグローブまで様々な長さがあり、素材もサテン、オーガンジーなど多彩である。ドレスの色やデザイン、生地の質感に合わせて選ぶ。
アクセサリー
ネックレス、ペンダント、チョーカー、イヤリング、ピアスなどがあり、素材はパールのほか、カラーストーン、ラインストーン、クリスタルなど華やかでゴージャスなものが中心である。白を基調としたドレスの場合はパールや透明のストーン、カラードレスの場合はドレスの色に合わせたラインストーンのアクセサリーを選ぶことが多い。

【ウエディングドレス】

パニエ
ドレス着用の際にドレスの下にはくアンダースカートのことで、ドレスのラインをきれいに出すためのものである。ドレスのスカート部分のボリュームに合わせて、パニエのワイヤーの段数、フリルの段数などを変えて調整する。最近では妊婦対応のパニエも作られている。
ブライダルインナー
プロポーションを整え、シルエットを美しく見せるためのドレス用下着。ロングブラにペチコートをセットしたタイプや、ブラジャー・ウエストニッパー・ガーターベルトを一体化した「スリーインワン」などがある。一般にレンタルドレスを利用の際も購入が必要である。
シューズ
本来はドレスと共布の靴を合わせるのが正式であるが、日本ではドレス姿をより美しく見せるために背の高さを調整するブライダルシューズを利用することが多い。デザインは白のパンプスが一般的で、カラードレスの場合は色を合わせることもある。

3 ドレスラインの種類
◆ Aライン
アルファベットの「A」のように、ウエストから裾に向かって直線的なラインを描くドレス。
◆ プリンセスライン(ドームライン)
ウエスト部分にギャザーをふんだんに入れて、スカートをふっくらと膨らませた、「お姫様」を思わせるライン。
◆ スレンダーライン
体にフィットさせた細長いイメージのライン。
◆ マーメイドライン
上半身から膝までが体にフィットし、膝から下が裾広がりになったドレス。まるで人魚のようなラインを描くことから「マーメイドライン」と呼ばれている。

服飾業界のプリンセスライン
 ブライダル業界では、ウエストの切り替え部にたっぷりとギャザーを入れて、スカートをふんわりと膨らませたラインを「プリンセスライン」と呼んでいる。しかし、服飾業界では、英国のエドワード7世の王妃が皇太子妃時代に愛用したラインで、ウエストの切り替えがなく、縦の切り替え線だけで、フィットした上半身からフレア状のスカートへ続くものを「プリンセスライン」としている。

 

3)列席者の衣裳

 列席者の衣裳は、一般的には新郎新婦同様の正礼装が望ましい。特に両親や媒酌人夫妻は、当日の新郎新婦の衣裳と同格の衣裳選びが必要である。その他のゲストの衣裳も、本来は正礼装が理想的であるが、最近では略礼装で出席する姿も多く見受けられる。列席者の衣裳選びのアドバイスは、挙式や披露宴のスタイルや会場の雰囲気に合わせて提案することが大切である。

1 両親と媒酌人夫妻の衣裳
 父親や媒酌人の衣裳は、新郎同様の正礼装で、黒紋付またはモーニングコートを着用する。モーニングコートは洋装の昼の第一礼装で、夜は燕尾服やタキシードを着るのが本来であるが、日本における父親と媒酌人は昼夜にかかわらずモーニングコートを着用するのが一般的となっている。

母親や媒酌人夫人の衣裳は、和装なら黒留袖や色留袖、洋装なら昼はアフタヌーンドレス、夜はイブニングドレスが適当である。最も多く着用されるのは黒留袖だが、キリスト教式や人前式など洋風セレモニーの人気が高まり、また披露宴もカジュアルなスタイルを希望する新郎新婦が増えていることから、洋装が選ばれることも多くなってきた。なお、たとえば媒酌人夫人が色留袖にするのであれば、両家の母親も色留袖を着用するなど、両家の父親と媒酌人、および両家の母親と媒酌人夫人は、すべて衣裳の格を揃えるのが原則である。

2 ゲストの衣裳
 男性ゲストの衣裳は、新郎の衣裳と同格か、それに準じるものが望ましい。昼は準礼装のディレクターズスーツ、夜は正礼装のブラックタキシードや準礼装のファンシータキシードなどが望ましいが、最近ではシックなダークスーツなどが着用されることも多い。

 女性ゲストの衣裳は、和装の正礼装であれば、既婚者は黒留袖(親族のみ)または色留袖、未婚者は中振袖が一般的で、準礼装であればミセス・ミスに関係なく訪問着や色無地紋付が適当である。洋装の場合は、本来であれば昼はアフタヌーンドレスやセミアフタヌーンドレス、夜はイブニングドレスやカクテルドレスがふさわしいが、日本における婚礼では昼夜ともドレッシーなスーツやワンピース、パーティドレス等が一般的となっている。女性ゲストの衣裳は新婦を引き立てるために、白を着用しないことがマナーとされている。

◆ 日本の一般的な婚礼衣裳 早見表

昼の衣裳 夜の衣裳
新郎 黒紋付羽織袴/色紋付
モーニングコート/タキシード
黒紋付羽織袴/色紋付
燕尾服/タキシード
新婦 白無垢/色打掛
黒引き振袖/本振袖
ウエディングドレス/カラードレス
白無垢/色打掛
黒引き振袖/本振袖
ウエディングドレス/カラードレス
父親
媒酌人
黒紋付羽織袴
モーニングコート/タキシード
黒紋付羽織袴
燕尾服/タキシード
母親
媒酌人夫人
黒留袖/色留袖
アフタヌーンドレス
黒留袖/色留袖
イブニングドレス/カクテルドレス
男性 ディレクターズスーツ/ダークスーツ タキシード/ダークスーツ
女性 既婚者:黒留袖(親族のみ)/色留袖
未婚者:中振袖/訪問着
ドレッシーなスーツ/ワンピース
既婚者:黒留袖(親族のみ)/色留袖
未婚者:中振袖/訪問着
ドレッシーなスーツ/ワンピース


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2. トータルコーディネート

1)ブーケ・ブートニア

 ブーケとブートニアは、結婚する二人を象徴するものである。ブーケとブートニアには、「プロポーズをするために女性の家に向かう道、男性は野に咲く花を摘んで、女性の家に向かい、その摘んだ野の花を束ねて女性に差し出しプロポーズをした。プロポーズを受けた女性は、そのプロポーズを承諾する証として、その花の束から1輪の花を抜き、男性の胸ポケットに返した」という由来がある。新婦がブーケを持ち、新郎がブートニアを胸につける姿は、結婚への強い意志を表す。

ブーケは挙式では白花を中心としたもの、披露宴では衣裳の色に合わせたカラフルなものが多く選ばれる。衣裳のデザインや色、さらに新婦の思いを考慮し、フラワーコーディネーターのアドバイスを受けながら、形状や花材を決めていくとよい。

1 ブーケ

◆ ラウンドブーケ
丸い形に花を束ねたブーケ。小さくも大きくも作ることができ、選ぶ花材により大人っぽくも可愛らしいイメージにも作ることができるため、合わせるドレスのデザインを選ばない。
◆ キャスケードブーケ
キャスケードとは「小さな滝」という意味であり、流れるようなデザインのブーケである。豪華で格調高いイメージがあり、挙式時に持つなどフォーマルブーケとして人気がある。贅沢な印象を強調する高価な花材もよくマッチする。ボリュームのあるデザインのドレスに合う。
◆ クレッセントブーケ
クレッセントとは、フランス語で「三日月」の意。形状が三日月を思わせることから、このように呼ばれている。ラウンドブーケに比べデザイン性が強いため、やや個性的なドレスに合う。
◆ クラッチブーケ
クラッチとは「ぎゅっとつかむ」という意味で、切り花の茎の中央部分をまとめて「ぎゅっ」と持つスタイルのブーケを「クラッチブーケ」という。ナチュラルなイメージであるため、カジュアルなドレスにも合う。
2 ブートニア
 「ブートニア」はフランス語でボタンホールを意味する言葉で、新郎の左襟のボタンホールに挿す花であることから、この花飾りを「ブートニア」と呼ぶようになった。ブートニアの花は先に述べたプロポーズに対しての承諾の意味から、新婦のブーケと同じ花材が使用される。

◆ ブートニアの留め方
ブートニアは、ブーケと同じ生花で作られるものと、アートフラワー(造花)で作られるものがある。一般的なコサージュのように安全ピンで留めるのではなく、マチ針を大きくしたような「ブートニアピン」を使用する。花を上向きにし、左襟のボタンホールあたりの位置に固定する。ブートニアピンの先端は鋭く危険であるため、必ずブートニアの茎に刺し戻すか、針先にピンキャップを付けることを忘れてはならない。

2)美容・着付け

 ブライダルの美容には、ヘアメイク、美粧、エステティック、ネイルなどがあり、婚礼衣裳を着用する際に新郎新婦をより美しく演出するために施される。着付けは一般に和装の衣裳を着せ付けるイメージが強いが、「衣服を形よく着せる」ことであり、婚礼衣裳は和装・洋装ともに着付けが必要である。

 和装の着付けはほとんどの新郎新婦が希望するが、洋装の着付けは新婦のみで、新郎は簡単なチェックのみであることが多い。また、列席者が正装で出席するために、婚礼施設でのヘアメイクや着付けを希望することもある。

1 ブライダルヘアメイク
 ブライダルヘアメイクとは、婚礼衣裳に合わせたヘアスタイリングとメイクアップを行うことである。メイクの方法は洋装と和装で異なり、ヘアスタイリングも洋装は自髪中心なのに対し、和装では「文金高島田」のかつらを用いるなど、大きな違いがある。また、ブライダルヘアメイクには、背中や肩、首筋、腕など、着物やドレスから露出する部分に化粧を施す特有の技術があり、これを「美粧」という。

さらに婚礼当日の化粧のノリをよくするために、約1週間前に顔、襟あし、背中などの産毛を剃る「シェービング」を行う場合もある。新郎のヘアメイクは、ヘアスタイリングと顔色をよく見せるためのメイクが施されることが多い。列席者のへアメイクも希望があれば、予約にて受注する。

 ブライダルヘアメイクは新婦の思い入れが特に強いため、コンプレインになりやすい。「ヘアメイクのイメージが希望と違う」というコンプレインの予防には、ヘアメイクリハーサルを行うことが有効である。リハーサルでは、新婦がヘアメイクアーティストに相談しながらイメージを調整・確認する。婚礼当日は短時間での施術になるため、リハーサルをすることで当日の不安がなくなるというメリットもある。一般的にヘアメイクリハーサルは別料金であることが多かったが、近年は予め料金に含むケースも増えてきた。

コンプレイン:不満、苦情のこと。昨今のビジネスの世界では金銭の請求を伴わない苦情を「コンプレイン」、補償や賠償の請求を「クレーム」と使い分ける傾向にある。

和装の髪型
 新婦が白無垢や打掛を着用する際は、ヘアスタイルも日本髪を合わせるのが基本である。花嫁の代表的な日本髪は「文金高島田」といい、昔の未婚女性の髪型の中で最も格の高いものとして知られている。新婦自身の髪で結う場合とかつらを使用する場合があるが、現在はかつらが主流である。そのかつらを新婦の頭の形や顔立ちに合わせることを「かつら合わせ」という。近年では新婦の要望に応じて、茶髪のかつらを用意したり、かつらを使わない洋髪スタイルを提案することもある。

2 着付け
 和装の着付けは襟の出し方や帯結びに特別な技術を要するため、専門家に依頼するのが基本となる。婚礼の場合は新郎新婦のみならず、列席者の着付けの依頼も多いのが特徴である。

 洋装の着付けは、新婦のみ依頼することがほとんどである。ウエディングドレスやカラードレスは、日常着と異なり複雑な構造であることや、ブライダル用の特別な下着(ブライダルインナー)をプロのフィッティング技術で正しく着用することが美しい花嫁姿を実現するのに不可欠だからである。

3 ブライダルエステ
 ブライダルエステは、婚礼当日を最高の肌コンディションで迎えるために、普段では手の届かない部分のトリートメントを行うものである。一般的にはエステティック専門サロンや美容クリニックなどで行われ、数ヶ月・数週間・7日間・1DAY など多彩に揃ったコースから本人のスケジュールや料金に合わせて選択できる。近年は新婦だけでなく、新郎向けのトリートメントを用意しているサロンも多い。

◆ 新婦のエステ
フェイシャルトリートメント(顔)、ハンドトリートメント、フットトリートメント、背中のトリートメント、全身トリートメント、シェイプアップなどがある。脱毛やシェービング、デコルテのトリートメントを行うことも婚礼衣裳を美しく着用するのに効果的である。ブライダルエステは肌の調子を整えるだけでなく、挙式準備の疲れを癒すリラクゼーション効果もある。

デコルテ:フランス語で「肩や胸元をあらわにした」という意味で、日本ではイブニングドレス着用の際に露出する胸元から肩にかけての部分を表す時にこの言葉を用いる。

◆ 新郎のエステ
新郎も主役として美しくありたいものであり、身だしなみの1つとしてフェイシャルエステやヘッドマッサージ、ハンドトリートメント、顔のシェービングなどを行うとよい。新郎にとっても、挙式当日までのリラクゼーション効果が期待できる。

4 ブライダルネイル
 ブライダルネイルは爪のケア、カラーリングに加え、以前は3Dやマーブルといったアートを施す方法や自爪に付爪をするスカルプチュアが主流だったが、近年は紫外線で固まる合成樹脂を使用したジェルネイルを施すなど、多彩な選択肢が用意されるようになった。新婦はグローブを着用することが多いため、指先のケアまでは必要ないと考える人もいるが、実際には指輪交換や披露宴での列席者との関わりの中でグローブを外し、手を見せる瞬間も多い。女性がネイルアートを楽しむことが日常的になってきたため、近年はブライダルネイルへの関心がますます高まっている。

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3. 衣裳業務

1)新郎新婦の衣裳の入手方法

 新郎新婦が婚礼衣裳を入手するには「借りる」方法と「買う」方法があり、和装・洋装ともに貸衣裳店「レンタル衣裳サロン」で借りるのが主流である。ただし新婦の洋装は衣裳を買うことも多く、その場合は「セルドレス」と「オーダードレス」のどちらかを購入することになる。セルドレスやオーダードレスは専門の「ドレスショップ」があるが、レンタル衣裳サロンで取り扱っている場合も増えてきている。

1 貸衣裳
 貸衣裳は「レンタル衣裳」ともいわれ、婚礼衣裳(新郎新婦の衣裳・列席者の衣裳)の主流である。レンタル衣裳が選ばれる要因には、高額な衣裳を購入するよりも安価な料金で着用できることや、挙式後の保管が不要であること、多くの衣裳から選ぶことができ、トータルコーディネートした小物などを衣裳と一緒にレンタルできることなどがある。

 レンタル衣裳は早い者勝ちであるため、衣裳にこだわる新郎新婦は、会場決定と同時に衣裳を予約することもある。近年は、貸衣裳の弱点とされた「他人が袖を通した衣裳」のイメージをなくすため、洋装に「ファーストレンタル」というプランを設けているサロンが多くなってきた。これは新品のドレスを最初に着られることを約束するシステムで、サイズオーダーに近い感覚でレンタルできることから人気がある。

2 セルドレス
 セルドレスとは既製の販売用ドレスのことであり、プレタポルテ(高級既製服)の一種である。通常はドレスショップで販売されており、店舗にある衣裳の中から選んで購入する。本人のサイズと異なる場合は、多少のサイズ直しが可能である。海外から輸入したドレスも多く、価格は高価なものからレンタルドレスより安価なものまで幅広い。セルドレスは自分だけの婚礼衣裳であるため、「自分のドレス」という点にこだわりたい新婦に人気がある。レンタルとは異なり、小物は別途購入しなければならないことが多い。

3 オーダードレス
 オーダードレスは、ドレスショップやオーダードレス専門店にオーダー(注文)し、仕立ててもらうカスタムメイドのドレスである。オーダードレスにはいくつか種類があり、サンプルドレスを基本とし、それをアレンジして制作する「セミオーダードレス」や、好みのデザインを自分のサイズで制作する「サイズオーダードレス」などがある。また、デザイナーに相談しながらデザインや素材を決め、仮縫いを行って世界に1つしかないオリジナルドレスを作る「フルオーダードレス」もある。制作期間はオーダードレスの種類にもよるが、4~6ヶ月を要することが多く、婚礼の日程との調整が大切である。オーダードレスの場合もセルドレスと同様に、小物は別途購入しなければならないことが多い。

仮縫いとは
 フルオーダードレスには、仮縫いという工程がある。仮縫いは本縫いの前にシーチング(仮縫い用の生地)で作ったドレスを試着し、補正を行う作業である。新婦は婚礼までに太る・痩せるなど体形の変化を起こす恐れがあるため、シーチングでの仮縫いは、あまり早い時期に行なわないよう注意が必要である。一般的には2~3度の仮縫いを行って本縫いに入る。

衣裳に必要なアドバイス
◆ 挙式や披露宴のスタイルによるアドバイス(和装か洋装か/カジュアルかフォーマルか)
◆ 挙式スペースや披露宴会場のイメージによるアドバイス(バージンロードの長さ/バンケットルームの広さ/バンケットルームのイメージ/出席者の人数)
◆ 新郎と新婦の衣裳のバランス(衣裳の格が合っているか)
◆ 衣裳のコーディネート(衣裳のトータルバランス/トレンドの提案/テーマによるコーディネート方法)
◆ 体形による衣裳のデザイン(着たいものと似合うものの違い)
◆ お色直しのテクニック(時間の問題や予算の問題)
◆ 立ち居振る舞いや効果的な見せ方(婚礼衣裳着用時の立ち方・歩き方)

 

2)貸衣裳業務

 貸衣裳店や婚礼施設内の衣裳室に在籍する衣裳担当者を「ドレスコーディネーター」という。
衣裳は洋装と和装に大別されるが、貸衣裳業務では、洋装と和装を一人のドレスコーディネーターが接客する場合と、洋装の担当者と和装の担当者、さらに新郎の衣裳、列席者の衣裳と、衣裳ごとに担当者を設けている場合とがある。貸衣裳業務に必要な知識と業務内容には次のようなものがある。

1 接客
 ドレスコーディネーターが店舗や衣裳室で行う業務は、「トータルコーディネート」が中心である。新郎新婦が来店したら、ドレスコーディネーターはウエディングプランナーと同様にヒアリングを行い、二人に衣裳や小物合わせ、婚礼当日のスタイリングまでトータルに提案する。ドレスコーディネーターに要求されるのはファッションセンス、そして「正しい採寸技術」とドレスの「フィッティング技術」である。

 ドレスの予約から婚礼当日までは、3~6ヶ月という期間がある。その間、新婦は体形の変化を起こすことがあるため、それを見越したフィッティング技術が必要とされ、これがドレスコーディネーターの腕の見せどころにもなっている。貸衣裳の場合はサイズ直しに限界があるので、ドレスの構造上の問題も考慮した上で衣裳を提案しなければならない。また、新郎のズボンの裾上げ、袖丈の調整などの補整技術も必須である。

 なお、決定した衣裳は通常、衣裳についているタグに予約日を記入し、店舗全体で把握できるよう管理する。予約台帳も使って二重に管理し、ダブルブッキングが起こらないよう細心の注意を払うことが大切である。

2 セールス
 貸衣裳のセールスは、店舗または業務提携した婚礼施設で行う。店舗では直接セールスを行うことができるが、婚礼施設では、パートナー企業として契約している衣裳関連企業が1社の場合と多数の場合がある。後者の場合は成約カップルを独占してセールスすることが難しいため、ファッションショーやブライダルフェアでの展示、店舗での衣裳展示会などを企画し、積極的に自社衣裳の魅力をアピールしなくてはならない。パンフレットやウェブサイトを充実させることも、限られたターゲットに対する効果的なセールスとなる。

3 メンテナンス
 ドレスコーディネーターの業務として重要なものに、ドレスのメンテナンスがある。企業によってはメンテナンス専門の部署を設けている場合もあるが、ドレスコーディネーターがメンテナンスを行うことも少なくない。衣裳は一度着用すると、汚れるだけでなく、素材そのものやビーズ刺繍などを施した部分が傷みやすい。

返却された衣裳は念入りにチェックして、サイズ直ししたものは元の状態に戻し、クリーニング、プレスとできる限りのメンテナンスを行ってから、再度店頭に並べる。このメンテナンス業務は縫製技術を必要とするため、一通りの縫製技術を身につけておくと理想的である。

4 搬入と搬出
 衣裳の搬入・搬出は、ドレスコーディネーターが行う場合と、搬入・搬出担当者が行う場合がある。決定した衣裳や小物類を指定のケースやバッグに梱包し、婚礼施設の美容室へ搬入するのが主な業務である。ケースやバッグには両家名、納品場所、時間、納品内容などが外から見てもわかるように記されている。衣裳の搬入前に必ず行うのが内容確認で、指定されたものがすべて用意されているかを入念にチェックする。一般的に搬入は衣裳を婚礼施設に届けるだけで、その後は婚礼施設の美容室に管理が引き継がれる。

婚礼終了後は、美容室のスタッフによってケースやバッグへ戻された衣裳一式を搬出指定日に搬出する。衣裳は想像以上に重く、搬入・搬出作業は重労働であるが、婚礼の衣裳であることを忘れずに丁寧な取り扱いを心がける。

5 ディスプレイ
 店舗に来店する新郎新婦に商品をアピールする方法として、衣裳ディスプレイがある。一般的には店舗のショーウインドウと各衣裳の展示ブースや打合せブースでそれぞれマネキンに衣裳を着せ、展示する。実際の新郎新婦にフィッティングする状態とは異なり、衣裳を着用したイメージを伝えるため、マネキンの手の動きやボディの向き、ドレスラインの見せ方、小物のコーディネート提案など、衣裳の特徴をアピールするためのテクニックが必要となる。

6 仕入れ
 ドレスの買付けはバイヤーといわれる仕入れ担当者が行うが、時には新郎新婦や列席者と直接関わるドレスコーディネーターが買付けを行うこともある。ドレスコーディネーターは接客を通して新郎新婦や列席者のニーズを把握し、売れる商品と売れない商品を見分ける能力を培うことが大切である。また、婚礼衣裳にもトレンド(流行)があるので、時代の流れを把握することも重要な業務となる。

7 コンプレイン
 婚礼衣裳は、「汚れ」や「予約したものと違う」「サイズが違う」といった当日のアクシデントが起こりやすい。特に小物に多く、「予約したものが届いていない」「靴のサイズが違う」など、単なる注意不足から生じるコンプレインも少なくない。搬入前に細心の注意をもって確認するのはもちろん、ドレスコーディネーターがウエディングプランナーと同様に、新郎新婦とのコミュニケーションをしっかりと取ることも、最良のコンプレイン予防策である。

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第6章 ウエディングプランナーの業務と流れ

1. ウエディングプランナーの業務

 ウエディングプランナーの業務とは、婚礼の準備と進行をサポートする業務である。内容は主に「新規接客業務」「婚礼打合せ業務」「婚礼施行・進行管理業務」に大別される。これらの業務を分業して担当するか、一人のウエディングプランナーがすべて担当するかは、会場ごとに違いがある。しかし、いずれもブライダルビジネスには欠くことのできない重要な業務である。

1)新規接客業務

 新規接客業務とは、婚礼会場を検討しているカップルに施設への来館を促し、会場の案内や挙式・披露宴スタイル、料金プランなどを提案し、二人のイメージを膨らませ、成約へと結びつける重要な営業業務である。この業務を担当する者には、婚礼に関する幅広い知識だけでなく、高い営業スキルが求められる。

さらに新郎新婦の接客を担当したプランナーの印象はそのまま婚礼施設全体の印象となることが多いため、身だしなみへの気配りや礼儀正しさも欠かせない。婚礼施設の魅力と同じく、ウエディングプランナーの魅力が、会場を決定する要因となるのである。

2)婚礼打合せ業務

 婚礼打合せ業務は、新郎新婦が婚礼を準備する過程をサポートし、打合せで決定した各種アイテムを手配する業務である。打合せを担当するウエディングプランナーは、料理、引出物、演出など扱うアイテムの数が多く、それぞれの専門知識が必要となる。また、手配内容にミスがあれば、婚礼当日にトラブルが発生する恐れがあるため、業務への慎重さも求められる。

しかし、打合せ担当者にとって一番大切なのは、新郎新婦との信頼関係を構築する能力である。信頼関係を築けなければ、新郎新婦の思いを引き出すことは難しくなり、新郎新婦が満足する挙式・披露宴を行うこともできず、ひいては婚礼施設の評判を落とすことにもなりかねない。業務の正確さとともに、信頼関係の構築に努めることが最大の任務となる。

3)婚礼施行・進行管理業務

 婚礼施行・進行管理業務は「キャプテン業務」とも呼ばれ、婚礼会場のセッティングおよび当日の進行管理を担当する業務である。この業務を担当するウエディングプランナーは、間近に迫った婚礼に向けて、迅速かつ万全な準備を行わなければならない。

それでも婚礼当日は何かと予期せぬ問題が発生するものであるが、その時にじっくりと考え、対策を練る時間はないため、この業務に携わる者には冷静な判断力と決断力が求められる。緊張感に満ちた業務であるが、各種確認やスタッフ間の密な連絡で事前に防げる問題も多く、いかにチームワークを高めていくかが鍵となる。

キャプテン
 キャプテンとは、婚礼の施行・進行管理の責任者を指す。ウエディングプランナーが当日の施行・進行管理業務に携わらない施設では、キャプテンが打合せを担当したプランナーから事前に引き継ぎを行い、会場セッティングから進行管理まで婚礼の実務全般を担当する。キャプテン業務の範囲は施設によって違い、挙式を含めた全体の進行を直接管理する場合と、披露宴主体で管理する場合がある。どちらの場合も当日の司令塔となり、アテンダントや美容スタッフ、フォトグラファー、司会者、音響オペレーター、料飲サービススタッフとともに協力し合い、婚礼を成功させなければならない。


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2. ウエディングプランナーの業務の流れ

 婚礼の準備は、一般に半年から1年をかけて行われる。婚礼業務を遂行するためには、新郎新婦の準備期間や婚礼当日の動きを把握する必要がある。準備期間には結婚指輪の検討やブライダルエステなど、ウエディングプランナーが直接関わることの少ない内容もあるが、プランナーはブライダルの専門家としてアドバイスや意見を求められることも多いため、あらゆるアイテムについて精通しておく必要がある。

1)当日までを迎えるまで

 当日を迎えるまでの期間に関わるのは、「新規接客業務」と「婚礼打合せ業務」を担当するウエディングプランナーである。この業務を担当する者は、新郎新婦の行動に合わせて会場案内や準備のサポート、手配業務を行う必要がある。まずは新郎新婦が当日を迎えるまでの動きを把握し、業務のタイミングをはかることが大切である。

◆ 新郎新婦の動きとプランナー業務

担当 時期 新郎新婦の動き プランナーの業務
新規接客業務 一年前 ●顔合わせ
●会場見学 ○新規接客
会場案内/プラン・見積り提示
●会場決定→申込み ○成約手続き業務
ハネムーン検討
婚約/結婚指輪の検討 ※提携ジュエリーショップの紹介
6ヶ月前 ●結納/衣裳検討 ※衣裳室の案内/提携衣裳店の紹介
●挙式・披露宴のスタイル検討
●招待客リストの作成 ○打合せファイル作成
打合せ業務 3ヶ月前 ●招待状の作成 ○招待状の手配
主賓挨拶の依頼
遠方客の宿泊手配 ※宿泊手配/提携宿泊施設の紹介
2ヶ月前 ●招待状発送
●婚礼アイテムの検討 ○婚礼アイテムの手配
司会者 司会者
ヘアメイク ヘアメイク
写真 フォトグラファー
料理
引出物・引菓子
●進行・演出の検討 ○進行表作成
●見積りの検討 ○見積書作成
ブライダルエステ開始 ※提携エステサロンの紹介
1ヶ月前 ●招待状返信締切り
●席次表・席札作成 ○席次表・席札の手配
●会場装花の検討 ○会場装花の手配
●ブーケの検討 ○ブーケの手配
●オプションアイテムの検討 ○婚礼アイテムの手配
●BGMの検討 引出物・引菓子
●ヘアメイクリハーサル 演出
料理
プチギフト
●見積りの検討 ○最終見積書作成(変更修正)
●進行内容の確認 ○最終進行表作成(変更修正)
2週間前 ●司会進行打合せ ○進行詳細の確認
●最終打合せ ○最終人数・内容の確認
●婚礼費用支払い ○請求書の発行
○入金確認
施行・進行管理業務 前日 ●前日搬入 ○会場セッティング
○納品確認
当日 【婚礼当日】 ○会場セッティング
○進行管理
○お引上げ・見送り

 

2)婚礼当日

 婚礼当日に関わるウエディングプランナーは、「婚礼施行・進行管理業務」を担当する。この業務では、1日の進行の流れと新郎新婦および列席者の動きを把握することが大切である。
婚礼のスタイルは多様化しているが、一般的に同日、同会場で「挙式」と「披露宴」を行うケースが多い。進行は婚礼会場ごとに多少の違いがあるが、ここでは基本的な流れを紹介する。

◆ 参考スケジュール

【挙式】 11:00
【披露宴】 12:00
8:30 新郎新婦来館
  新婦支度開始
  新郎支度開始
9:30 両家両親来館
  両家両親支度開始
10:00 新郎新婦記念写真撮影
10:20 両家親族来館
10:30 親族紹介
10:40 挙式リハーサル
11:00 【挙式】
11:30 親族集合写真撮影
12:00 【披露宴】
新郎新婦入場
  新郎新婦の紹介
 (媒酌人or司会より)
  主賓挨拶
12:30 ケーキ入刀
乾杯
  料理スタート
  スピーチ
13:00 お色直し中座
13:25 再入場
  テーブルラウンド
  余興
  新婦手紙朗読
  花束贈呈
  謝辞
14:30 お開き
15:30 お引上げ・退館

 

◆ 新郎新婦記念写真撮影
通常、支度の直後に行われ、「ポーズ写真」とも呼ばれる。一生の記念になる大切な写真であるため、撮影にも気を遣い、10 分程度の時間をかけることが多い。
◆ 親族紹介
新郎新婦と両家の両親・親族が一堂に会して両家の親族を紹介し合うことで、通常は挙式前に行われる。紹介方法は、両家の家長から各親族を紹介するスタイルと、自己紹介スタイルがある。紹介の際は、新郎新婦からみた続柄を述べるとわかりやすい。所要時間は平均10 ~ 15 分である。
◆ 挙式リハーサル
新郎新婦の挙式リハーサルは、当日に全体を通して行う場合と、事前にリハーサル日を設ける場合がある。
入場に携わる新婦の父やフラワーガールなどのリハーサルは、当日に歩き方を練習する程度の簡単なものが多い。所要時間は簡単なものであれば5分程度、挙式全体を通したリハーサルの場合は15 分程度をみておけばよい。
◆ 挙式
挙式の所要時間はスタイルや婚礼会場により多少異なるが、一般的には20 ~ 25 分で、進行上は30 分以上の枠組みをする。町の教会や神社で行われる挙式は、30分以上かかる場合もあるので注意する。
◆ 親族集合写真撮影
親族集合写真とは、新郎新婦を中心に、両家の家族と親族がひな壇に並んで撮影する記念写真である。両家の親族が1枚の写真に納まる機会は少ないため、両家にとって大切な写真となる。20 ~ 30 名ほどの集合写真となることが多く、所要時間は10 ~ 15 分である。
◆ 披露宴
披露宴の時間は通常2時間30 分で設定される。会場によっては披露宴や料理のスタイル、新郎新婦の希望などにより、変則的な設定を行っていることもある。
◆ お引上げ
お引上げとは、新郎新婦が披露宴のお開き後、列席者の見送りや写真撮影などをすべて終えてから、衣裳を日常服に着替え、通常のヘアメイクに戻すことを指す。
持込み品の返却や祝儀の引き渡しなどはこの間に行う。

 

「外式」の場合のスケジュール作り
 「外式」とは、披露宴と同じ日に、披露宴会場とは別の場所で行う挙式を指す。挙式は一般的に披露宴会場と同じ施設で行うが、町の教会や神社で式を挙げることもあり、そうしたケースでは、支度時間の設定と移動時間の計算がポイントとなる。新郎新婦の支度を教会や神社で行う場合は、挙式後の移動時間と披露宴会場到着後のスケジュールを設定すれば問題ないが、中には教会や神社で支度ができない場合もあり、披露宴会場やホテルの客室で支度して挙式に出かけ、挙式後に再度移動が必要になる場合もある。所要時間と移動時間を考慮し、余裕のあるスケジュールを組むことが重要となる。


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第7章 新規接客業務

1. 新規接客業務とは

1)業務の流れ

 新規接客は、一般的には会場を検討しているカップルが見学に訪れた際の接客対応業務を指すことが多い。しかし実のところ、その前の「資料請求」や「来館予約」の対応と接客後の成約手続きも、新規接客に関わる重要な業務である。まずはこの業務の流れを把握したい。

◆ 業務の流れ

2)来館促進

 婚礼会場を検討中のカップルは、まず専門情報誌やインターネットなどでイメージや希望条件を比べ、いくつかの候補に絞り込む。その後、資料請求や会場見学の予約を行い、具体的な会場の検討を開始する。ここで重要なのは、電話やメールで行われる「資料請求」や「来館予約」が、会場見学前に新郎新婦とのコミュニケーションをはかる絶好のチャンスという認識である。この対応次第でカップルの期待をさらに高められるだけでなく、見学当日の接客をよりよいものにすることができる。

◆ 予約時の確認事項
・新郎新婦氏名
・連絡先
・来館予約日時
・婚礼開催希望日
・予定人数
・その他:希望など、できる限り接客に役立つ情報を入手することが大切。

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2. 新規接客

1)接客の流れ

 新規接客は、通常2時間程度の時間をかけて行う。会場案内やプラン、見積り、日時の提案だけでなく、プランナーのアイデアで新郎新婦のイメージが膨らむように、結婚式そのものを提案することが重要である。接客の流れは婚礼施設ごとに多少の違いがあるが、イメージ作りや施設の特徴、会場の活かし方をアピールするなど、その後の成約につなげるための工夫を凝らしていることが多い。ここでは基本的な接客の流れを紹介する。

◆ 新規接客の流れ

2)必要なアイテム

 新規接客では、新郎新婦の情報を入手するため、あるいはその後の予約管理を行うために、いくつかのアイテムを使用する。各アイテムの用途と役割は以下の通りである。

◆ ヒアリングシート
氏名、生年月日、連絡先といった個人情報から、挙式・披露宴の開催時期、人数、婚礼スタイルなど、希望の内容を確認するためのアイテム。このシートは、話のきっかけ作りやその後のプレゼンテーションの糸口を見つけることにも役立つ。
◆ 会場パンフレット/写真/映像
その会場で叶うウエディングのイメージをより具体的に伝えるために使うのが、パンフレット、写真および映像である。婚礼施設によっては、よりイメージが伝わりやすいように、実際に行われた挙式・披露宴の写真や映像を使用していることもある。
◆ 参考見積り(金額提示)
予算は婚礼会場を決定する際の重要な要素となる。この時点での見積りは、参考料金としてプランの金額をそのまま提示する場合と、できる限り具体的な内容を含めた参考見積りを提示する場合がある。
◆ 仮予約書
仮予約日時や会場、仮予約期限などの約束事を記載した書面。仮予約期限を過ぎた場合には、仮予約を解除し、他の希望者に会場を案内することになる。この時点でのトラブルを防ぐために用意する書面である。
◆ フォローシート
フォローシートは婚礼施設により様々だが、各施設とも新規来館の記録を一覧で残していることが多い。記載内容は、氏名、開催希望日時、仮予約状況、来館経路などである。基本的には、個々のウエディングプランナーが接客したカップルのフォローや仮予約の管理を行うが、新規顧客の獲得は婚礼施設にとって重要な業務であるため、ロス防止策としての情報共有や予約状況の管理を部署全体で行っていることもある。

3)第一印象と出迎えの姿勢

 人が物事を決定する時、「第一印象ですでに大半は決まっている」といわれる。それほど第一印象は大切であり、新規接客において新郎新婦の第一印象に多大な影響を与えることになるのが、会場の設営とスタッフの立ち居振る舞いである。特にスタッフの印象は、婚礼会場を決定する大きな要素になり得るので、まずは心からの歓迎を新郎新婦に伝え、「わざわざ足を運んでくださったお二人に喜んでいただきたい」という真摯な気持ちで接客することが大切である。なぜならば、この姿勢が自然な笑顔を作り、もてなしの空間を魅力的に演出し、相手に好印象を与えることにつながるからである。商品である会場の装飾も、この姿勢がなければ、メッセージ性のないただの飾りで終わってしまう。まず心の準備をし、そして、心を込めて会場を設営し、身だしなみを整えて、はじめて本当の意味での出迎えの態勢が整うといえる。

4)新規接客のテクニック

 新規接客において最も重要なのは、新郎新婦との信頼関係を築くことである。そのためには新郎新婦を理解することが必要不可欠となる。しかし、やみくもに相手に質問を投げかけたり、押しつけがましい提案を行ったりしても、おそらく新郎新婦は一向に心を開かず、二人を理解もできなければ、信頼関係を築くことなど毛頭できないという結果に終わるであろう。

 相手を理解し、信頼関係を構築するためには、いくつかの手法がある。これは営業のテクニックとされ、新規接客の場面だけでなく、様々な営業シーンで利用されている。ちょっとした営業テクニックを学び、実践することで、顧客の気持ちを理解し、信頼関係を築ける可能性が高まるのである。ただし、テクニックに磨きをかけることが目的ではなく、あくまでも顧客との信頼関係を築くための方法ということを認識しておきたい。

1 アイスブレイキング
 アイスブレイキングとは、初対面の新郎新婦とウエディングプランナーの間にある緊張感を和ませる手法である。アイスブレイキングは「氷の塊を溶かす」「打ち解ける」という意味であり、「相手の心を開かせる」ための時間を指す。相手に心を開いてもらうには、質問の仕方と聴く姿勢が重要である。この2つを丁寧に行うことで、徐々に話が弾むようになり、新郎新婦は自分たちの求めるもの(ニーズ)が何かを伝えてくれるようになる。

◆ 効果的な質問の仕方
「はい」、「いいえ」で簡単に答えられる質問から始める。この質問をいくつか繰り返し、質問の中から会話の糸口を見つける。糸口を見つけるとは、「このことに興味や関心があるのではないか」と思うポイントを探すことである。そして、このポイントについての意見や考えを引き出す質問を行い、丁寧に話を膨らませていくことで、相手のニーズを確認するのである。
◆ 傾聴の姿勢
相手が意見や考えを述べている時に大切なのが、傾聴の姿勢である。以下のポイントを心がけるとよい。
・相手の話を肯定的に聴くこと
・相手の目を見て、あいづちを打つこと
・相手の話をさえぎらないこと
・あいまいな事項は質問し、確認すること
・大事な言葉(キーワード)を繰り返すこと

傾聴:相手の気持ちに寄り添って、注意深く熱心に聴くこと。

2 プレゼンテーション
 プレゼンテーションとは、計画や企画を提示し説明することである。しかし、単に婚礼会場やプランを説明するだけでなく、新郎新婦が描いている結婚式のイメージを最大限に膨らませ、より具体的に想像ができるようにすることが大切である。そのため、プレゼンテーションでは相手の視線で説明することが重要となり、相手が興味を持っていること、知りたいと感じていること(ニーズ)を的確につかんで行わなければ、どんなに素晴らしい施設や提案であっても相手を惹きつけることはできず、プレゼンテーションの効果も見込めなくなってしまう。たとえ婚礼会場側にセールスポイントとなる施設やプランがあっても、その顧客のニーズに合ったものでない限り、丁寧に説明すればするほど単なる押しつけと思われてしまうのである。

3 クロージング
 クロージングとは、新規接客における成約のきっかけ作りである。最も大切なのはクロージングのタイミングで、今まで検討中だった二人が、決定を前提にした内容の話をし始めた時や具体的な成約方法を確認し始めた時を見逃してはならない。また、もう1つ重要なのが、クロージングの促し方である。無理に迫れば、せっかく高まった意欲を低下させてしまうことになりかねないが、逆に促し方が弱いと、結論まで至らない可能性がある。

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3. 成約手続き業務

1)業務内容

婚礼会場を検討している二人は、いくつかの会場を見学し、条件の比較や両親への相談を経て会場を決定する。見学後の仮予約から決定、正式な申込みに至るまでのフォローおよび手続きも、ウエディングプランナーの重要な業務である。トラブルを避けるためにも、手順と内容をしっかり把握しておきたい。

1 仮予約制度
仮予約制度とは、気に入った会場で仮の予約を入れ、一定期間押さえておくことができる制度である。婚礼会場を検討している二人は、見積りや開催が可能な日時、スタッフの対応、そこで叶う婚礼のイメージなどを精査し、最終的な決断を下す。会場を見学したその日に成約となり申込み手続きを行うカップルもいるが、大半は結論を出さずに持ち帰り、いくつかの会場を比較検討して絞り込んだ後、成約に至る。その比較検討の際に利用されるのが、仮予約制度である。仮予約は成約(正式な予約)と違って申込金(予約金)や解約金などが不要のため、新郎新婦にとっては好都合な制度である。

◆ 仮予約制度の期限
一般的には1週間程度。
※希望が集中する日や人気の披露宴会場では、この制度を利用できないことや、仮予約期間が短いこともある。
◆ 仮予約制度の注意点
「仮予約が入っている」ということは、一定期間、同じ日の同じ時間を希望する別のカップルがいても、すぐには案内ができないことを意味する。希望の多い日取りや人気会場で仮予約制度を適用しない理由はここにあり、その目的はロスを防ぐことにほかならない。

2 成約・申込み手続き
仮予約から成約へ、もしくは会場見学を行ったその場で成約となった場合は、申込み手続きを行う。申込み手続きに必要な書類は、施設ごとに決まったフォーマットを用意している。手続き内容は、「申込書」の記入と「規約の同意署名」、そして「申込金」の入金である。

◆ 申込書
申込書には、申込み日、申込み会場、新郎新婦氏名、両家両親氏名、勤務先、会社連絡先、緊急連絡先などの個人情報を記入する。申込書は一般の商取引で扱う「契約書」と同じ意味を持つ書類となり、通常、署名のないものは効力が発生しない。
◆ 規約
規約の内容には、「申込金規定」や「キャンセル規定」、「持込み規定」、「損害賠償規定」、「禁止事項規定」など、万一、問題が起きた時の約束事が記されている。記載内容に同意し、署名をしてはじめて効力の発生する書類となる。
◆ 申込金
申込金とは、成約時に納める金銭のことである。金額は5~ 20 万円であることが多い。申込金は、問題なく婚礼を迎える場合には「内金(預かり金)」として扱われ、請求金額から差し引かれる。しかし、万一キャンセルとなった場合には「解約保証金」として扱われ、返金されないのが一般的である。これは、成約した瞬間から同日時・同会場を希望する他の申し出をすべて断ることになるためである。

2)成約時の注意事項

 婚礼会場の申込み手続きを行うことは、新郎新婦と契約を交わすことであり、重要な書類を扱う場面となる。ここでのミスやトラブルは、ウエディングプランナーへの信頼喪失にとどまらず、婚礼施設全体の信用を損ねる可能性もある。成約業務に携わる際には、その重大さを十分に認識し、トラブルを引き起こさぬように、成約時の説明および確認を怠らないことが大切である。

1 申込金の説明
 申込金のトラブルは、解約の申し出があった場合にしばしば見受けられる。特に打合せが始まる前の時期に起こることが多い。通常、婚礼会場の申込みは半年~1年前に行われることから、早い時期の解約ならキャンセル料がかからないと思い込んでいる顧客も多いようだ。しかし一般に、申込金の返金は行わない規定を設けている会場がほとんどである。申込金を預かる際には、その点もしっかりと説明することが大切である。

2 ダブルブッキング
 ダブルブッキングとは、予約を重複して受けてしまったことをいう。日時やどの宴会場にするかは、婚礼会場の決定に大きな影響を与える要素であることから、単純に代替日や代替会場を提示することでは問題は解決せず、大きなトラブルへ発展する可能性が高い。

通常、各婚礼施設では「予約台帳」という、婚礼の予約状況を管理するシステムを備えている。これは仮予約および成約の状況をスタッフ間で共有するシステムで、データの入力は同時に書き込みができない仕組みになっていたりと、ダブルブッキングが防げるようになっている。

従って実際に起きるトラブルの原因は、担当者による日時の勘違い、入力間違いや入力忘れといった単純なミスが多いようだ。婚礼業務の中で「日時」の扱いがどれほど重要であるかを認識し、こうしたトラブルは決して起こしてはならないということ肝に銘じておかなくてはならない。

コンセプトウエディングの提案
 新郎新婦が婚礼を検討するとき、かつては当たり前のように「どこで結婚式をするのか」という観点から検討されていたが、近年はプロデュース会社やフリープランナーを中心に「どこで」からではなく、「何をしたいか」という観点から婚礼を検討するスタイルが提案されるようになってきた。結婚するふたりの思いやイメージを一つ一つひも解きながらふたりだけのオリジナルウエディングを提案する、これが「コンセプトウエディング」と言われるものである。

このコンセプトの提案から始めるスタイルを取る企業は年々増えており、新規接客の段階から「この人に」「このチーム(企業)に」コンセプト創りから依頼し、当日のプロデュースまで任せようと決める成約スタイルも出てきている。

 そして、会場を運営する企業にとってもこのスタイルのウエディングは大きな影響をもたらし、個々の会場内で婚礼を行う前提はあるが、新規接客の段階からその中でいかに魅力的な提案により期待を膨らませることができるかがカギとなっている。これまで行われてきた会場の持つ力(新しさや珍しさ)だけに頼る接客スタイルでは、新規顧客の成約へと結びつけることは益々難しい時代となり、「コンセプトを立て、提案する」というスキルが求められるようになってきた。


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第8章 婚礼打合せ業務

1. 婚礼打合せ業務とは

1)業務の流れ

 婚礼の打合せは、一般に婚礼の3ヶ月前から開始する。最初に取りかかるのは、招待状の作成である。招待状は2ヶ月前に発送する必要があり、作成に約1ヶ月を要することから、3ヶ月前に初回打合せを設定するのである。打合せの回数や内容は施設ごとに多少の違いはあるものの、通常3~4回であることが多い。ここでは一般的な流れを紹介する。

◆ 業務の流れ

2)打合せに入る前に

 ウエディングプランナーは、同時期に複数の婚礼を担当していることが多い。そのため顧客ごとにファイルを作成し、情報が混乱しないように管理する必要がある。顧客ファイルは基本的に担当者が責任を持って管理するが、他のスタッフも閲覧できるようにしておく。

これは担当者の不在時に問合せなどが入っても、他のスタッフがファイルを確認できれば迅速に対応できるからである。顧客ファイルにはさらに打合せシート(オーダーシート)も入れておく。このシートは、婚礼に携わる各部署のスタッフが情報を共有するために使う。婚礼を成功させるためには、これらを用いて打合せした情報の管理と共有を徹底することが大切である。

1 顧客ファイル
 顧客ファイルとは、担当する婚礼の打合せ内容や手配内容などの情報を顧客ごとに管理するファイルである。ファイルの作成方法は婚礼会場により様々だが、一般的には一目で「挙式日・両家名」がわかるように明記し、打合せ内容の記録や手配書の控え、新郎新婦に渡した資料の控えなどをファイリングする。プランナーは常にファイルを整理し、打合せの進行状況を確認する。手配ミスなどを防ぐためにも、ファイルの管理は欠かせない業務となる。

◆ オーダーシート/受書フォーマット
◇オーダーシート/受書フォーマット◇

2 打合せシート
 打合せシートとは、打合せの確定内容が一覧で記載された用紙のことである。「オーダーシート」や「受書」とも呼ばれ、一般的には新郎新婦の氏名、年齢、披露宴の列席者数といった情報のほか、料理コースや引出物などのオーダー内容を一覧で記載する。プランナーにとっては打合せ内容に不足がないかなど状況確認の必需品となり、婚礼の施行・進行管理担当者はこのオーダーシートの内容に従って準備を進めていく。シートの形式は婚礼会場ごとに違いがあるが、婚礼に関わる複数のスタッフが情報を共有するために必要不可欠な書類となる。

コンセプトシート
 近年、自分達の想いを形にするため「コンセプト」を定め、それに則った「テーマ」に沿って、様々なアイテムを決めていくスタイルのウエディングが増えている。この際に使用するのが「コンセプトシート」である。

 もちろんコンセプトやテーマが無くとも結婚式は行えるが、「色」や「テイスト」「共通の趣味」など、ふたりらしいテーマを決めて、衣裳、会場装飾、引出物、音楽、演出など様々なポイントで取り入れることで、二人の思いがよりゲストに伝わり、統一感のある、そしてゲストの印象に残る結婚式にすることができる。

 そのため、会場によっては通常の打合せシートだけでなく、オリジナルのコンセプトシートを設けて、新規来館時、もしくは具体的な打合せから使用し、役立てている。


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2. 招待状

1)招待状とは

 招待状とは、披露宴の主催者から列席者に送る、婚約または結婚の報告と披露宴への招待を記した書状である。婚礼アイテムの中でも形式的な要素が色濃く残っているものの1つであり、この形式を理解するためには、従来の結婚披露宴の意味合いや目的を把握する必要がある。ただし形式は必ず守らなくてはいけないものではなく、新郎新婦や両家両親の意向を確認しながら、婚礼のイメージや披露宴の趣旨に合った招待状を作成することが大切である。

1 招待状の目的
 招待状の目的は、大きく分けて2つある。
・婚約または結婚の報告と披露宴への招待
・日時、場所の案内

2 招待状一式
◆ 招待状本状
婚約または結婚の報告と披露宴の案内をする文面で、日時・場所を記載する。
◆ 返信はがき
出席・欠席を確認するためのはがき。
◆ 付箋(ふせん)
本状の案内の他に、別途必要に応じた案内を記載した用紙。
◆ 封筒
◆ 婚礼会場の地図
婚礼会場の場所(最寄駅・利用可能交通機関)、連絡先が記載された地図。

3 招待状発送までのスケジュール
◆ 3~4ヶ月前
招待状の差出人(結婚式の主催者)を検討、招待客リストの作成(招待客の選出と住所の確認)
◆ 3ヶ月前
招待状原稿の作成
校正・校了・印刷部数の確認および手配
宛名書き
◆ 2ヶ月前
招待状発送
◆ 1ヶ月前
返信はがき返信期日

2)招待状を作成する前に

 招待状を作成する前には、いくつか検討しなければならないことがある。まずは、披露宴の主催者である。主催者は招待状の差出人となるため、主催者が決まらなければ招待状を作成することができない。また、招待状には、挙式の案内やスピーチ依頼など、個別の案内を同封することもある。そのため、挙式や披露宴の大まかなスタイルも事前に検討しておく必要がある。

 招待状はいったん発送したらやり直しがきかないので、新郎新婦の希望だけでなく、両家両親の意向を確認しておくことが大切である。披露宴のスタイルの多様化とともに、招待状のスタイルも様々になってきているが、婚礼の本来の目的や披露宴の意味を認識しながら打合せを進めることを心がけたい。

◆ 列席者の案内時刻
招待状の本状には、列席者全員に共通する案内事項を記載するため、一般的には挙式と披露宴の開始時刻が記されている。しかし、親族には挙式に先立って行われる「親族紹介」も案内しなくてはならない。そのため、列席者ごとに必要に応じて時間を案内する必要がある。
・両家親族:挙式前に「親族紹介」を行う場合は、親族紹介の10 分前に「親族控室」へ案内。
・受付担当者:「受付」の10 分前に案内。

◆ 新郎新婦・列席者の来館時間

新婦 新郎 両家両親 親族 受付担当者 披露宴のみ
8:30 ●支度開始
9:30 ●支度開始 ●支度開始
10:30 親族紹介 ●10:20来館
10:40 受 付 ●10:30来館
11:00 【挙式】
12:00 【披露宴】 ●11:50迄に来館

 

校正とは
 校正とは、印刷物の文字や文章、デザイン、色などに誤りや不具合がないかを確認し、正すことをいう。婚礼業務の中では、招待状、席札、席次表などのペーパーアイテムを作成する際に、この校正作業を行う。印刷物の作成手順は、原稿作成→印刷会社に入稿→校正→再校→校了→印刷→納品が基本で、最初に出される校正刷りを確認する工程を「初校」と呼び、初校で修正を指示した個所が指定通りに直っているかを確認する工程を「再校」と呼ぶ。再校でも直っていなかったり、新たな修正個所が発生したりした場合は、さらに「三校」「四校」を請求する。そして、すべての校正作業が終了することを「校了」という。

 

3)招待状作成

 招待状には、基本ルールがある。婚礼の多様化により招待状のスタイルも変化しているが、このルールを理解したうえで、個々の婚礼の雰囲気に合った招待状を作ることが大切である。

1 本状の作成
 本状とは主文を記したカードのことで、文面は差出人によって違う。差出人は挙式・披露宴の主催者で、両親名義の場合と本人名義の場合がある。本状を作成する際には、まず名義の検討を行う。

◆ 両親名義
両家の家長が主催者となり、家長から列席者に向けて書かれた文面となる。
◆ 本人名義
新郎新婦が主催者となり、新郎新婦から列席者に向けて書かれた文面となる。
◆ 連名名義
両家の家長、もしくは新郎新婦が主催者となり、家長と新郎新婦の連名で列席者に向けて書かれた文面となる。

◆ 本状参考例(両親名義)

Ⓐ時候の挨拶:発送の季節に合わせ記載する。

Ⓑ 発送年月日の記載:具体的な「日」は記載せず、「吉日」と記載する。

Ⓒ 挙式・披露宴の日時と会場:一般的に「挙式」「披露宴」の開始時刻と会場名、住所、連絡先を記載する。

Ⓓ 返信期日の記載:返信期日は結婚式の約1ヶ月前の「大安の日」に設定する。

 

◆ 本状参考例(本人名義)
◆ 本状参考例(連名名義)

◆ 本文の注意事項
・句読点は打たない:「福が途切れることなく、永遠に続くように」といういわれから。
・二男と次男/二女と次女の使い分け:「次男」は二人兄弟の2番目、「二男」は三人兄弟以上の2番目、また「次女」は二人姉妹の2番目、「二女」は三人姉妹以上の2番目を表す。
※ただし、これといった決まりはないので、どちらを使ってもよい。

◆ 時候の挨拶一覧

1月 睦月 新春の候 大寒の候 初春の候 厳冬の候
2月 如月 立春の候 春寒の候 向春の候 梅花の候
3月 弥生 春分の候 早春の候 浅暖の候
4月 卯月 桜花の候 陽春の候 春暖の候
5月 皐月 新緑の候 薫風の候 立夏の候 青葉の候
6月 水無月 初夏の候 向暑の候 入梅の候
7月 文月 盛夏の候 猛暑の候 酷暑の候
8月 葉月 残暑の候 立秋の候 晩夏の候 早涼の候
9月 長月 初秋の候 爽秋の候 秋涼の候
10月 神無月 紅葉の候 仲秋の候 清秋の候
11月 霜月 晩秋の候 立冬の候 向冬の候 深秋の候
12月 師走 寒冷の候 師走の候 初冬の候 歳末の候
2 返信はがき

Ⓐ 宛先の記載:返信はがきは新郎家用と新婦家用の2種類を用意し、それぞれの招待状に同封する。

Ⓑ 敬称の記載:通常「様」と記載する部分を「行」と記載する。

Ⓒ 切手:返信はがきには必ず切手を貼る。
※ 宛先記載・切手の貼付は相手の手を煩わせないための配慮。

3 付箋
 「案内付箋」と「依頼付箋」がある。それぞれ招待状本状にはさみ、同封する。

◆ 案内付箋
・親族紹介案内付箋:親族紹介を行う旨と来館時刻、場所を記載。
・挙式案内付箋:挙式への参列案内と来館時刻、場所を記載。


 
◆ 依頼付箋

・主賓挨拶/乾杯発声依頼付箋:挨拶の依頼を記載。
・友人スピーチ依頼付箋:スピーチの依頼を記載。
・受付係依頼と案内付箋:受付係の依頼と来館時刻を記載。
※依頼付箋は招待状に同封する前に、事前に口頭で依頼しておくことが望ましい。

4 封筒と宛名書き

 宛名書きとは、招待状の封筒に宛先(住所)と宛名を記すことである。宛名書きには「毛筆筆耕(手書き)」と「プリント筆耕(印刷)」の2種類がある。従来はプロによる毛筆筆耕が一般的だったが、最近では毛筆の字体を使用したプリント筆耕を利用するカップルも増えている。差出人の住所・氏名はいずれの場合も印刷が一般的である。宛名の誤字は大変失礼にあたるので、新郎新婦には招待客の正しい氏名表記を念入りに確認してもらうようにする。特に「渡辺」「斉藤」など、同じ読みで複数の漢字がある姓名は要注意である。

◆ 連名の書き方

夫婦や家族で招待する場合は、一通の招待状に宛名を連名で記載する。宛名が3~4名以上になる場合は、「御一同様」といった表記も可能である。

◆ 切手の料金と種類
招待状は、封筒の大きさや重さにより郵送費(切手代)が異なる。事前に一式を郵便局に持参し、料金を確認するのが望ましい。また、切手は招待状の郵送用・返信はがき用とも格調高くおめでたい絵柄の「慶事用切手」を使用することが多い。
◆ 手渡し
通常の招待状は、封筒に切手を貼付し、宛先と宛名を記載して郵送するのが一般的だが、主賓挨拶や乾杯の発声などを依頼する相手には、挨拶を兼ねて手渡しする方が丁寧である。手渡しの場合、切手と宛先の記載は不要となる。
※手渡しの場合も、返信はがきには必ず切手を貼る。

◆ 注意したい人名漢字

読み 漢字 読み 漢字
なべ 辺 邊 邉 たか 高 髙 嵩
しま 島 嶋 嶌 けい 恵 惠
さい 斉 齋 齊 斎 さき 崎 﨑 嵜
くに 国 國 ひろ 広 廣
たて 館 舘 はま 浜 濱 濵
しん 真 眞 とみ 富 冨
◆ 招待状参考文例

【人前式】
【海外挙式】
【会費制】
※他、入籍後や出産後の披露パーティへの招待状等もある。


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3. 婚礼料理

1)婚礼料理とは

 婚礼料理とは、結婚披露宴で供される料理である。フランス料理などの洋食コース、日本料理の会席コース、中国料理やブッフェ料理など多彩なジャンルがあり、いずれも慶事にふさわしい食材を使って、一般的なコース料理よりも豪華な献立で構成される。披露宴の費用の多くを占める重要アイテムでもあり、招待客へのもてなしの核として料理を重視するカップルは非常に多い。婚礼施設の中には有名シェフが考案した特別なメニューをセールスポイントにする所もあるほどで、他社との差別化をはかる要素にもなり得る。

1 和洋婚礼料理の一般的なコース内容
◆ フランス料理

アミューズ/カナッペ
冷製オードブル(冷前菜)
温製オードブル(温前菜)
スープ
魚料理
ソルべ(口直し)
肉料理(メインディッシュ)
デザート
コーヒーor 紅茶

※ 本来の正餐では肉料理の後に「ロースト料理(蒸し焼きの肉料理/本来のメインディッシュ)」が用意されるが、婚礼料理では省略、または肉料理と一緒に盛られることが多い。「ロースト料理」が入る場合、ソルベは肉料理とロースト料理の間に提供される。

アミューズ/カナッペは、食前酒とともに控室で提供することもある。

 

◆ 日本料理(会席料理)

先付(さきづけ):前菜
椀物(わんもの):吸い物
向付(むこうづけ):刺身
鉢肴(はちざかな):焼き物
強肴(しいざかな):煮物
酢肴(すざかな):酢の物
留椀(とめわん)/ご飯/香の物
水菓子:果物
※揚げ物が入る場合は、一般的に煮物の後。

2 その他の料理
◆ 中国料理
中国料理には、洋食や和食のように決まったコースの形はないが、洋食や和食と同じ程度の品数を用意する。婚礼で提供される中国料理には、各テーブルに用意されたターンテーブルに人数分が盛られた大皿料理を供して各自が取り分けるスタイルと、各料理をサービススタッフが一人分ずつ提供するスタイルがある。
◆ ブッフェ料理
ブッフェ料理とは、ブッフェボード(料理台)に大皿料理を用意し、各自が好きなものを取って食べるスタイルである。料理の内容はコースと同様に、冷製料理および温製料理で構成され、フランス料理に和食やイタリアンなどを混ぜて彩り豊かにすることもある。

2)披露宴の飲物

 通常、婚礼用のドリンクは、ワインや他の一般的な飲物をセットにした「セットドリンク」として一律の料金を設定している。その場合、乾杯酒はセットに含まれず、別途料金が発生することが多い。食前酒がセット料金に含まれるか含まれないかは、婚礼会場により違いがある。

◆ 食前酒
胃を活性化させ、食欲増進を目的とする飲物で、キール、ドライシェリー、カンパリ、オリジナルカクテルなど。婚礼では控室で用意する。
◆ 乾杯酒
乾杯用に用意される飲物。シャンパンやスパークリングワインを用意する。
◆ ワイン
前菜から魚料理には白ワイン、肉料理には赤ワインを提供するのが一般的。
◆ その他
ビール、日本酒、焼酎、ウィスキー、ソフトドリンクなど。

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4. スペシャルリストによる婚礼商品

1)司会

 人前式や披露宴の進行を司るスペシャリストが、プロ司会者である。婚礼は進行内容や雰囲気が独特であるため、プロでなければ司会進行役を務めることが難しい。新郎新婦が司会者の検討を行う際には、この点をしっかりと伝える必要がある。

 プロ司会者の決定方法は、婚礼施設が提携しているプロダクションに所属するプロ司会者のプロフィールから、新郎新婦が好みの人物を選択することが多い。プロフィールは男性か女性か、落ち着いた雰囲気か、若々しく元気な雰囲気かといった判断をする材料となっており、担当プランナーも二人のイメージする披露宴や列席者の顔ぶれに合う司会者を薦めることが大切である。

また、プロ司会者は、できればその婚礼施設に慣れた人物が望ましい。当日は何かと予期せぬトラブルがつきもので、スタッフ間の連携が非常に重要となる。そのため、施設によっては専属に近い形で司会者を抱え、ウエディングプランナーが積極的にその司会者を薦めているケースもある。

2)ブライダルヘアメイク

 ブライダルヘアメイクに関する打合せでは、まず新婦が支度する内容を聞き、ヘアメイクアーティストとの打合せやリハーサル日時を調整する。リハーサルは挙式・披露宴の数週間前に設定するのが一般的であるが、別料金であることが多く、リハーサルを行うか迷っている新婦も多い。

しかし当日は限られた時間内でヘアメイクを仕上げなければならず、特にお色直しはわずか30 分弱の間に行われるため、満足のいくヘアメイクをスピーディに仕上げるには、たとえ有料でも事前のリハーサルを薦めることが望ましい。また、事前にリハーサルを行うことで、新婦はヘアメイクアーティストと十分なコミュニケーションをとれるほか、重要視するヘアメイクへの不安が解消できるといったメリットも説明しておきたい。

ヘアメイクリハーサル:ヒアリングのみの打合せではなく、実際に数パターンのヘアメイクを施し、当日のスタイルを決定するためのもの。

1 新婦の支度
◆ 1スタイル
式服1着の支度のみ(お色直し、ヘアチェンジなし)。
◆ 2スタイル
式服の支度とお色直し、ヘアチェンジ1回あり(宴中のお色直しが一般的)。
※その他、挙式と披露宴の間にベールアウトを行うこともある。
◆ 和装支度
白無垢の場合は、色打掛への掛け直しやかつらの有無などによってチェンジ回数が異なるため、人気のパターンで「和装支度プラン」を用意している会場も多い。近年は洋髪+白無垢といった組み合わせの和装も様々に提案されている。

和装支度プラン:白無垢(かつらあり)→色打掛(かつらあり)→白ドレスが一般的。

◆ お引上げ
花嫁用のヘアメイク・衣裳から日常服・日常のヘアメイクに戻す手伝い。別途料金が発生することもある。

2 その他の支度
◆ 新郎の支度
新郎は洋装の場合、基本的に自身で支度する。和装の場合は着付けの依頼をする。近年では洋装の場合も、ヘアセットや写真写りをよくするためのメイクを行うことも増えてきている。
◆ 列席者(女性)の支度
女性列席者の支度で要望が多いのは、両家母親の留袖の着付けである。着付けに付随してヘアセットやメイクを依頼することも多い。
◆ 列席者(男性)の支度
男性列席者の支度の依頼は、両家父親の紋付袴の着付けが大半である。洋装の場合は、新郎同様に自身で支度する。

3)ブライダルフォト

 婚礼写真には、記念写真(スタジオ写真)とスナップ写真の2種類がある。記念写真は六つ切や四つ切などの大判写真を台紙に収めたもので、スナップ写真は後日、婚礼の1日の様子が編集された「婚礼アルバム」として二人の手元に届くことになる。婚礼という「形のない」イベントの中で、「形」として残るのが写真である。後で「あれも撮っておけばよかった」「これも撮っておけばよかった」と悔やんでも撮り直すことは不可能なので、打合せでは新郎新婦に熟考を促すようにする。

六つ切:254 × 203mm  四つ切:305 × 254mm

1 婚礼記念写真
 記念写真には、新郎新婦二人の記念写真と、親族が集合して撮影する集合写真がある。従来は婚礼施設内の写真室で撮影していたことから「スタジオ写真」とも呼ばれるが、最近では婚礼施設内のロビーやガーデンなどを活かし、ロケーション撮影が行われることも増えてきている。重厚感のある台紙に収められる大切な写真となるため、撮影も時間をかけ、慎重に行う。

◆ 新郎新婦記念写真(ポーズ写真)
白ドレス、和装、カラードレスなど衣裳替えを行うたびに撮影することが多く、希望により1着の衣裳につき1~3ポーズ撮影することもある。
・撮影時の注意ポイント
新郎:襟元の乱れ、ブートニアの位置、白手袋の持ち方などを確認する。
新婦:ベールの乱れ、トレーンの広がり、ブーケの位置などを確認する。
◆ 親族集合写真
両家親族が一堂に集まり撮影する写真。1枚に20 ~ 30 名程度の人数を収めるため、ひな壇を使用して撮影する。新郎新婦を前列中心に、新郎の隣から後ろにかけて新郎側が、新婦の隣から後ろにかけて新婦側の親族が順に並ぶ。
・撮影時の注意ポイント
新郎・媒酌人・両家父親:襟元の乱れ、白手袋の持ち方などを確認する。
新婦:ベールの乱れ、ブーケの位置、ドレスの裾の乱れなどを確認する。
媒酌人夫人・両家母親(和装の場合):襟元の乱れ、末広の持ち方などを確認する。
列席者:衣服の乱れ、特に男性はネクタイの位置を確認する。

◆ ひな壇の並び順
※媒酌人夫妻がいる場合は、ひな壇に向かって新郎の左隣に「媒酌人」、新婦の右隣に「媒酌人夫人」が着席する。

2 スナップ写真
 スナップ写真とは、挙式や披露宴の光景を記録する写真である。希望により、新郎新婦の支度時から披露宴お開きまでを撮影したり、会場の特性を生かしたロケーションフォト撮影をすることもある。記念写真のようなカメラ目線のショットだけでなく、自然な姿や列席者との笑顔の写真、思い出の品なども押さえ、さらに撮影した写真を編集し、婚礼記念アルバムとして新郎新婦の手元に届ける。

4)ブライダルビデオ

 ブライダルビデオは、プロのビデオグラファーが撮影する婚礼の記念映像である。プランは「挙式のみ」「披露宴のみ」「挙式・披露宴」で設定されていることが多い。挙式・披露宴の流れはもとより、新郎新婦が中座中の会場や余興で盛り上がる様子、列席者のコメントなどを臨場感満点に残せるのは、映像ならではの魅力である。当日の撮影は5~6時間かけて行われるが、新郎新婦の手元には2時間程度に編集された映像が届くことになる。

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5. 引出物と引菓子

1)引出物・引菓子の種類と選び方

 引出物とは、列席者に贈呈する婚礼の記念品である。引菓子は引出物に添える祝い菓子で、一般に日持ちのする銘菓などが用意される。引出物や引菓子は古くから日本の婚礼に不可欠なアイテムであるため、しきたりや地方ごとの特色も根強く残っている。軽くて持ち帰りやすく、実用的なものを選ぶ地域もあれば、大きくて重く、豪華なイメージのものを贈るのが礼儀とされる地域もある。

さらに招待客全員に同じ品を選ぶこともあれば、主賓や親族、友人など相手に合わせて品物を贈り分けることもある。両親のこだわりが非常に強い場合もあるので、新郎新婦だけでなく両家両親の意向を確認しながら、慎重にアドバイスを行う必要がある。

1 引出物
 従来は「切れるもの」や「割れもの」「壊れもの」など、縁起の悪いことを連想させる品は避けるしきたりがあったが、最近では実用性やデザイン性が重視される傾向にある。扱われる種類も増えており、ブランドの食器やグラス、家庭用品、カタログギフトなどの人気が高い。
家族向け、独身男性向け、独身女性向けといったように、相手に合わせた品物を選ぶことも多くなってきた。いずれにせよ、引出物は婚礼の記念品であるため、主催者が新郎新婦であっても、両家両親の意向を確認することが望ましい。

カタログギフト:商品カタログの中から列席者が好みの物を選び、注文するシステム。

2 引菓子
 引菓子は、日持ちのよい菓子を選ぶのが一般的である。婚礼会場であるホテルの自家製焼き菓子や、提携する有名菓子店などの逸品を用意することも多い。贈る相手を選ばず、いつの時代も人気なのは、バウムクーヘンやクッキー、パウンドケーキ、紅白まんじゅうなどである。引出物に対して引菓子は新郎新婦からの祝い菓子という意味があるため、全員に同じ品物を贈るのが原則である。

2)引出物・引菓子の注意事項

 引出物や引菓子を贈ることは日本で古来より続く慣習であるため、地域性や贈答のマナーに配慮する必要がある。基本的な知識を身につけ、正しくアドバイスできるようにしておきたい。

1 熨斗紙について
 熨斗紙(のしがみ)とは、熨斗(のし)と水引を印刷した紙のことで、引出物や引菓子に掛ける。熨斗紙の掛け方には、「外熨斗」と「内熨斗」がある。引出物に掛ける熨斗紙には「両家から」という意味を込めて両家の姓を記し、引菓子には「新郎新婦から」という意味を込めて新郎新婦のファーストネームを書く。しかし、近年は熨斗紙を掛けないケースも増えている。

◆ 外熨斗
品物を包装紙で包み、その上から熨斗紙を掛けるスタイル。
◆ 内熨斗
品物に直接熨斗紙を掛けて、熨斗紙ごと包装紙で包むスタイル。
◆ 熨斗紙の書き方

※熨斗紙は縦書きで記載し、右側が新郎家、左側が新婦家。

2 引出物・引菓子の価格帯
 一般に引出物(記念品)と引菓子をまとめて「引出物」と呼んでいる。単独の列席者には一人に1セット用意するが、夫婦や家族の場合は、夫妻・家族単位で1セット用意することが多い。また記念品は、贈る相手により価格帯を変えるのが一般的になっている。

◆ 引出物の価格帯
主賓:5000 円程度
親族(夫妻や家族で出席している場合):5000 円程度
親族(単独で出席している場合):3000 ~ 5000 円程度
友人夫妻:4000 ~ 5000 円程度
友人(独身者や、既婚者でも単独で出席している場合):3000 ~ 3500 円程度
◆ 引菓子の価格帯
一律1000 ~ 1500 円程度

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6. 披露宴の進行と演出

1)進行組み立てのポイント

 披露宴の進行は、いくつかのプログラムを、内容やタイミング、料理サービスとのバランスを考えながら組み立てる。列席者が心地よく過ごせるように配慮することも大切である。

1 代表的なプログラム
◆ 迎賓
新郎新婦と両家両親、媒酌人夫妻が宴会場の入口で列席者を出迎えること。
◆ 新郎新婦入場
新郎新婦、媒酌人夫妻の入場シーン。両家両親は迎賓後、先に席に案内する。
◆ 披露式
媒酌人もしくは司会者から、結婚の報告と新郎新婦の紹介を行う。その後、両家各1名の主賓が祝辞を述べる。
◆ ウエディングケーキ入刀
新郎新婦の初めての共同作業ともいわれ、二人が1本のナイフに手を重ね、ウエディングケーキにナイフを入れるセレモニー。以前は高さ2mほどのゴージャスなイミテーションケーキが使われたが、近年は生ケーキの人気が高まり、「幸せのおすそわけ」として料理の後にふるまわれることが増えてきた。
◆ 乾杯
祝宴の始まりを告げるのが乾杯である。身内以外のゲストに祝辞を兼ねた発声をお願いすることが多い。
◆ スピーチ
職場の上司や友人代表による祝辞。食事の開始直後はまだ緊張感が残っているため、親しい友人などの場合は余興と同じタイミングで進行を組むことが望ましい場合もある。
◆ お色直し中座
新郎新婦が衣裳を着替えるために披露宴会場を離れる時間。
◆ テーブルラウンド
新郎新婦が各テーブルに挨拶に行くこと。一般的にはお色直し再入場のタイミングで行われる。テーブルごとに挨拶をする方法と、列席者一人ずつに挨拶をする方法がある。
◆ 余興
祝宴を盛り上げるために披露する歌や踊りなどのパフォーマンス。
◆ 新婦手紙朗読
新婦が自身の両親や家族に宛てて書いた感謝の手紙を読み上げる。列席者が胸を打たれるシーンの1つである。
◆ 花束(記念品)贈呈
新郎新婦から両家両親へ感謝の意を込めて花束や記念品を贈呈する演出。新郎新婦が自身の両親へ手渡すスタイルを「ストレート」、相手の両親に手渡すスタイルを「クロス」という。
◆ 謝辞
両家両親、新郎新婦が列席者に対して述べる感謝の挨拶。一般的には両家を代表して「新郎父親」、新郎新婦を代表して「新郎」が挨拶することが多い。

【一般的な披露宴のスケジュール】

【披露宴】 12:00
 迎賓
12:00 新郎新婦入場
 新郎新婦の紹介
 (媒酌人or司会より)
 主賓挨拶
12:30 ケーキ入刀
乾杯
 料理スタート
 スピーチ
13:00 お色直し中座
13:25 再入場
 テーブルラウンド
 余興
 新婦手紙朗読
 花束贈呈
 謝辞
14:30 お開き
 送賓

 

2 主賓挨拶
 主賓挨拶の依頼は通常、両家から各1名を選出する。新郎新婦もしくは両家両親がお世話になっている方に依頼するのが一般的で、新郎新婦の会社の上司など、比較的社会的地位が高い人を選ぶことが多い。最近は会社関係者を招かずに、親族や親しい友人だけで催す披露宴も増えていることから、主賓挨拶を省くケースもある。

3 料理と進行のタイミング
 進行を組み立てる中でプランナーが最も配慮すべきことは、料理のサービスと進行のタイミングを合わせることである。次から次へとせわしなく演出が続いては、列席者がゆっくり食事を楽しむことができないので、くつろいで料理を味わうための時間を設けるようにする。また、料理は予算の多くを占め、列席者も楽しみにしているものの1つであるが、プランナーが料飲サービスの時間を計算せずに演出を組み立てることばかりに夢中になってしまうと、台無しにしてしまう可能性がある。温かいものは温かいうちに、冷たいものは冷たいうちにとシェフがベストな状態で作っても、進行や演出が邪魔をしてタイミングよく出せなければ、結果的に列席者を満足させることができなくなる。ベストなタイミングで料理を提供できるように、1品をサービスするのにかかる時間や下げるのに適した時間などサービスの基本事項を考慮しながら進行を組むことが大切である。

2)演出

 「 演出」とは、物事を表現するときに効果的に見せる方法である。披露宴では約2時間半という限られた時間内で、いかに効果的に新郎新婦のもてなしの気持ちを表現するかがポイントとなる。また、演出は新郎新婦の楽しみでもあり、列席者が期待するものの1つでもある。

1 音響(BGM)
 BGM(バック・グラウンド・ミュージック)とは、背景に流す効果音や音楽のことで、演出の一種として大きな役割を果たす。披露宴のBGMには、1つひとつのプログラムをより印象的にする役割と、列席者に心地よい歓談の空間をつくる役割がある。各プログラムでは、そのプラグラムに合った曲が選曲され、タイミングよく音を出すことで、BGMとしての効果が最大限に発揮される。選曲のポイントは、進行内容を邪魔しないことである。また、ヴォーカルが入った曲の場合は歌詞の内容を十分に吟味することが大切であり、歓談の空間に流すBGMの場合は、誰が聴いても心地よい音楽であることがポイントとなるが、BGMを重視する新郎新婦の中には、思い出の曲や自分たちの趣味に合わせた曲を最優先に考えるカップルもいるので注意が必要である。

BGMの種類は、婚礼施設の音響機材のミキサー操作による場合と、生演奏がある。音響機材を利用する際は、音出しのタイミングを効果的に取るためには、あらかじめ音響オペレーターに音源の編集を依頼しておくとよい。生演奏はピアノ、フルート、バイオリン、弦楽四重奏、バンド、和太鼓といった楽器を使用するものと、ゴスペル、アカペラ、ソリストといった、シンガーによるパフォーマンスがあり、新郎新婦の好みや披露宴のスタイルにより選択する。

◆ BGMのアドバイス
迎賓
誰が聴いても心地よく、婚礼をイメージさせる曲を選曲する。
入 場
新郎新婦の登場シーンを彩る大切な1曲である。以前はウエディングマーチが一般的だったが、近年はインパクトの強い曲が選ばれる傾向にある。
スピーチ中
スピーチ中はBGMを流さない。
乾杯・ケーキカット
曲のサビを使用し、タイミングよくボリュームをアップするとより効果的である。
中座の退場シーン
このシーンは、誰のエスコートで中座するかがポイントになる。エスコート役との関係を示すような選曲が効果的である。
お色直し入場シーン
そのまま各テーブルを回るシーンとなることが多いため、新郎新婦の思い出の曲やゲストへのメッセージソングが適する。アカペラやゴスペルなどのシンガーによるライブも効果的である。
新婦手紙朗読
新婦が両親へ感謝を伝えるシーンであるため、ヴォーカルの入らない曲を選曲する。
花束贈呈
新郎新婦から両親への感謝を伝える曲を選曲する。
お開き退場シーン
二人らしく退場できる曲や、「明るく終わりたい」「しっとり終わりたい」など理想の雰囲気を演出する曲を選ぶ。
送 賓
退場シーンの曲のボリュームを落としてそのまま流す場合と、退場後に完全に切り替え、列席者へのメッセージを伝える曲を流す場合がある。時間がかかることが予想されるので2~3曲を選んでおくとよい。

2 照明
 従来の披露宴の照明は、バンケットルームに設置されている単調な照明にピンスポットを用いて光のアクセントをつけ、新郎新婦や主要なポイントをクローズアップするものであった。しかし最近の傾向としては、光そのものを演出ととらえ、披露宴のイベントの1つとして効果的に使うケースが増えている。

◆ 照明の種類
ピンスポット
ダウンライトしたバンケットルームで、ピンポイントの対象に光をあてる演出。
レーザー光線
DMXコントローラーを使用して出す人工の光。レーザービームに包まれての入場シーンのほか、新郎新婦の名前や列席者へのメッセージを壁や天井に映し出すことも可能である。レーザー光線によるライティングショーなども印象的な演出となる。
ムービングライト
DMXコントローラーで操作するもので、上下・左右の向きと色が自由にコントロールでき、音や動きに合わせて光を動かせる。新郎新婦の動きに合わせた演出が可能であり、ライティングショーとしても効果的である。
アートブライド
新郎新婦からのメッセージや図柄が描かれたプレートの背面からプロジェクターで光をあて、壁面にデザインを映し出す。プロジェクターの向きを変えることで床や天井に映し出したり、回転させたりすることも可能で、曲に合わせて回転させる演出が人気である。使用後はそのプレートを小さな額に入れ、新居などに飾ることもできる。
LEDテーブルライト
ゲストテーブルの中央に置く円盤型の照明機器で、光を遠隔で操作する。機器の上に装花を置き、装花を照らすように下からライトをあてることが多い。音に合わせて光の点滅が可能であり、色も変化させることができる。ゲストテーブル装花にガラスのフラワーベースを用いることで輝きが増し、より効果的な照明効果を楽しめる。

3 映像
 演出で映像が上映されるシーンは、新郎新婦がお色直しなどでその場にいない場合が多く、動きのある映像は、新郎新婦の代役としての効果も果たすと考えられる。また、列席者の目を楽しませ、新郎新婦からのメッセージも伝わりやすい。従来は新郎新婦のメモリアル的な映像が中心であったが、近年では列席者を映像で紹介するなど、列席者へのサプライズ商品としても人気がある。

◆ 映像の種類
オープニングムービー
披露宴の幕開けを飾る映像。新郎新婦からのメッセージやプロフィール紹介などが多く、二人の幼少時代から出会いまでのほか、衣裳の前撮りの様子などを映し、ライブのごとく、その映像の後方から二人が登場するというサプライズ入場も可能である。海外挙式後の披露宴では、オープニングムービーで挙式の様子を披露することもある。
プロフィールムービー
新郎新婦の中座中に流すことが多い。幼い頃からのメモリアルをムービーにしたものが一般的。
メッセージ映像
友人知人などによる新郎新婦への祝福のメッセージをムービーにしたもの。芸能人からのメッセージを入れることも可能である。
エンドロール
披露宴のエンディングとして、新郎新婦がお開き退場した後に流すムービー。列席者へ向けてのラストメッセージを伝える効果があり、ドラマや映画のエンディングロールのように列席者全員の名前を流すこともある。数時間前に行われたばかりの挙式の映像を使うこともでき、列席者へのサプライズ演出として人気がある。

4 その他の演出
◆ 入場・退場シーン
花火
新郎新婦がお色直し入場や退場の際に一礼した瞬間、新郎新婦の両サイドに置かれた室内用花火が遠隔操作で点火される。室内用花火は熱くなく、比較的安全な花火である。
バルーンシャワー
大きなバルーンの中に小さなハート型バルーンが数十個入っており、新郎新婦のお色直し入場や退場時に遠隔操作でバルーンをスパークさせ、新郎新婦の頭上にハートのバルーンを降らせる演出。
◆ 乾杯シーン
シャンパントースト
「 トースト」とは、英語の「乾杯」の意。新郎新婦がクロスハンド(右腕と右腕を交差させる)で仲睦まじくシャンパンを飲むシーンを演出しても楽しい。
シャンパンサーベラージュ
サーベル(刀)でシャンパンボトルの口を勢いよくカットする演出。船出の際に船長が航海の無事を願って行ったことから、新しい人生の船出を意味する演出として乾杯前に行う。「シャンパンサーベル」ともいう。
鏡開き
日本酒の入った樽を新郎新婦が小槌で叩いて開ける演出。樽のふたを「鏡」といい、これを開くことから「鏡開き」と呼ばれる。開いた後に樽の中の日本酒を列席者にふるまい、乾杯する。
◆ ケーキ入刀シーン
ケーキカット
ウエディングケーキに新郎新婦が二人でナイフを入れること。もともと欧米ではウエディングケーキは新婦が切り分けて列席者にふるまう習慣があり、それを新郎が手伝う微笑ましい姿がセレモニー化し、披露宴のハイライトシーンの1つになったといわれている。
ファーストバイト
「 ケーキシェアリング」ともいい、ケーキ入刀の後で新郎新婦が互いに一口ずつ食べさせ合う演出。「最初のごちそうを分かち合う」という意味があるといわれている。また、新郎から新婦へ食べさせるのは「一生食べ物に困らせない」、新婦から新郎に食べさせるのは「一生美味しいものをつくる」という意味もあるといわれている。
リボンプルズ
ウエディングケーキの中にリボンをつなげたシルバーのチャーム(お守り)を隠し、ゲストがリボンを引いて将来を占うというおみくじのような演出。チャームにはそれぞれ意味があり、すべて幸せを招くデザインなので、新郎新婦からのプレゼントとして持ち帰ってもらう。「ラッキーチャーム」「ケーキチャーム」ともいう。

入刀:日本では「切る」は忌み言葉であるため、入刀と表現する。

◆ テーブルラウンドシーン
ケーキサーブ
入刀後に切り分けられたウエディングケーキを、新郎新婦が各テーブルを回りながら一人ひとりにサービスする演出。
キャンドルサービス
新郎新婦がお色直し入場の際、火のついたトーチを二人で持ち、各ゲストテーブルの中央に設置されたキャンドルに点火するセレモニー。最後にメインテーブルの横にあるメインキャンドルに点火する。メインキャンドルには、結婚記念日ごとに灯せるように年数の目盛りがついたメモリアルキャンドルを使用することが多い。
光の演出
2種類の液を混ぜ合わせることで化学反応を起こし、発光する液体を利用した演出。1つの液はゲストテーブル中央のクリスタルの器に入れておき、新郎新婦が各テーブルを回りながらもう一方の液を注いで発光させる。
ビールサーブ
新郎がビールタンクを背負い、各テーブルを回りながら列席者にビールをサービスする演出。ワインをサービスする「ワインサーブ」もある。
◆ 余興
スイートサプライズ
デザートの中にドラジェなどを隠しておき、そのドラジェ入りケーキが当たったゲストには、プレゼントを贈るというゲーム。ドラジェではなくキャンディや金平糖を使うこともある。子供が食べる場合は、喉を詰まらせる危険のないものにする。また、この演出は「ラッキービーンズ」とも呼ばれている。
◆ 両親への感謝
花束贈呈
新郎新婦が「よろしくお願いします」の意味を込めて結婚相手の母親に花束を贈り、父親にブートニアを贈る「クロス」と、感謝の意味を込めて自身の両親に贈る「ストレート」の2パターンがある。花を贈るのが一般的であるが、記念品や新郎新婦の誕生時の体重と同じ重さの熊のぬいぐるみ「ウエイトベア」や、生まれた時と同じ重さの米「体重米」などを贈ることもある。
◆ その他
ケーキデコレーション
何の装飾もない真っ白なケーキだけをケーキ台の上に用意しておき、新郎新婦の入場前または中座中に、列席者にデコレーションをしてもらうという演出。チョコレートクリームなどで二人へのメッセージを書いてもらったり、フルーツなどをトッピングをしてもらう。
キャンドルリレー
ゲストがキャンドルの火をつないでいき、最後に新郎新婦がその火を受け取ってメインキャンドルへ点火するセレモニー。
シャンパンタワー
ピラミッド状に積み上げたシャンパングラスに、新郎新婦がシャンパンを注ぐ演出。一番上のグラスに注ぐと、下に流れ落ちるのと同時に他のグラスもシャンパンで満たされ、その注がれたシャンパンを列席者にふるまう。シャンパンの代わりに化学反応で発光する液体を使い、光の演出としても効果的である。
シャボン玉
演出を行う際に、その演出をより効果的に見せるものとしてシャボン玉を使用する。たとえば、ケーキカットの瞬間にシャボン玉を放つことで、より華やかなシーンを表現できる。同様に、ドライアイスやスモークも補助的演出として効果的である。

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7. テーブルレイアウトとペーパーアイテム

1)テーブルレイアウトの基礎知識

 テーブルレイアウトにはいくつかの種類があり、披露宴のスタイルに合わせてアレンジすることができる。宴会場で使用されるテーブルは規格サイズであることが多く、数種類のテーブルを組み合わせることで、様々なレイアウトが可能になる。ウエディングプランナーは、宴会場の特徴や披露宴のスタイルに合ったアレンジを提案することが大切である。

◆ 円テーブル(ちらし)のレイアウト
◆ 角テーブル(流し)のレイアウト
◆ オーバルテーブルのレイアウト
◆ 立食スタイルのレイアウト
◆ 着席ブッフェスタイルのレイアウト

ちらし:円テーブルを会場全体にちらす配置のこと。立食スタイルのレイアウトにも使用する。

 

2)ペーパーアイテムの種類と役割

 ペーパーアイテムには招待状のほか、席次表、席札、メニューカード、もぎり札(エスコートカード)などがある。席次表や席札、もぎり札(エスコートカード)は列席者が確定する頃に作成を始め、メニューはコース内容が確定した時点で手配する。これらの中で席次表は、招待状と同様に、形式的な要素が色濃く残っているアイテムであるため、基本的なルールをしっかりと学んでおきたい。

1 席次表とは
 席次表は、列席者全員の席と氏名、肩書を記載したものである。肩書には新郎新婦との関係が記されており、一読するだけで披露宴の顔ぶれがわかるという利点がある。列席者全員が目にするものであるため、テーブルの配置や席順、肩書のつけ方には十分に配慮する必要がある。

2 席札・もぎり札(エスコートカード)・メニューカード

◆ 席札
列席者一人ひとりの席を示すアイテム。1名ずつ氏名を記し、各席の卓上につける。
◆ もぎり札(エスコートカード)
列席者の氏名と記号が記されたアイテム。受付で配られ、卓上の記号札と照らし合わせて席を探すためのもの。広い宴会場で重宝する。
◆ メニューカード
婚礼料理のコース内容を記したアイテム。各席の卓上につける。

卓上の記号札(卓記号):卓の位置を表すもので卓札、卓上プレートとも呼ばれている。

3 作成スケジュール
 席次表、席札、もぎり札(エスコートカード)、メニューカードは通常、同じ時期に手配を行う。招待状と同様に校正を繰り返し作成するが、席札ともぎり札(エスコートカード)は校正刷りを出さず、席次表の校了刷りを基にして作ることが多い。席次表の原稿作りは配席が完了しなければ取りかかれないため、披露宴の1ヶ月前、すなわち招待状の返信はがきが新郎新婦のもとに戻る頃に作成を開始する。

◆ 1~2ヶ月前
列席者配席の検討
席次表・席札・もぎり札(エスコートカード)の原稿作成
◆ 1ヶ月前
校正
◆ 10 日前~2週間前
校了
◆ 3日前

3)席次表作成

 席次表も招待状と同様に校正を繰り返し作成されるが、最も重要なのは原稿の作成である。テーブルの位置や席順には上席、末席といった考え方があり、配席を慎重に検討したうえで原稿を作らねばならない。新郎新婦には基本ルールに基づいた的確なアドバイスを行うことが大切である。

1 メインテーブルと各テーブルの位置関係

◆ メインテーブルの座り位置
メインテーブルは新郎新婦、もしくは新郎新婦と媒酌人夫妻が座る席。「高砂」とも呼ばれる。向かって左側が新郎、右側が新婦となる。
◆ メインテーブルと各テーブルの位置関係
会場全体の席は、メインテーブルを中心に配していくのが基本である。メインテーブルに向かって左側が新郎側、右側が新婦側である。テーブルは最前列の中心から上席テーブルとなり、最後列の両端が末席テーブルとなる。新郎側と新婦側は左右対称にする。
2 テーブル内の席順
 各テーブルの中でも上席と末席が決まっている。メインテーブルに近い位置から上席となる。新郎側・新婦側が左右対称となる。
◆ 主賓席と両親席
メインテーブルの一番近くが主賓席、一番遠い席(末席)が両親の席となる。主賓や両親席も新郎側・新婦側が左右対称となるため、両親の席は会場の内側に近い席が父親、外側が母親の席となる。

 

4)席次表の肩書と敬称

 席次表を作成する際に、配席と同じく大切なのが肩書である。席次表の肩書は、新郎新婦との関係を記載することが基本となる。主賓など社会的地位が高い人の場合は、役職を記すこともある。「来賓には敬称をつけるが、家族にはつけない」といったルールも覚えておきたい。

1 肩 書

◆ メインテーブルの記載の仕方
席次表に記載する新郎新婦の肩書はそれぞれ「新郎」「新婦」となり、ファーストネームのみ記載する。

 

◆ 親族、家族の肩書

続柄 表記
両親 父・母
兄弟姉妹 兄・弟・姉・妹
義理の兄弟姉妹 義兄・義弟・義姉・義妹
兄弟姉妹の子供 甥(男性)・姪(女性)
両親の親 祖父・祖母
両親の親の親 曽祖父・曽祖母
両親の兄弟姉妹 伯父・叔父(男性)
伯母・叔母(女性
いとこ 従兄・従弟・従兄弟(男性)
従姉・従妹・従姉妹(女性)
他親族 親戚
◆ 主賓、職場関係、友人などの肩書

続柄 表記
主賓 本人 社名と会社の肩書
〇〇様令夫人
息子 〇〇様御子息
〇〇様御令嬢
学生時代の先生 恩師
職場 上司 職場上司
先輩 職場先輩
同僚・後輩 職場同僚
新郎新婦の友達 友人
新郎(新婦)父の友達 父友人

2 敬称
◆ 敬称一覧

続柄 表記
一般
恩師 先生
子供 男の子 くん
女の子 ちゃん
親族 家族以外
家族 敬称なし
嫁にいった実姉・実妹
嫁にきた義姉・義妹 敬称なし


CONTENTS

8. 装飾

1)花を使った装飾

 ブライダルの装飾には、非日常的な空間を演出し、ゲストに新郎新婦の婚礼のイメージを明確に伝えるという役割がある。装飾には様々な方法があるが、もてなしの象徴といわれる「花」は装飾の主役であり、ブライダル業界ではそれを「装花」と呼んでいる。

 婚礼の花の装飾個所は、主に挙式を行うスペースと披露宴を行うバンケットルームであるが、それ以外にもエントランス、受付、ガーデンなど多彩な空間を装飾することができる。挙式スペースには一般的に「白」を基調とした花材が選ばれるが、その他の場所は新郎新婦の希望により、多種多様な色や花材が使われている。ウエディングプランナーは、新郎新婦が心に描く婚礼のイメージやゲストへのメッセージを伝えるアイテムとして、効果的な装花の使い方を提案しなくてはならない。

1 バンケットルーム

◆ メインテーブル(高砂)装花
新郎新婦と媒酌人夫妻が座るメインテーブルには、豪華な装飾がなされる。一般的には山型に活け込むスタイルのものが多く、その活け込みが座る人数やテーブルの幅により1つであったり2つであったりと、様々にアレンジされる。デザインは新郎新婦の希望しだいであらゆる対応が可能であるが、基本的に新郎新婦の顔が隠れない高さにすることが大切である。
◆ ゲストテーブル(卓上)装花
列席者のテーブルを彩る「ゲストテーブル装花」は「卓上装花」ともいい、また、テーブルの中央に置かれることから「センターピース」と呼ばれることもある。また、ゲストテーブル装花は披露宴終了後、一般ゲストへプレゼントすることも多いため、持ち帰りやすいように最初から人数分の花束をまとめたデザインにするなど、様々な工夫が施されている。
◆ 宴会場内のその他の装花
ケーキナイフ
ウエディングケーキをカットするナイフを、ミニブーケで装飾する。
マイク
スピーチなどに使うマイクやマイクスタンドをミニブーケで装飾する。
グラス
乾杯用グラスに花を装飾する。
ナプキン
テーブルナプキンにさりげなく1輪の花を飾る。
席札
席札に1輪の花を飾る。
椅子カバー
椅子に被せたカバーの後ろ中央をミニブーケとリボンで装飾する。
メインバック
新郎新婦席の後方にアイアンスタンドやラティス、アーチなどが置かれている場合、それらを花で装飾する。もしくは、大型の生け込みを設置する。
テラス
バンケットルーム内にテラスがある場合、空間装飾の一部としてテラスの手すり部分などを花で装飾する。
階段
バンケットルーム内に階段がある場合、階段からの入退場シーンを華やかに演出するため、階段の手すりなどを花で装飾する。

2 その他
◆ エントランス
エントランスとは、列席者を迎える入口である。ゲートがある場合は門の中央部分にボールブーケなどをあしらい、オーガンジーやチュールなどの布地を組み合わせて装飾する。ドアの場合は上部中央にリース、ドアノブにミニブーケを飾るなど、列席者の目を楽しませる工夫をする。
◆ ウエルカムボード
ウエルカムボードは、新郎新婦に代わりエントランスや受付で列席者に歓迎の意を表すメッセージボードである。既製品のほか、新郎新婦や友人の手作りであることも多く、形や素材も様々であるが、新郎新婦からのメッセージをより強調するために花で装飾する。
◆ 受 付
受付に飾る花は、新郎新婦からのもてなしの現れである。受付テーブルが両家で1卓の場合はテーブルの中央に小さなフラワーアレンジメントを置き、両家でそれぞれ受付テーブルを用意する場合は各テーブルに1つずつフラワーアレンジメントを置く。受付装花は披露宴終了後、受付担当者へプレゼントすることが多い。
◆ 控 室
新郎新婦の控室、親族の控室、ゲストのウエイティングルームも華やかに花を飾ると、特別感に満ちた1日という印象になる。新郎新婦の控室は新婦のヘアメイクや着付けを行う部屋であるため、新婦の好きな花のアレンジメントや花びらなどで装飾するとよい。ゲストを迎える新郎新婦の心遣いやもてなしの気持ちを表す控室の花は、シンプルな1輪差しから活け込みまで幅広い提案が可能である。
◆ ガーデン
ガーデン付きの会場では、屋外ならではの演出や列席者との写真撮影・歓談などを楽しむことも多い。そうした場面を華やかに盛り上げるには、ガーデンチェアやテーブル、噴水、アーチなどを花で飾ると効果的である。

挙式スペースの装花
キリスト教式や人前式のセレモニーでは、バージンロードの両サイドや祭壇に花を飾ることが多い。一般的には「白」を基調とした花材で装飾するが、人前式の場合は形式にこだわらず、新郎新婦の好みの花材を使用した方が二人らしさを演出しやすい。バージンロードの花は、小さなブーケやアレンジメントを椅子やポールにセットする。

2)花以外の装飾アイテム

 ブライダルでは花を主体とした装飾が一般的であるが、花では装飾しきれない大きな空間や新郎新婦のオリジナリティを表現するために、あえて花以外のアイテムを使うこともある。

1 ドレープ装飾
 バンケットルーム内で施される布地(ドレープ)を用いた装飾。一般的には新郎新婦が座るメインテーブルの後方で天井に設置されたバトンからドレープを垂らすイメージであるが、その他にもテラスや階段、エントランス、アーチなどを装飾する場合がある。花だけではボリューム感に欠ける広いスペースには、ドレープを使用しての装飾が非常に効果的である。

2 氷の彫刻
 ホテルでよく見られる装飾アイテムで、「キッチンアートシェフ」の手によって制作される。ただの氷ではなく食材や生花などを一緒に凍らせた氷を白鳥やウエディングケーキに彫り上げたタイプや、光の効果を加えてより華やかに演出するタイプも人気がある。

3 バルーン(風船)装飾
 カジュアルなイメージを演出する装飾アイテムとして、バルーン(風船)がある。もともとはアメリカで人気のパーティ装飾であるが、日本の婚礼でも多く見られるようになった。バルーンは装花と異なり、ヘリウムガスで浮かせることによって、空中を華やかに装飾することができる。カラーも100 色以上用意されているので、可愛らしいイメージからスタイリッシュなイメージ、エレガントなイメージまで演出は自由自在である。また、バルーンは装飾だけでなく、バルーンスパークやバルーンドロップなど披露宴の演出としても使用可能である。

4 キャンドル
 夕方から夜にかけての婚礼「ナイトウエディング」では、キャンドルを用いた装飾が効果的である。バンケットルーム内の装飾にはもちろんのこと、建物の外回りやガーデンに無数のキャンドルを置くことで、幻想的な空間を演出できる。

オープンギフト
送賓用のプチギフトは、一般的には披露宴のお開き時に新郎新婦からゲストに手渡すものであるが、そのプチギフトを受付やエントランスにウエディングケーキの形などにして置いておき、メッセージを添えて飾るスタイルを「オープンギフト」という。本来はプチギフトも引出物の1つであるが、そのギフトを「公開した状態で置いておく」ことから、「オープンギフト」と呼ばれている。ワイン席札などもその一例である。


CONTENTS

9. 重要な書類

1)見積書

 見積書とは、婚礼にかかる費用を記した書面である。料理、飲物、衣裳、引出物などのアイテムごとに単価と数量を入れ、総額を記載するが、見積書は新郎新婦が実際に支払う費用を示す重要な書類であるため、万一、内容や金額に間違いがあると信用を失いかねない。見積書を作成する際は細心の注意を払わなくてはならない。

1 作成のタイミング
◆ 新規接客時の参考見積り
新規接客時の見積りの多くは、一般的なアイテムを大まかに入れた参考の見積りであるが、新郎新婦にとっては、この参考見積りが婚礼会場決定の重要な決め手になる。しかし、この段階の総額はあくまで概算で、当日までの打合せ内容により金額が変わっていくことを、新郎新婦に十分理解してもらうことが大切である。
◆ 打合せ中の見積り
このタイミングの見積りは、具体的な打合せ内容を反映した見積りである。婚礼アイテムはグレードによって価格が異なり、予算を考慮しながら検討していかなくてはならないため、この段階で出す中間見積りは、挙式・披露宴の「内容」を決定する重要な見積りとなる。大切なのは、様々なパターンの見積書を作成し、新郎新婦に比較検討してもらうことである。
中には「最初に予算を提示しているので、提案はすべて予算内のはず」と思い込んでいる新郎新婦もいて、最終見積りを提示した際に大きなトラブルになることもある。そのような結果を避けるためにも、検討段階で予算と商品価値のバランスを新郎新婦自身が把握できるように導くことが、ウエディングプランナーの役割となる。
◆ 最終見積り
内容がほぼ確定した時点で発行するのが、最終見積書である。請求書の作成を前提とした見積りとなるため、再度内容をしっかりと確認する必要がある。基本的に請求書を発行した後は内容の変更が不可となるので、プランナー・新郎新婦ともに注意が必要である。

2 サービス料
 サービス料とは、目に見えない「サービス」という商品に対する報酬である。もともと日本にはチップを払う習慣がなかったため、サービスの対価を請求するのに苦慮したホテルやレストランが、チップの代わりにあらかじめ料金に上乗せして請求するシステムを導入したことが発祥のきっかけといわれている。サービス料の項目や価格に明確な基準は定められていないが、婚礼では一般に主体商品である料理・飲物・宴席料(会場使用料)・控室料などに10%をかけた金額を追加して請求する。婚礼会場によりサービス料のかかる項目に若干の違いがあるが、10%という価格基準はほぼ共通している。

主体商品:一般的に会場が直接提供する商品のことである。一方、パートナー企業が提供する商品を付帯商品という。

2)請求書

 請求書は、婚礼費用の支払い金額を記載した文書である。婚礼費用の支払いは全額前払いであることが多いため、婚礼の1~2週間前に発行するのが一般的である。請求書は経理部などが発行することが多いが、施設によってはウエディングプランナーが発行することもある。いずれにせよ、打合せ業務を担当するウエディングプランナーが、最終内容を慎重に確認することが大切である。請求書は婚礼施設が正式な文書として発行する重要な書類であるため、間違いは許されない。簡単に再発行はできないので、業務にあたるときは細心の注意を払う必要がある。

◆見積書参考例
◇見積書参考例◇

CONTENTS

10. 手配(発注)業務

1)手配(発注)業務とは

 手配業務とは、打合せで確定した内容を手配する業務で、「発注業務」とも呼ばれている。各種手配が的確に行われなければ、婚礼直前に混乱を招き、担当した新郎新婦の夢の1日を成功させることが難しくなる。従って手配業務は、ウエディングプランナーにとって打合せと同様に大切な業務ということができる。

手配業務において最も心に留めておくべきことは、手配先である各種取引先が、婚礼を成功させるための大切な協力者だという考え方である。取引先への丁寧な対応と密な連絡が必要不可欠であることを忘れてはならない。

2)手配(発注)の手順と注意事項

 手配業務は、取引先ごとに決められたフォーマット、もしくは婚礼施設側が用意したフォーマットを使用して行う。メールやファックスが使われることが多く、1枚の手配(発注)書に必要事項を記載し、取引先に送信する。取引先は届いた手配(発注)書に確認済みの印をつけ、返信(リターンファックス)をしてくるが、ウエディングプランナーはこの返信(リターンファックス)を確認してはじめて、1つの手配業務が完了したことになる。

 その後、変更が発生した場合は、以前に送信した手配(発注)書に変更内容を記載し、再度送信する。この「以前に送信した手配(発注)書」を再度使う点がポイントで、以前の手配の記録を残しつつ、変更を指示することができるのである。そして、最新の情報が何であるかを把握するために、その訂正部分に日付を記入しておくことも重要である。

 近年はメールで手配を行う場合も多いが、以前の記録を残しながら最新の情報を伝達するのはファックスでの手配と同様である。手配手段(伝達手段)にかかわらず、以前の情報と最新の情報が一目瞭然である状態が、ミスを防ぐ最善の方法となる。
 また、メール・ファックスのみならず、発注専用のシステムを所有している企業も多数ある。

◆ スタッフの手配
スタッフの手配は慎重に行う必要がある。スタッフとは司会者、ヘアメイクアーティスト、フォトグラファー、ビデオグラファー、演奏者などである。婚礼当日までの期間に余裕をもって発注することで、新郎新婦の希望に沿った手配が可能となるが、一度発注するとスケジュールを押さえることになるため、キャンセル料が発生する可能性もある。
◆ 物品の手配
物品の手配のポイントは、個数の管理である。特に数回にわたって変更を行っている場合は、変更前と変更後の情報が取引先に明確に伝わるように手配しなければならない。
◆ 料飲の手配
料飲関係は、月ごとにまとめて仮手配することが多い。仮手配の内容は、開催日時、料理コース、おおよその人数などである。これは、飲料部が食材を手配する際の効率性を考えてのことである。そして、最終人数が確定した時点で正式な手配を行う。

◆ 発注書参考例

Ⓐ 挙式日
Ⓑ 会場名
Ⓒ 開催時間
Ⓓ 両家名(新郎新婦のフルネームで記載):同日に複数の婚礼を開催する施設では必須。
Ⓔ 手配内容
Ⓕ 数量:個数が関わるものは予約個数と確定個数で2回連絡していることが多いので注意。
Ⓖ 納品日
Ⓗ 納品場所
Ⓘ 特別事項:引出物の包装紙についてや、屋外装飾の雨天の場合の代替案などを記載する。

CONTENTS

11. 最終打合せと確認事項

1)新郎新婦との確認事項

 最終打合せは婚礼準備の最終段階で、通常は挙式の1~2週間前に行うことが多い。各婚礼アイテムの内容や進行などもほぼ確定しているため、司会者が同席することも多く、他にも直前のスケジュールや伝達事項を確認する。これらはすべて、当日をつつがなく進めるための大切な打合せとなる。

1 司会進行最終打合せ
 司会者が同席して披露宴の詳細を確認する打合せで、司会者が中心となり、進行表の読み合わせを行うのが一般的である。挨拶やスピーチ、余興を依頼しているゲストと新郎新婦の関係のほか、新郎新婦のプロフィール紹介の方法、衣裳や手作りアイテムのエピソードなどを確認する。司会者にとって新郎新婦および披露宴の情報は、当日の進行を円滑に進めるために欠かせないものである。そのためウエディングプランナーは、司会者ができる限り多くの情報を入手できるようにサポートする。

2 詳細の確認事項
 最終打合せでは、当日の来館時間や両家両親への連絡事項、祝儀の引取り方法や二次会への持参物などの詳細も確認する。さらに請求書の発行や支払い方法の最終確認も、この打合せで行うことが多い。ここでの確認を怠ると、直前や当日にあわてることになり、トラブルを招くこともあるので要注意である。

2)業務の確認事項

 ウエディングプランナーの仕事は確認に始まり、確認に終わるといっても過言ではない。打合せごとに常に確認するのは当然であるが、ウエディングプランナーにとっての最終確認は、すべての打合せが終了したところがスタート地点となる。手配忘れや数量間違いがないか、当日のスタッフへの引き継ぎ情報に漏れがないかなどを慎重にチェックし、内容が確定した時点で請求書を発行、もしくは経理部へ発行を依頼する。

1 手配(発注)の確認
 3ヶ月間にわたって行った打合せと手配内容の確認を慎重に行う。
◆ スタッフの手配
当日のスタンバイ時間の再確認および伝達漏れがないかを確認する。
※確定したオーダーシートや進行表は基本的に1週間前に渡しておく。
◆ 物品の手配
最終個数の伝達および納品日時を確認する。

2 新郎新婦のフォロー
 新郎新婦は仕事をしながら準備を行っていることも多い。そのため婚礼の直前は、通常の仕事に加え、列席者からの要望や問合せなどの対応で多忙を極めることになり、日が迫るにつれて緊張や不安を高めてしまうことも少なくない。そんな時こそ、ウエディングプランナーは新郎新婦にとって頼りになる存在であるべきである。新郎新婦が安心して当日を迎えられるように、こまめなコミュニケーションを心がけたい。

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12. 打合せに必要なスキル

1)コミュニケーション力

 コミュニケーションとは、人が互いに意思や感情、情報を伝え合うことであり、社会生活の中で必要不可欠なものである。接客業においてもコミュニケーションをとることは基本であり、顧客が求めるもの(ニーズ)を知るために欠かせない手段となる。ニーズに合ったサービスを提供できなければ、顧客の満足を得ることはできず、信頼関係を築くこともできない。婚礼業務においては特に高いコミュニケーション力が求められる。

2)商品販売力

 ウエディングプランナーに課された任務は、第1に新郎新婦との信頼関係を築くことである。そのうえで第2の任務として利益を上げること、つまりブライダルビジネスにおけるプロとしての商品販売力が求められる。信頼関係の構築と販売力のバランスをとることは非常に大切であり、このバランスを欠くとプロの仕事とはいえなくなってしまう。その点をしっかりと踏まえて業務を行うことが重要である。

1 商品価値を熟知して紹介する
 商品販売力の1つに、商品内容と価値を熟知した上で、商品を紹介するということがある。商品には、その内容に見合った価格がつけられている。もちろん高価格であれば高価値、低価格であれば低価値とは限らない、商品価値をしっかりと把握し、新郎新婦が納得できるように伝えることが、プランナーの重要な仕事となる。打合せを進める中で予算と商品選びのバランスをとるのは難しい面もあるが、婚礼は一生の思い出として残るイベントである。後になって悔やんでも選び直しはできないため、たとえ予算がかさむ結果になったとしても、よりよい商品を薦めることは、最終的な新郎新婦の満足感につながることが少なくない。

2 選択肢の提示
 商品販売において気をつけたいことがある。特に、利益率を意識した商品の販売時である。利益率を意識しすぎて特定の商品を押しつけるのは絶対に避けるべきで、打合せを進める際には基本的に、新郎新婦へ他の選択肢も提示することが大切である。なぜなら新郎新婦は複数の選択肢がないと、その商品が他とどのように違うのか、果たして価値はどの程度のものなのかを判断できず、不安や不満を募らせてしまうからである。決定権は常に新郎新婦にあり、決して強要はできない。たとえ強引に売り込んでも新郎新婦は決定に至らないことが多く、決定に至ったとしても後日に撤回される可能性が高くなる。その撤回がキャンセル料のかかる時期になっていれば、大きなトラブルへとつながり、信頼関係を保つことも難しい状況となる。強要による決定から生まれるものは、マイナスばかりであることを認識することが大切である。

利益率:売上額に対する利益額の比率。同じ販売価格でも、利益率の高い商品を選択し、手配することが、より高い収益につながる。

◆ 見積書フォーマット
◇見積書フォーマット◇

◆ 発注書フォーマット
◇発注書フォーマット◇

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第9章 婚礼施行・進行管理業務

1. 婚礼施行・進行管理業務とは

1)業務の流れ

 婚礼施行・進行管理業務は、会場ごとにウエディングプランナーやキャプテンの位置づけ、施設の特徴などが様々であることから、スタッフの業務範囲や手順に違いがある。1日に複数の婚礼を受注する会場では各専門スタッフが分業で業務を行うことが多く、婚礼数を1~2組に限定している会場では少数のスタッフが様々な役割を兼任することが多い。しかし、1 組の婚礼を実施するのに必要な業務および流れに変わりはなく、下記の通りである。

◆ 業務の流れ

2)業務に携わるスタッフ

 婚礼当日には、多くのスタッフが関わる。各専門スタッフが力を合わせることで、はじめて1つの婚礼を成功させることができる。各専門スタッフの仕事の範囲は婚礼会場により多少の違いがあるが、それぞれの役割を把握し、互いに尊重し合い、協力し合うことが大切である。

1 料飲サービススタッフ
 料飲サービススタッフとは、宴会場内で料理と飲物のサービスを行うスタッフである。開宴前には、卓上や会場全体のセットも行う。スタッフの中には「デシャップ担当」といって、キャプテンと調理場スタッフとの連携をとり、進行と料理を出すタイミングを調整する者や、キャプテンアシスタントとして進行のサポートを行うスタッフもいる。いずれも新郎新婦や両家両親が招待した大切なお客様をもてなすという重要な役割を果たす最前線のスタッフである。

デシャップ(Dish Up):一般的に厨房とパントリーの窓口業務で「デシャップ業務」のこと。

2 アテンダント(介添え)
 アテンダントは「介添え」とも呼ばれ、新郎新婦の出迎え、もしくは支度完了後からお引上げまで、そばに付き添い世話をするスタッフである。新婦は特に着慣れない衣裳を身につけ、一人で動くことさえ難しいため、常にサポートが必要となる。新郎新婦には一般に専門のアテンダントが付くが、会場によってはウエディングプランナーやヘアメイクアーティストがアテンダント役を兼任する場合もある。

3 ロビー案内係
 ロビー案内係は「ロビーアテンダント」とも呼ばれ、ホテルの宴会ロビーや婚礼会場のメインロビーで列席者に控室や挙式会場、受付などを案内したり、タクシーの手配、クローク業務などを行うスタッフである。同日に複数の婚礼を開催する会場では、混乱を避けるためにも列席者の誘導が欠かせない業務となる。そうした会場では「式入れ担当」といって、時間と状況を把握し、列席者の挙式会場への案内を専門にコントロールするスタッフもいる。

3)ウエディングプランナーの役割と心構え

 打合せから当日までトータルに担当するウエディングプランナーは、施行・進行管理業務も行う。直接管理する業務内容は、婚礼会場によって違う。キャプテンの役割を果たす場合と、キャプテンと協力して業務の一部を担当する場合があるが、いずれにせよプランナーは、スタッフ間のチームワークを高めるリーダーにならなくてはならない。なぜなら当日のプランナーは進行を管理するだけで、専門スタッフの活躍がなければ、婚礼を成功させることは不可能だからである。「各専門スタッフが最大限の力を発揮するためのステージを整えること」が自分の役目と心得た上で、関係スタッフに対する敬意と謙虚な姿勢を持って臨むことが大切である。

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2. 施行・進行管理

1)婚礼前日のスタンバイ

 婚礼前日のスタンバイ内容も会場ごとに違いがあるが、その目的は当日の作業をできる限り軽減することにある。婚礼当日はスタンバイ時間も限られており、何かと予期せぬトラブルが発生することも多いため、前日にできる限りの準備を行うことで、当日に余裕が生まれるのである。しかし、中には前日でなく当日に用意すべきアイテムもある。前日にスタンバイをすると紛失の恐れがあるものや、衛生上の問題が発生するものである。その判断基準をきちんと把握し、的確にスタンバイすることも、この業務に携わるスタッフの重要な仕事である。

前日にスタンバイすると紛失の恐れがあるもの:席次表やもぎり札など。

1 会場セッティング
◆ ロビーおよび控室のセッティング
ロビー
受付や装飾用のテーブル、イーゼル(ウエルカムボードを立てる器具)、控室の案内表示などを用意する。
控 室
親族控室や来賓控室のセッティングを行う。
◆ 宴会場内のセッティング
テーブルセット:テーブルを用意し、テーブルクロスをかける。
卓上アイテムの準備:グラスやシルバー(銀食器類)を磨く。ナプキンを折る。

卓上アイテムのセッティングは、衛生上当日に行われる。

2 納品確認
◆ ペーパーアイテム
席札・もぎり札(エスコートカード)・席次表などの誤字、汚れ、数量の確認を行う。席札に関しては、セッティングがスムーズにできるよう、テーブルごとにまとめておく。ペーパーアイテムは誤字の訂正などが発生する可能性があるため、余裕を持ち数日前に納品されていることが多い。
◆ 引出物、引菓子、プチギフト
前日、もしくは前々日に品物ごとに納品される。数量、熨斗紙の確認などを行う。会場によっては、前日に引出物、引菓子の袋詰めを行うこともある。
◆ 衣 裳
衣裳は通常、貸衣裳店などから新郎新婦の控室や美容室に納品される。納品確認は衣裳室スタッフもしくは美容室のスタッフが行うことが多いが、レストランやゲストハウスの中には衣裳・美容の常駐スタッフがおら、衣裳ケースがバックヤードなどに納品されるだけという場合もある。そうした会場ではウエディングプランナーが納品確認作業を行い、控室やメイクルームにセッティングすることが多い。納品確認では伝票と内容を照らし合わせ、きれいにプレスされている衣裳がシワにならないようにハンガーラックなどにかける。

3 スタッフミーティング
 スタッフミーティングは当日の朝に行う場合もあるが、可能であれば前日に行うのが望ましい。関係スタッフが一堂に会することは少なく、まず、進行管理を担当する中心スタッフでミーティングを行い、その後、専門分野ごとにミーティングを行う会場が大半である。いずれも進行内容を読み上げ、自身が関わるポイントを念入りに最終チェックする。

2)婚礼当日のスタンバイ

 婚礼当日は、各担当者が披露宴開宴の2~3時間前からセッティングを開始する。受付や卓上のセッティング、引出物のセッティングなどを行うが、いずれも限られた時間内での作業となるため、正確さと同時にスピードが求められる。セッティングが終了したら入念にチェックし、さらに開宴の直前に最終確認を行う。

◆ 受付セッティング
席次表、もぎり札(エスコートカード)、芳名帳、ウエルカムボード、ウエルカムドールなどをセットする。
◆ 卓上セッティング
ショープレート、シルバー(銀食器類/カトラリー)、グラス、ナプキン、ペーパーアイテム、装花をセットする。
◆ 引出物のセッティング
引出物、引菓子を持帰り用のペーパーバッグなどに詰める。近年は招待客のタイプに合わせて引出物を贈り分ける傾向があり、品物の組み合わせが数種類にわたることもある。品物を詰める際には、熨斗の向きや包装の向きなどにも細心の注意を払う。引出物の配り方は、開宴前にあらかじめ各席に付けておく方法、宴中にサービススタッフが各席に届ける方法、送賓時に新郎新婦から手渡す方法がある。

カトラリー:ナイフやフォーク、スプーン類のこと。銀製であることが多いため、サービススタッフの間では「シルバー」というのが一般的。

3)進行管理業務

 進行管理業務は、ウエディングプランナーが担当する会場とキャプテンが担当する会場とで関わるスタッフに違いがある。さらに会場によっても担当する業務に多少の違いがあるが、全体の業務内容は変わらないため、それぞれの一般的な担当業務を紹介する。
 
◆ 進行に関わるスタッフの組織図(例)

【進行管理責任者:プランナー】

【進行管理責任者:キャプテン】

1 披露宴前
 披露宴開宴までの進行管理を担当するスタッフは、当日までトータルに担当するプランナーがいる会場では、担当プランナーとアシスタントプランナーが中心となる。分業スタイルの会場では、式入れ担当者やアテンダント(介添え)、キャプテンアシスタントが中心となり、進行を管理する。

◆ 進行管理内容と担当スタッフ(例)

進行内容 進行管理責任者
プランナー キャプテン
披露宴前 来館確認 新郎新婦 業務内容 結婚指輪など、当日持込みの確認と支度の案内
担当スタッフ プランナー 打合せプランナー・アテンダント
両親 業務内容 両親の来館確認と支度の案内
担当スタッフ プランナー ロビー案内係
親族 業務内容 控室の案内と支度の案内
担当スタッフ アシスタントプランナー ロビー案内係
親族紹介 業務内容 親族の来館確認と「親族紹介」開始の声掛け
担当スタッフ プランナー アテンダント・キャプテンアシスタント
挙式リハーサル 業務内容 エスコート役の父親等のリハーサル(歩き方など簡単なもの)
担当スタッフ アシスタントプランナー アテンダント
挙式場案内 業務内容 挙式場への案内(新郎新婦・親族・友人)
担当スタッフ プランナー・アシスタントプランナー アテンダント
受付説明 業務内容 受付係への手順説明
担当スタッフ アシスタントプランナー キャプテンアシスタント
親族集合写真 業務内容 親族集合写真の案内
担当スタッフ アシスタントプランナー アテンダント・ロビー案内係
受付・控室案内 業務内容 受付・控室の案内
担当スタッフ アシスタントプランナー ロビー案内係・キャプテンアシスタント
進行ミーティング 業務内容 司会・音響・サービス責任者との最終打合せ
担当スタッフ プランナー キャプテン
サービススタッフ
ミーティング
業務内容 サービススタッフのミーティング
担当スタッフ キャプテン兼サービス責任者 キャプテン
迎賓案内 業務内容 控室より宴会場への案内
担当スタッフ アシスタントプランナー キャプテンアシスタント・ロビー案内係

挙式リハーサル:挙式全体の流れを一通りリハーサルする場合は、牧師や聖歌隊(キリスト教式)、神主(神前式)、プランナーorキャプテンと司会者(人前式)が担当することもある。

2 披露宴
 披露宴の進行管理を担当するスタッフは、打合せから当日までトータルに担当するプランナーがいる会場では、担当プランナーとキャプテン、アシスタントプランナーの三人が中心となる。分業スタイルの会場では、キャプテンとキャプテンアシスタント、サービス責任者が中心となり、進行を管理する。

◆ 進行管理内容と担当スタッフ(例)

進行内容 進行管理責任者
プランナー キャプテン
披露宴前 進行の調整 業務内容 進行予定・歓談時間の調整など
担当スタッフ プランナー キャプテン
進行と料理のタイミング 業務内容 進行予定と料理出しの調整
担当スタッフ プランナー・キャプテン兼サービス責任者 キャプテン・サービス責任者
サービスと調理場の調整 業務内容 調理場スタッフとの調整(デシャップ業務)
担当スタッフ キャプテン兼サービス責任者 サービス責任者
余興の準備確認 業務内容 余興担当者への声掛け・準備確認
担当スタッフ アシスタントプランナー キャプテンアシスタント
引出物の確認 業務内容 引出物配り(宴中に配る場合)
担当スタッフ アシスタントプランナー キャプテンアシスタント

3 披露宴お開き後
 披露宴がお開きになった後は、新郎新婦が退館するまでをケアするスタッフと、次の披露宴に向けて宴会場のセットチェンジを行うスタッフ、ロビーの列席者を案内するスタッフに分かれて業務につく。新郎新婦のケアは、ウエディングプランナーやアテンダント(介添え)が担当し、お引上げの案内とともに祝儀をはじめとした持帰り品の確認なども行う。会場のセットチェンジは、アシスタントプランナーやサービススタッフが中心になって行う。限られた時間内に片づけと新たなセッティングを行うため、1日で最も忙しい時間帯となる。同日に複数の婚礼が開催される会場では、お開き後の列席者とこれからの列席者でロビーが最も混雑する時間帯となるので、ロビー案内を担当するスタッフは間違いがないように、列席者ごとの案内時間・場所をしっかりと把握しておく。

◆ 進行管理内容と担当スタッフ(例)

進行内容 進行管理責任者
プランナー キャプテン
お開き後 お引上げ 業務内容 新郎新婦が退館するまでのケア
担当スタッフ プランナー・アシスタントプランナー アテンダント
会場のセットチェンジ 業務内容 会場のセットチェンジ(ドンデン)
担当スタッフ キャプテン兼サービス責任者・アシスタントプランナー キャプテン・サービス責任者

会場のセットチェンジ:婚礼会場では通常、1つの宴会場で1日に2~3組の披露宴を開催する。そのためお開きから次の開宴時刻までは2時間から2時間30分程度しか確保できないので、片づけとセッティングを同時に行う必要がある。

セットチェンジは、一気に様相が変わる「ドンデン返し」が語源となり、「ドンデン」とも呼ばれている。


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第10章 販売促進

1. ブライダルマーケティング

1)マーケティングとは

 ブライダル業界におけるマーケティングとは、自社の商品、すなわち結婚式、および関連商品を効率良く販売するために、販売対象となる結婚するカップルのニーズに合った商品を企画し、より効果的に宣伝ができる方法を選定しながら、売れ続ける仕組みを構築することである。

近年は、カップルのニーズも多様化し、一時期のように企業側が一方的に提示した婚礼スタイルや真新しい施設ということだけでは、一時的な利益を確保することはできても、長く売れ続けることが難しい時代となってきた。さらに、インターネットの普及により誰もが容易に情報を得ることができるようになったことから、新郎新婦のニーズの多様化はさらに進み、よりマーケティングの重要性が高まってきている。

2)ブランディングとは

 ブライダル業界におけるブランディングとは、対象者である結婚するカップルに、自社のウエディングコンセプトを提示し、その商品やサービスが他には無い価値あるものだと認識させること、そして市場の中で他社との差別化が明確に示され、一定のポジションを築くことである。すなわち、ブランディングの目的は市場の中で独自性を築き、ある一定の対象者から支持を得ることである。これはマーケティング戦略の1 つであり、ここで構築したブランドは、企業やサービスのイメージとして捉えられるため、イメージが先行しがちなブライダル業界においては欠かせない戦略の1つとなっている。

1 コンセプトの確立
 ブランディングに欠かせないのが「コンセプトの確立」である。コンセプトとは、自社の商品やサービスの根底にある想いや考え方のことであり、販売促進の指針となるものである。市場のニーズと自社の特徴のバランスを見ながら、自社の強みを最大限に活かしたコンセプトを確立させることが重要である。また、結婚式のサービスにおけるコンセプトでは、自社が提供するサービスで幸せな結婚式を挙げてもらいたい!という、カップルに真摯に向き合う強い想いも大切な要素の1 つとなっている。

2 ポジショニングとターゲティング
 ポジショニングとターゲティングとは、市場における自社の商品やサービスの位置付けを定め、どのターゲット層に、どのくらいの規模で提示していくかを定めることである。ターゲットが狭ければビジネス規模は小さくなるし、大きく展開するには、より多くのターゲットを取りこむ商品開発が必要となってくる。いずれにせよ、ニーズに沿う範囲で自社のコンセプトを提示し、競合他社との差別化が図られた、他にはない特別な存在として認知されることが重要である。

3 マーケティングにおける戦術と戦略
 戦術とは、「インターネットや雑誌に掲載するといった宣伝の具体的な方法」を指し、戦略とは「自社の販売環境(ポジションやターゲットの特徴など)や、時代に合った戦術を考えること」である。一般的には、掲載する媒体の規模、広すぎるターゲットの設定、意識しすぎる流行といった要素や、競合他社の成功事例の影響などにより、戦略よりも戦術に目が行きがちだといわれているが、重要なのは自社の強みや設定しているターゲットの好みなどを研究し、その特徴に合った自社の戦略を考え、実行すること、そしてその一貫した想いをむやみに揺るがさないことである。

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2. 販売促進のツール

1)ホームページ

 婚礼施設にとって、ホームページは新規顧客を獲得するための重要な販売促進ツールである。最新の情報を提供できることや多くの情報を自由に掲載できることが、ホームページの利点である。最近は雑誌広告や専門サイトだけを情報源にする新郎新婦は少なく、いったん会場のホームページを確認してからコンタクトを取る傾向がある。ホームページを充実させて魅力を伝えることができなければ、早い時点で顧客を失いかねない。また、ホームページには、新郎新婦が「資料請求」や「来館予約」といったアクションを、比較的手軽に起こしやすいシステムを容易に導入できるという特徴がある。新規顧客の獲得競争に勝つためにも、システムの特徴を十分に理解し、いかにうまく活用するかが、重要である。

◆ ホームページを利用した販促の流れと課題
第1ステップ:雑誌や専門サイトで自社の認知度を上げる。
第2ステップ:ホームページにアクセスさせる。
第3ステップ:ホームページに訪れた顧客を逃さずにアクションを起こさせる。
この3段階の販売促進を徹底して強化することが重要である。

2)パンフレット

 パンフレットの役割は、会場の魅力を伝えることと、信頼性を高めることにある。近年はホームページで十分な情報を提供できるため、「資料請求」を省き、直接「来館予約」へとアクションを起こす新郎新婦も増えつつある。しかし、情報が多すぎて逆に実態がつかめないと感じている顧客もいることから、従来通りの資料請求方法として、パンフレットの請求も受け付けているのである。また、パンフレットを紙ではなく電子パンフレットで用意している企業も増えてきた。

SNS ソーシャル・ネットワーキング・サービス
 ソーシャル・ネットワーキング・サービス(social networking service, SNS)とは、インターネット上で交友関係を構築できるウェブサービスの総称である。本来は営業目的ではなく、個人的な交友関係の中で情報を入手する場であるが、近年SNS全体が1 つの宣伝広告手段と位置付けられ、企業側からの情報配信の場として重要視されている。また、近年は見ず知らずの関係性でありながら、すでに結婚式を終えた花嫁から、これから式を迎える花嫁への情報提供も頻繁に行われており、企業側から配信された情報よりも、なお一層実態のある意見として人気を博している。


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3. 販売促進企画

1)ブライダルフェア

 ブライダルフェアとは、婚礼の販売促進イベントである。通常の見学よりも内容が充実しており、足の運びやすさから新郎新婦にも人気が高く、各企業は販売促進の重要な企画として力を入れている。

1 ブライダルフェアの役割
 ブライダルフェアには2つの役割があり、1つは新規顧客の獲得、そしてもう1つは既存顧客の単価アップである。以前は大規模なフェアを年2回、閑散期(2月・8月)に行うことが多かった。大規模なイベントを2~3日連続で行い、開催日によって新規顧客向けと既存顧客向けにイベント内容を分けるのが一般的であった。

しかし近年では、婚礼施設数の増加によって新規顧客の獲得が厳しい現状にあるため、その打開策として新規顧客向けの小規模フェアを数多く企画し、頻繁に行うようになっている。どの企業も毎週のように何らかのフェアを開催している理由は、来館促進活動の結果といえる。

2 ブライダルフェアの内容
 ブライダルフェアの内容は、衣裳や料理をはじめとする婚礼商品の展示、試食会、模擬挙式、模擬披露宴、ファッションショー、和装体験会など多岐にわたる。大規模なフェアを開催する際はコストもかさむため、協賛として取引先から協力を得ることも多い。ブライダルフェアは取引先にとっても自社製品の宣伝の場となり、顧客に魅力を直接伝えることができるというメリットがある。

最近は小規模なフェアを数多く行う企業がますます増えており、フェアの企画を充実させることが各企業の課題となっている。ありきたりな企画では他社との差別化を図ることは難しく、各会場の特徴となる内容をアピールするフェア内容やその特徴を表すフェア名にするなどの工夫をしながらより新鮮で魅力あるアイデアで企画している。

2)パッケージプラン

 パッケージプランとは、婚礼に必要なアイテムをセットにした婚礼商品で、新規顧客獲得のツールとして使用されている。プランに含まれるアイテムの内容は企業ごとに違いがあるため、比較の際は価格だけでなく内容の詳細も確認する必要があるが、企業の販売促進にとって重要視されている企画商品である。

1 パッケージプランの役割
 専門的な知識を持たない新郎新婦にとって、婚礼は、何が必要で、どのくらいの金額がかかるのかが不明で、非常に不安を抱きやすい。そのためパッケージプランは、セットになっていることの安心感やお得感から新規顧客に好まれる傾向にあり、プランのPRをそのまま来館促進のきっかけに繋げることができる。こうした事由から企業側もパッケージプランの開発に力を入れ、競合他社より少しでも安くお得感のあるパッケージ商品を企画しようと努力している。

2 パッケージプランの内容
 パッケージプランの基本料金には、主体となる商品と、付帯的な商品の料金が含まれている。主体商品とは料理、飲物、会場使用料(室料)とこれらにかかるサービス料であり、付帯商品とは挙式料、会場装花、ペーパーアイテムなどである。パッケージプランの作成方法は、大きく分けると2つある。主体商品と最少の付帯商品を組み合わせて全体の金額を抑える方法と、付帯商品を上手に組み入れてパッケージ利用のお得感を出す方法である。後者に関しては、競合他社のプランと比較し、金額の見せ方と内容の充実度で差別化を図っていることが多い。

さらに、プランに含める付帯商品は、できる限り利益率の高い商品を入れ、パッケージ総額が同じでも、利益率が高くなるようにプランを作成するのが一般的である。パッケージプランはブライダルフェアの企画と同様、来館促進と新規顧客獲得のための重要な販売促進ツールとなる。婚礼企業側は常に「魅力ある商品づくり」に尽力しなければならない。

◆ パッケージプラン告知例


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付録

1. ブライダルサービス接遇

 顧客に与えるスタッフの第一印象は、企業イメージを大きく左右する。好印象を与えるためには、服装・身だしなみの整え方、挨拶と立ち居振る舞いの基本、ビジネスシーンでの言葉遣い、失礼のない名刺交換、スムーズな電話応対などのビジネスマナーを身につけることが重要である。

1)服装・身だしなみの基本……清潔感

 ビジネスシーンにおいて身だしなみは非常に重要である。身だしなみがきちんとしていれば、仕事に対する誠意や意欲を強く感じさせることができる。下記の注意点をチェックし、場にふさわしい着こなしと清潔感を心がけたい。

◆ 身だしなみの注意点

注意事項
頭髪 ・極端な茶髪などのカラーリングはしない。
・お辞儀をした時に、前髪やサイドの髪が顔にかからないようにしっかりと留める。
・長髪の場合は後ろで結ぶか、シニヨン・アップなどにして小さくまとめる。この場合も乱れ髪がないように注意。
・華美なヘアアクセサリーは避ける。
・男性の場合、もみ上げは極端に長くしない。また、前髪以外は立ち上げない。全体的に短髪が望ましい。
・頭髪は一番不潔感が出やすいので清潔を保つ。
顔・化粧 ・口臭やタバコの臭いをさせない。
・口元・歯を清潔にする。
・男性の場合はひげをきちんと剃り、鼻毛が伸びていないか注意する。
・女性の場合は派手なもの、奇抜なものを避けた節度ある化粧を心掛ける。
・眼鏡使用の場合はレンズの汚れに注意する。
手・爪 ・ささくれや爪の中の黒ずみは厳禁。爪が伸びすぎていないか注意。
・マニキュアの色は派手過ぎない色を選び、剥げていないか常に注意する。
・付け爪は不可。
制服 ・しわ、たるみがないようにきちんとアイロンをかける。
・しみ、ほつれ、ボタンの欠落がないように。また、襟首、袖口の汚れに注意。
・サイズは体型に合ったものを選ぶ。
・男性の場合は特に襟元のVゾーンで清潔感が伝わるので注意。派手な柄のネクタイは不可。
 また、スラックスのセンターラインのプレスにも心配りをする。
・パンツ丈やスカート丈は短すぎても長すぎても不可。
・パンツ着用時は手を上げた時にウエスト部分から素肌が見えないように股上の深いものが望ましい。
・名札は所定の位置につけ、お客様が読みやすい角度を保つ。
靴・靴下 ・靴下はユニフォーム、制服と合ったものを選ぶ。
・ストッキングは所定の色を着用し、伝線やたるみがないか注意。柄入りや網タイツは不可。
・靴の色は基本的に黒色が望ましい。きちんと磨いたものを履く。
・かかとを踏んでいたり、磨り減ったものは不可。
・ピンヒールや極端に高さのあるパンプスは不可。
その他 ・時計、ピアス、アクセサリー類は制服、職場の雰囲気に合わせ、清楚なものにする。
  ピアス:つけすぎや垂れ下がるものは不可。
  時 計:大型時計やブランド、キャラクターが目立つものは不可。
  指 輪:目立ちすぎるものやつけすぎに注意。基本的には結婚指輪のみが望ましい。

2)挨拶と立ち居振る舞いの基本……メリハリのある動き

 挨拶は自ら進んで、笑顔と大きな声で、相手の目を見て心を込めて行う。

1 会 釈
 軽いおじぎで、角度の目安は15 度。「人の前を通る時/人とすれ違う時/お客様にお茶を出す時/少々お待ちいただく時」に用いる。会釈をする時は「はい、かしこまりました/少々お待ちくださいませ/お待たせいたしました」などの言葉を添える。

2 敬 礼
 一般的なおじぎで、角度の目安は30 度。「上司やお客様への挨拶/出社・退社時/お客様の送迎」に用いる。敬礼をする時は「いらっしゃいませ/おめでとうございます/おはようございます」などの言葉を添える。

3 最敬礼
 丁寧なおじぎで、角度の目安は45 度。「深い誠意を表す時/お詫びをする時/特に大事なお礼をする時」に用いる。最敬礼をする時は「ありがとうございます/おめでとうございます/申し訳ございません」などの言葉を添える。


◆ 好印象を与える美しい表情
・ 口元は口角を左右対称に上げ、歯が見えるくらいの笑顔で、いつでも明るくイキイキとした表情が好印象である。
・ 笑顔に加え、いざという時には真剣な表情でアピールすること。ここぞという時の目力も重要である。
◆ 好印象を与える立ち姿勢
・ 両足のかかとをつけ、つま先をこぶし1つ分開き、膝の後ろを伸ばす。
・ 頭の先から糸で引っ張られているようなイメージで身体全体をまっすぐにし、ヒップをきゅっと上げ、下腹に力を入れる。横から見た時に耳、肩、膝、くるぶしが一直線になるようにするとよい。
・ 肩の力を抜き、肩甲骨を内側に寄せて背筋を伸ばし、頭はまっすぐ正面に向けて、あごは軽く引く。
・ 両手の指先は揃え、前で軽く重ねる(男性の場合は横に下ろす、または前で組む)。
◆ 好印象を与える歩行
・ 正しい姿勢のまま、踏み出した足に体重をスッと乗せ、胸から前へ出て行くような意識で歩く。
・ 腕は振るのではなく、出した足と同じ側の腕を引く感覚で自然に前後に動かす。
・ かかとを引きずる歩き方は好ましくない。
・ ヒールや靴底の音はさせないように注意する。
◆ 好印象を与える座り姿勢
・ お腹に力を入れて背筋を伸ばし、椅子の背もたれには寄りかからずに、腰の後ろにこぶし1つ分ほど隙間を空けて座る。
・ 腕の力を抜き、両手は太ももの上に指を揃えて重ねる。
・ 両足は揃えてまっすぐ伸ばし、かかとをしっかりと床につける。

3)ビジネスシーンでの言葉遣い……正しい日本語

1 注意したい若者言葉
 親しい友人間で使うような言葉遣いは、接客用語としては不適切になる。

×トマトは食べれますか(ら抜き言葉) → ○食べられますか
×山田のほうは外出しています → ○山田はただいま外出しております
×資料になります(になります症候群) → ○資料です
×私的にはこちらがお薦めです → ○私といたしましてはこちらをお薦めします
×お名前様をいただけますか? → ○お名前をお聞かせいただけますか
×コーヒーでよろしかったでしょうか? → ○コーヒーでよろしいでしょうか
×超おもしろいですね → ○とてもおもしろいですね
×クラブ活動で水泳とかしてました → ○クラブ活動では水泳をしておりました
×マジ!きれいです → ○本当にきれいです
×一応データ入力終わりました → ○データ入力が終わりました
※他に「っていうかぁ/微妙~/やばい/ありえない」なども注意したい表現。

2 基本的なビジネス用語

話し言葉 ビジネス用語
表現 いつもどうも お世話になっております
わかりました かしこまりました
あたし/わたし/自分 わたくし
誰ですか? どちら様でいらっしゃいますか?
うちの会社 弊社/私ども
あなたの会社/おたくの会社 貴社(書き言葉)/御社(話し言葉)
ちょっと待ってください 少々お待ちいただけますか
こちらから行きます こちらから伺います
どうしますか いかがいたしましょうか
今、行きます ただいま、参ります
もうすぐ まもなく
話を聞きます お話を承ります
本当に まことに
どうですか いかがでしょうか
いいですか よろしいでしょうか
すみません(恐縮) 恐れ入ります
すみません(謝罪) 申し訳ございません
話しておきます 申し伝えます
分かっています 存じております
すごく 非常に
どなた
じゃあ それでは
洋服/着物/衣裳 お召し物
草履/靴/下駄 お履物
さっき さきほど
こっち/あっち/そっち こちら/あちら/そちら
おととし/去年 一昨年/昨年
おととし/きのう/きょう/あした/あさって 一昨日/昨日/本日/明日/明後日

3 敬語の基本と使用方法
 敬語には下記の5種類がある。
◆ 尊敬語
相手や相手の行動に敬意を表し、相手を高める表現。主語は相手で、相手の動作・状態・モノに用いる。
【使用方法】
慣用的表現:元の動詞とまったく違う表現(言う→おっしゃる)
お・ご+動詞+になる
動詞+れる・られる
◆ 謙譲語
Ⅰ. 謙譲語:自分がへりくだることにより相手を立てる表現。主語は自分で、自分の動作・状態に用いる。
Ⅱ.丁重語:自分の行為を丁重に表現することにより相手を上位に位置づける表現。
【使用方法】
慣用的表現(行く→参ります)
お・ご+動詞+する・致す
◆ 丁寧語
Ⅰ.丁寧語:相手の動作にも自分の動作にも使い、聞き手に対して丁寧に述べる言葉。
【使用方法】
「です/ます/ございます」を文末につける。
Ⅱ.美化語:敬意は含まず言葉を美化する時に使う。
【使用方法】
寿司→お寿司 茶→お茶 祝儀→ご祝儀

◆ 尊敬語と謙譲語の使い分け

動作 話し言葉 ビジネス用語
尊敬語 行く 週末、京都へ行きますか 週末、京都へいらっしゃいますか行かれますか
来る 当社へいつ来ますか 当社へいついらっしゃいますかお越しになりますか
いる オフィスに何時までいますか オフィスに何時までいらっしゃいますか
する 自分で料理をしますか ご自分でお料理をなさいますか
言う 社長が言った 社長がおっしゃった言われた
聞く どの会場か聞きましたか どの会場かお聞きになりましたか
見る パンフレットを見ましたか パンフレットをご覧になりましたか
食べる デザートを食べましたか デザートを召し上がりましたか
知っている 料金を知っていますか 料金をご存知ですか
くれる 〇〇様がお土産をくれました 〇〇様がお土産をくださいました
会う 先方と会いますか 先方とお会いになりますか
謙譲語 行く 明日そちらに行きます 明日そちらに伺います(謙譲)/参ります(丁重)
来る 今日こちらに来ます 今日こちらに伺います(謙譲)/参ります(丁重)
いる オフィスには7時までいます オフィスには7時までおります(丁重)
する 資料作成はこれからします 資料作成はこれからいたします(丁重)
言う 以前、社長に言いました 以前、社長に申し上げました(謙譲)
聞く ご用件は私が聞きます ご用件は私が承りますお聞きします伺います(謙譲)
見る 写真を見ました 写真を拝見しました(謙譲)
食べる 先に昼食を食べました お先に昼食をいただきました頂戴しました(謙譲)
知っている 私は〇〇を知っています 私は〇〇を存じております(謙譲)
もらう 写真は先ほどもらいました 写真は先ほどいただきました(謙譲)
会う 先方と会います 先方とお会いしますお目にかかります(謙譲)

◆ 他に注意したい敬語の間違い
・「させていただく」の多用
×「プランナーをさせていただいている山田ですが、確認させていただきたいと思い、ご連絡させていただきました」
○「プランナーの山田ですが、確認させていただきたいと思い、ご連絡いたしました」
・「さ」入れ言葉
×行かさせていただきます  ○参ります、伺います
×送らさせていただきます  ○お送りいたします
×やらさせていただきます  ○やらせていただきます
◆ 忌み言葉
不吉な言葉や別れ・再婚を連想させる言葉は、なるべく他の言葉に置き換えるとよい。
【例】
浅い/欠ける/果てる/終わる/切る/切れる/破れる/破る/別れる/離れる/出る/出す/戻る/去る/帰る/返る/返す/滅びる/苦しい/壊れる/死ぬ/憂い/痛ましい/流れる/散る/悲しむ/荷物/突き当たり/衰える/負ける/再び/最後に/ほころびる
◆ 重ね言葉
同じ言葉を繰り返す言葉は、再婚や再縁を連想させるので使用しない。
【例】
いろいろ/返す返す/重ね重ね/くれぐれ/しばしば/重々/度々/次々/ますます/またまた/皆々様
◆ クッション言葉
言いにくいことを伝えるときに文頭に入れ、全体の響きを和らげる言葉。
【例】
恐れ入りますが/申し訳ございませんが/お手数(ご足労)をお掛けします/あいにくですが/お差し支えなければ/せっかくお越しいただきましたのに/お電話くださいましたのに/~いただけましたら、大変ありがたいのですが/大変勝手ではございますが/恐縮でございますが
【使用例】
顧客に対し、打合せ時にドレスの写真を用意してもらいたい場合
「お手数をお掛けしますが、/恐縮ですが、ドレスの写真をお持ちいただけないでしょうか?」

4)名刺交換

 名刺交換は、初対面の相手に自分を印象づける第一歩である。名刺は自分自身の「顔」、汚れていたり、折れ曲がっていたりしてはNG。いつもきれいな名刺を名刺入れに用意し、携帯する。交換の際は、あわてず堂々とスムーズに行うことがポイントである。また、いただいた名刺は相手の「顔」、両手でしっかりと受け取り、粗末に扱わないことが重要である。

◆ 名刺交換の正しい順番
1:基本は目下の者または訪問した側から先に名刺を差し出すのが礼儀。
2:名刺交換は必ず立ち上がり、テーブルがある場合は脇に出て行う。
3:相手の正面に立ち、名刺を相手のほうに向け、胸の高さに両手で持つ。
4:軽い会釈とともに自分の会社名・部署名・名前を名乗る。
5:お互い同時に名刺を出し合った場合は平行交換を行い、交換後はすぐに両手で持つ。
6:いただいた名刺は、会社名・部署名・名前を確認し、名刺入れの上にのせる。立っている姿勢では胸の位置で丁寧に扱う。
7:着席後はテーブルの上に置き、頃合いを見計らって「頂戴いたします」の言葉を添え、名刺入れにしまう。
◆ ケーススタディ
・複数の人と交換する場合のマナー
役職が上の人同士が先に交換し、順位順にスライドして交換をする。その場合、会社名は省略しない。
・目上または上の立場の人から先に名刺を渡された場合
あわてて名刺を取り出し、相手を待たせるのはスマートではないので、まずはその場で先方の名刺を受け取り、その後すぐに「申し遅れました、私は…」と、相手に名刺を渡す。
・名刺を忘れた時、切らしている時
「申し訳ございません、あいにく名刺を切らしておりまして」とお詫び後、口頭で会社名・部署名・名前を名乗り、帰社後すぐにファックス・メールで連絡先を伝える。後日訪問の機会があれば、改めて名刺を渡す。
・紹介役になった時のマナー
より自分に近い人、親しい人から紹介するのが基本(目下の人→目上の人、社内の人→社外の人、身内→身内以外の人、親交の深い人→親交の浅い人)。
役職や立場に関係なく、一人対複数の場合は、一人の方から紹介する。
取引先に上司を紹介する場合、相手の役職が下でも、必ず自社の上司を先に紹介する。
・受付業務にて来訪者から預かった名刺は、来訪対象者に確認後、お返しする。

5)電話応対

 声だけで企業の印象が決まってしまうのが電話応対。相手の顔が見えないために、会って話していれば顔つきや態度で感じ取れる微妙なニュアンスが電話越しでは伝わりにくい。そのため、通常の会話以上に親切丁寧な言葉遣いを心がけることが大切である。電話応対手順の基本を学んでスムーズな会話ができるようにし、ハキハキした明るい声で応対したい。

1 電話の受け方
ベルが鳴ったら
3コール以内に出る。
名乗る
「はい、○○でございます」「○○会社□□担当△△でございます」
メモの準備
受話器は左手に、右手にはメモと筆記用具を準備する。
相手の名前を確認する
「 ○○様でいらっしゃいますね、いつもお世話になっております」
相手の声が聞き取り難い場合
「 申し訳ありません、少々お電話が遠いようですが…」と聞く。「聞こえませんが」はNG。
聞き方のポイント
あいづちを入れながら、重要なポイントは繰り返し、長くなる場合は要所に要約を入れて最後まで丁寧に聞きながら、必ずメモを取る。
話し方のポイント
発音は語尾までハッキリと内容を正しく明確に話す。また業界用語や専門用語は避け、わかりやすい耳慣れた言葉で話す。
取り次ぐ時
「○○におつなぎいたします、少々お待ちくださいませ」
保留が20 秒以上になる場合
一度「少し時間がかかりそうですが、折り返しかけ直しましょうか?」と確認をする。
担当者が不在の場合
用件、伝言を聞き復唱する。外出している場合、行き先などの詳細は伝えない。
電話を切る
通話の終わりには「どうもありがとうございました」と伝え、相手が切ったことを確認後、静かに受話器を置く。
※基本的にかけてきた方が先に電話を切るのがマナーである。

2 電話のかけ方
名乗る
「○○会社の△△と申します。いつもお世話になっております」
取次ぎをお願いする
「恐れ入りますが、営業部の□□様はいらっしゃいますか?」
担当者が出たら
挨拶→都合の確認→用件を話す。
担当者が不在の場合
戻り時間を確認し、対応を伝える。
「失礼ですが何時ごろお戻りでしょうか」
「それでは改めてこちらから電話いたします」
「恐れ入りますが、伝言をお願いできますか?」
「恐れ入りますが、お戻りになったらご連絡くださいますようお伝えいただけますか?」(ただし、緊急以外では目上・個人の顧客・依頼の電話ではコールバックは頼まない)
電話を切る
「 お忙しいところありがとうございました。失礼いたします」と言い、静かに受話器を置く。

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2. 料飲サービスの基礎知識

 料飲サービスやセッティングの方法、食器類の呼び名には、婚礼施設ごとに違いがある。そのため料飲サービスを行う時には、その会場のルールを守ってサービスを行う。しかしサービスは「お客様をもてなす行為」であり、基本的な考え方は共通しているので、その考え方と基礎知識を学ぶことが大切である。基本的な考え方とは、料飲サービスは「ルールを守ること」が大切なのではなく、「お客様をもてなすこと」が大切ということである。たとえば「お客様の会話をさえぎってでも、右側からサービスしなければいけない」となっては本末転倒である。ルールを守ることにこだわりすぎて強引なサービスを行っては、本来の目的を果たすことはできない。この点を十分に気をつけることが、サービスマナーの基本である。

1)テーブルセッティング

 披露宴で用意される洋食コースの基本的なセッティングは、以下の通りである。料理の品数や内容により、使用するシルバーの種類や数に違いが生じる。皿やシルバー(銀食器類/カトラリー)の呼び方も婚礼施設によって多少異なるが、基本的な用途や手順は同じである。

1 セッティングの手順
・シルバー、グラスともにセット前に磨きをかける。
・ショープレート→シルバー→グラス→ナプキン→ペーパーアイテムの順でセットする。
※ ナプキンをセットすると「セット完了」を意味するため、ナプキンのセット前に再度全体を確認する。

2 皿・シルバー
Ⓐ ショープレート:席決めの皿であり、基本的には直接食べ物をのせることはない。
※魚料理や肉料理の前に下げられることが多い。
Ⓑ オードブルナイフ・フォーク:前菜に使用するシルバー。
Ⓒ スープスプーン:スープに使用するシルバー。
Ⓓ フィッシュナイフ・フォーク:魚料理に使用するシルバー。
※料理内容によりナイフの代わりにソーススプーンが使用されることもある。
Ⓔ ミートナイフ・フォーク:肉料理に使用するシルバー。
※オードブル用と形が似ているが、大きさとナイフの刃に違いがある。
Ⓕ デザートスプーン・フォーク:デザートに使用するシルバー。
※スプーンの代わりにソーススプーンが使用されることもある。
Ⓖ フルーツフォーク:フルーツに使用するシルバー。
※フルーツの内容により、オードブルと同様のナイフとフォークが用意されることもある。
Ⓗ パン皿・バターナイフ:パンに使用する皿とバターに使用するシルバー。

3 グラス
ⓐ 乾杯用グラス:シャンパンクープやフルートグラスが使用される。
ⓑ 白ワイングラス
ⓒ 赤ワイングラス
ⓓ ゴブレット:水用のグラス ※婚礼では使用されない場合もある。

2)テーブルマナー

 テーブルマナーには英国式、フランス式などいくつかの作法があるが、日本では「英国式」が公式マナーとなっている。テーブルマナーはルールではなくエチケットであり、他人に不愉快な思いをさせないことを基本としている。サービススタッフもプロとして、サービスされる側の基本的なマナーを学んでおく必要がある。

1 シルバーの使い方
 レストランでは料理ごとにシルバー(カトラリー)がセットされることもあるが、婚礼ではサービス時間が限られているため、あらかじめ数種類のシルバーがセットされる。複数並べられたシルバーは、料理ごとに外側から使用する。

2 ナプキンの使い方
 ナプキンは、席に着いた時、もしくは料理が運ばれる直前に膝にかける。中座する時は、軽くたたんで椅子に置く。退席する際には、軽くたたんでテーブルに置く。

3)料理のサービス方法

 サービス方法や呼び名も婚礼施設ごとに違いがある。しかし、婚礼サービスにおける効率と「お客様に対して粗相があってはいけない」という基本的な考え方は共通している。ここではサービスの基礎知識を紹介する。

1 料理サービスの種類
プレートサービス
皿に盛りつけられた料理をサービスする。オードブルやデザートなどで使用される。
プラッターサービス
メインディッシュのサービスで使用される。人数分の料理が盛られたプラッター(銀の皿)を左手で持ち、右手に持ったサーバーで一人ずつサービスする。
チューリンサービス
スープ料理のサービスで使用される。人数分のスープが入ったチューリンを持ち、レ―ドルで一人ずつサービスする。

2 皿の持ち方
 皿は左手に2~3枚持ち、右手でサービスする。
2枚持ち:片手に皿を2枚持つ方法。数枚の皿を持つ時の基本的な方法。

3枚持ち: 片手に皿を3枚持つ方法。2枚持ちよりテクニックが必要な持ち方。一度に運べる皿数が多く、皿を下げる時にも便利な方法である。

3 サービス方法
プレートサービス
現在はお客様の右側からサービスするのが一般的になっているが、サービス方法は会場ごとに異なるため、その会場のルールを確認する必要がある。
持ち回りサービス
プラッターやチューリンなどの持ち回りサービスは、お客様の左側から行う。

4)ドリンクのサービス方法

 ドリンクサービスの方法には、主にボトルサービスとトレンチサービスがある。

1 ボトルサービス
 乾杯酒、ワイン、ビールのボトルを右手で持ち、卓上に置かれたグラスにサービスする方法。ボトルのラベルがお客様に見えるように行う。注ぎ終わった時にボトルの口についた水滴がテーブルやお客様の衣服にかからないように、トーションでボトルの口を押さえてサービスする。

2 トレンチサービス
 複数のグラスが乗ったトレーを左手に持ち、右手でグラスをサービスする。
※ 背の高いグラスやワイングラスなど、安定感がないグラスは、万一倒れた時のことを考えて、手前に置く。グラスを持つ時は、口をつける部分は持たず、グラスの下方を持ってサービスする。

5)サービスの順序

 サービスは、一般的には席順に準じて行う。特にお客様の間にホストとゲストの関係や上下関係がある場合は注意が必要である。カップルの場合はレディーファーストを基本とし、接待などゲスト間に上下関係がある場合はゲスト→ホスト、上座→下座の順でサービスする。

テーブルの種類と用途
◆ 丸テーブル
大丸:円形テーブル(10 名掛け)※婚礼で使用する一般的な円形テーブル
中丸:円形テーブル(8名掛け)
小丸:立食用のちらしテーブル・ケーキ台テーブル

◆ 角テーブル
大角:流しテーブル・ブッフェボード・メインテーブルなどに使用
正角:ブッフェボード・2名用食事テーブルなどに使用
小角:受付テーブル・会議テーブルなどに使用

単位:mm


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3. 日本の婚姻に関する法律的事項

1)日本国憲法

◆ 日本国憲法第3章第24 条
1 .婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
2 .配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

2)民法 第4編第2章(婚姻)

◆ 婚姻適齢(第731 条)
男は、18 歳に、女は、16 歳にならなければ、婚姻をすることができない。
(2022 年4 月より、婚姻可能な年齢が男女ともに18 歳に統一されます)
◆ 重婚の禁止(第732 条)
配偶者のある者は、重ねて婚姻をすることができない。
◆ 再婚禁止期間(第733 条)
1 .女は、前婚の解消又は取消の日から100 日を経過した後でなければ、再婚をすることができない。
2 .前項の規定は、次に掲げる場合には適用しない。
① 女が前婚の解消又は取消しの時に懐胎していなかった場合。
② 女が前婚の解消又は取消しの後に出産した場合。
◆ 近親者間の婚姻の禁止(第734 条)
1 .直系血族又は3親等内の傍系血族の間では、婚姻をすることができない。ただし、養子と養方の傍系血族との間では、この限りでない。
2 .第817 条の9の規定により親族関係が終了した後も、前項と同様とする。
◆ 直系姻族間の婚姻の禁止(第735 条)
直系姻族の間では、婚姻をすることができない。第728 条又は第817 条の9の規定により姻族関係が終了した後も、同様とする。
◆ 養親子等の間の婚姻の禁止(第736 条)
養子若しくはその配偶者又は養子の直系卑属若しくはその配偶者と養親又はその直系尊属との間では、第729 条の規定により親族関係が終了した後でも、婚姻をすることができない。
◆ 未成年者の婚姻についての父母の同意(第737 条)
1.未成年の子が婚姻をするには、父母の同意を得なければならない。
2 .父母の一方が同意しないときは、他の一方の同意だけで足りる。父母の一方が知れないとき、死亡したとき、又はその意思を表示することができないときも、同様とする。
(2022 年4 月より、成人年齢引き下げに伴い第737 条は削除されます)

3)婚姻届

市区町村役所や出張所にある婚姻届に必要事項を記入・署名・捺印し、証人2名の署名・捺印に加え、必要なら戸籍謄本(抄本)を揃えて、どちらかの本籍地または新居のある市区町村役所に提出する。夜間窓口を設けている役所なら24 時間、土・日・祝日も受理される。

証人:20 歳以上であれば親・兄弟姉妹でも可。夫婦の場合は印鑑を別々のものに。

戸籍謄本(抄本):新郎または新婦の本籍地の役所に提出する場合は、本籍地でない側の謄本または抄本を用意する。どちらの本籍地でもない場合は、新郎新婦両名の謄本(抄本)が必要。新郎新婦とも本籍地が同じで、その本籍地の役所に提出する場合は必要ない。


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§ 練 習 問 題 §

第1章 練習問題

①婚礼を専門に取り扱う施設でブライダルが主業であるが、一般の宴会も受注し利益を得ている業態を答えなさい。

②国外のロケーションに憧れる新郎新婦が、新婚旅行を兼ねて挙式を行うスタイルを何と呼ぶか答えなさい。

③プライベート感を大切にし、一軒丸ごと、あるいはフロア単位で貸し切ることができる業態を答えなさい。

④多種多様な宴会場を所有し、幅広い婚礼ニーズに対応でき、宿泊施設などの設備が充実している業態を答えなさい。

⑤新郎新婦が婚礼施設を検討し、選ぶ際に利用するブライダル関連企業を答えなさい。

⑥パートナー企業が婚礼施設と提携する場合、テナントとして入店する以外の契約方法を答えなさい。

⑦「持込料」の別名を答えなさい。

⑧ブライダルに関わるスタッフに共通して求められるヒューマンスキルを答えなさい。

⑨ウエディングプランナーの業務は3つの分野に大別される。その3つを答えなさい。

⑩「ブライダルアテンダント」の別名を答えなさい。

⑪婚礼当日の施行確認、進行管理業務を主とするスタッフを答えなさい。

⑫ウエディングプランナーにとって一番大切なことは何か自身の考えを述べなさい。

 解 答 


①専門式場
②海外ウエディング
③ゲストハウス
④ホテル
⑤ブライダルエージェント
⑥委託販売契約
⑦保管料
⑧コミュニケーション力
⑨新規接客 婚礼打合せ 婚礼施行・進行管理
⑩介添え
⑪キャプテン
⑫※自由にお答えください。
例)新郎新婦と信頼関係を築くこと責任感を持つことなど



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第2章 練習問題

①ブライダル市場において、買い手とは誰を指すか答えなさい。

②マーケティングにおいて売り手は買い手の何を捉えることが重要か答えなさい。

③バブル期に行われていた華やかな婚礼を何というか答えなさい。

④2000 年を記念して婚姻数が増えた時期の婚礼を何というか答えなさい。

⑤婚礼件数とは何の件数を示すのか、2つ答えなさい。

⑥婚礼見込み件数とはバンケット数と婚礼の回転数と何の数を掛けて予測するか答えなさい。

⑦婚礼費用とは何の費用を指すか答えなさい。

⑧婚礼費用の平均金額を答えなさい。

⑨結婚にかかる総費用が最も高いといわれている地域を答えなさい。

⑩婚礼における祝儀の全国平均額を答えなさい。

⑪北海道の婚礼で特徴とされる制度を答えなさい。

⑫沖縄の婚礼における席次の特徴を答えなさい

 解 答 


①結婚を考える二人
②ニーズ
③ハデ婚
④ミレニアム婚
⑤婚礼実績件数 婚礼見込み件数
⑥受注見込み日
⑦挙式と披露宴にかかる費用
⑧ 300 万円
⑨東海地方
⑩3万円
⑪会費制
⑫高砂に近い席に両家両親、親族が座る



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第3章 練習問題

①日本で一般向けの「神前式」を創始したといわれる場所を答えなさい。

②日本で初めて「ホテルウエディング」が行われたといわれる場所を答えなさい。

③お見合いの起源は何社会にあるといわれているか答えなさい。

④仲人の別名を答えなさい。

⑤結納のスタイルは大別して2つある。その2つを答えなさい。

⑥結納品について、「目録」を品数に入れないのは、関東式と関西式のどちらか答えなさい。

⑦引出物の品数を奇数にする理由を答えなさい。

⑧「熨斗」とは何の略か答えなさい。

⑨結婚の誓約のしるしとして使われる指輪の丸い形状は、何を表すとされているか答えなさい。

⑩欧米の婚礼の慣習で、花やハーブの香りは何に役立つといわれているか答えなさい。

⑪イギリス式ウエディングケーキの慣習を答えなさい。

⑫サムシングフォーの意味を答えなさい。

 

 解 答 


①日比谷大神宮(現:東京大神宮)
②帝国ホテル
③武家社会
④媒酌人
⑤関東式と関西式
⑥関西式
⑦「割りきれない」という縁起を担ぐ理由から
⑧熨斗鮑
⑨永遠
⑩魔除け
⑪ 「ケーキの1 段目を結婚式の列席者にふるまい、2 段目を当日来られなかった方に、3 段目を結婚1周年の記念、もしく
は第一子が産まれた日に二人で食べる」
⑫ 「古いもの、新しいもの、借りたもの、青いものの4つを身につけて挙式に臨むと幸せになれる」



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第4章 練習問題

①神前式の式次第において、「三三九度の杯」の儀式名を答えなさい。

②神前式の玉串奉奠に使われる玉串の役割を答えなさい。

③仏前式の基となる仏教思想の中で大切にされているものを答えなさい。

④仏前式における念珠授与で、新郎新婦に渡される念珠の房の色をそれぞれ答えなさい。

⑤キリスト教式の中で歌われる歌の呼称を、カトリックとプロテスタントそれぞれ答えなさい。

⑥教会歴に従って定められた色の決まり事で、祝い事にふさわしくないとされる色を答えなさい。

⑦日本で古くから行われていた人前式の一種とされる式は何と呼ばれているか答えなさい。

⑧人前式において、列席者を代表して結婚の証人となる人を何というか答えなさい。

⑨披露宴とは何と何の2部構成になっているか答えなさい。

⑩挙式後、同じ日に披露宴を2回行うスタイルの通称を答えなさい。

⑪披露宴ほど形式ばらず、二次会ほどくだけた雰囲気ではないスタイルの祝宴の通称を答えなさい。

⑫披露宴のスタイルを提案する際、担当のウエディングプランナーが注意すべきことを答えなさい。

 

 解 答 


①三献の儀
②神と祈りを捧げる人の霊性を合わせる仲立ちをするもの
③縁
④新郎:白
 新婦:赤
⑤カトリック:聖歌
 プロテスタント:賛美歌
⑥紫
⑦家婚式
⑧立会人代表
⑨披露式と披露宴
⑩2部制披露宴
⑪ 1.5 次会
⑫ 新郎新婦の希望と列席者の顔ぶれを考慮したバランスの良い提案をすること



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第5章 練習問題

①和装における男性の正礼装を答えなさい。

②洋装における男性の昼の正礼装を答えなさい。

③新婦の和装で代表的なものを3つ答えなさい。

④白無垢の頭に被るものを2種類答えなさい。

⑤ウエディングドレスが「白」と定着したきっかけを答えなさい。

⑥新婦の洋装に必要な代表的な小物7点を答えなさい。

⑦ドレスラインの種類を4つ答えなさい。

⑧婚礼において、新郎新婦の母親が着用する和装の正礼装を2つ答えなさい。

⑨ブーケの種類で、「小さな滝」という意味を持つブーケの名称を答えなさい。

⑩新郎が洋装の際に胸元につける花の呼び名を答えなさい。

⑪新婦が和装の際に結う日本の代表的な髪型を答えなさい。

⑫新婦が洋装を購入する場合、そのタイプを2つ答えなさい。

 

 解 答 


①黒紋付羽織袴
②モーニングコート
③白無垢 色打掛 本振袖
④綿帽子 角隠し
⑤英国のヴィクトリア女王が、白で統一した花嫁衣裳を身につけたことから
⑥ベール ヘッドドレス グローブ アクセサリー パニエ ブライダルインナー シューズ
⑦Aライン プリンセスライン スレンダーライン マーメイドライン 等
⑧黒留袖 色留袖
⑨キャスケード
⑩ブートニア
⑪文金高島田
⑫セルドレス オーダードレス



CONTENTS

第6章 練習問題

①「新規接客業務」を担当する者に、特に求められるスキルを答えなさい。

②「婚礼打合せ業務」を担当する者に、特に求められるスキルを答えなさい。

③「婚礼施行・進行管理業務」を担当する者に、特に求められるスキルを答えなさい。

④婚礼施行・進行管理業務は、別名何業務と呼ばれるか答えなさい。

⑤婚礼の準備は一般的にいつ頃から始めるか答えなさい。

⑥招待状の発送時期を答えなさい。

⑦席次表の作成時期を答えなさい。

⑧新郎新婦の記念写真の別名を答えなさい。

⑨挙式にかかる一般的な所要時間を答えなさい。

⑩披露宴にかかる一般的な所要時間を答えなさい。

⑪お引上げとは、何を指すか答えなさい。

⑫披露宴と同じ日に、披露宴会場とは別の場所で行う挙式の呼び名を答えなさい。

 

 解 答 


①高い営業スキル
②新郎新婦との信頼関係を構築する能力
③冷静な判断力と決断力
④キャプテン業務
⑤半年から1 年前
⑥挙式・披露宴の2 ヶ月前
⑦挙式・披露宴の1 ヶ月前
⑧ポーズ写真
⑨ 20 ~ 25 分
⑩2時間30 分
⑪ 新郎新婦の衣装を日常服に着替えさせ、通常のヘアメイクに戻すこと
⑫外式



CONTENTS

第7章 練習問題

①新規接客において、会場や日時の案内だけでなく、その他に何が重要か答えなさい。

②出迎えの態勢で、行うべきポイントを3つ答えなさい。

③新規接客において最も重要なことを答えなさい。

④新規接客は一般的にどのくらいの時間をかけて行われるか答えなさい。

⑤アイスブレイキングとは、何を目的にしているか答えなさい。

⑥プレゼンテーションを行うためには、まず何をつかむことが重要か答えなさい。

⑦クロージングで、大切なポイントを2つ答えなさい。

⑧仮予約の一般的な期限を答えなさい。

⑨申込み手続きに必要なものを3つ答えなさい。

⑩申込書は一般の商取引で扱う何と同じ意味を持つ書類か答えなさい。

⑪「申込金」の別の呼び名を2つ答えなさい。

⑫婚礼の予約を重複して受けてしまった状態を何というか答えなさい。

 

 解 答 


①結婚式のイメージが膨らむような提案をすること
②心の準備 心を込めた会場設営 身だしなみを整える
③新郎新婦との信頼関係を築くこと
④2時間程度
⑤相手の心を開かせること
⑥相手のニーズ
⑦タイミング 促し方
⑧1週間
⑨申込書 規約 申込金
⑩契約書
⑪内金(預かり金) 解約保証金
⑫ダブルブッキング



CONTENTS

第8章 練習問題

①婚礼打合せで使用する「打合せシート」の別名を2つ答えなさい。

②招待状の名義を3通り答えなさい。

③宛名書きの種類を2通り答えなさい。

④婚礼で用意されるドリンクで、胃を活性化させ、食欲増進を目的とする飲物を答えなさい。

⑤ブライダルフォト(婚礼写真)の種類を2つ答えなさい。

⑥引出物の熨斗紙の書き方は、左右どちらが新郎側・新婦側かそれぞれ答えなさい。

⑦披露宴のプログラム「花束(記念品)贈呈」のシーンで、贈呈のスタイルを2通り答えなさい。

⑧披露宴会場の配席は、メインテーブルに向って左右どちらが新郎側・新婦側か答えなさい。

⑨披露宴のエンディングとして新郎新婦がお開き退場した後に流す映像を答えなさい。

⑩「おじ」を漢字で2通り答えなさい。

⑪サービス料とは何か。また、その一般的なパーセンテージを答えなさい。

⑫引出物と引菓子の説明として適する言葉を答えなさい。
引出物とは列席者に贈呈する(      )であり、引菓子とは引出物に添える(      )である。

 

 解 答 


①オーダーシート 受書
②両親名義 本人名義 連名名義
③毛筆筆耕(手書き) プリント筆耕(印刷)
④食前酒
⑤記念写真 スナップ写真
⑥新郎側:右
 新婦側:左
⑦ストレート クロス
⑧新郎側:左
 新婦側:右
⑨エンドロール
⑩伯父 叔父
⑪目に見えない「サービス」という商品に対する報酬10%
⑫婚礼の記念品、祝い菓子



CONTENTS

第9章 練習問題

① 料飲サービススタッフの中で、キャプテンと調理場スタッフとの連携・調整役を行うスタッフの呼び名を答えなさい。

②ロビー案内係の中で、挙式会場の案内を専門に行うスタッフの呼び名を答えなさい。

③当日におけるウエディングプランナーの役目は何と心得ておくべきか答えなさい。

④皿やシルバーなどのセッティングを、当日行う理由を答えなさい。

⑤ウェルカムボードを立てる器具の名称は何というか答えなさい。

⑥婚礼前日までの施行で、ペーパーアイテム、衣裳類などのほか、納品確認をするものを答えなさい。

⑦婚礼の当日にセッティングの場合は一般的に披露宴の何時間前に開始するか答えなさい。

⑧引出物の配り方を3通り答えなさい。

⑨婚礼の進行管理責任者として、ウエディングプランナーの他に担当するスタッフを答えなさい。

⑩一般的な進行ミーティングは進行管理責任者と音響担当者、サービス責任者、そして、もう一人誰と行うか答えなさい。

⑪新郎新婦の出迎え、もしくは支度完了後からお引上げまでそばに付き添い世話をする人を何と呼ぶか答えなさい。

⑫会場のセットチェンジの別名を答えなさい。

 


 解 答 


①デシャップ担当
②式入れ担当
③ 各専門スタッフが最大限の力を発揮するためのステージを整えること
④衛生上の都合
⑤イーゼル
⑥引出物などのギフト、DVD、BGM 等
⑦2~3時間前
⑧開宴前に席に付ける
 開宴中にスタッフが配る
 送賓時に新郎新婦から手渡す
⑨キャプテン
⑩司会者
⑪アテンダント(介添え)
⑫ドンデン



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第10章 練習問題

①ブランディングの目的は市場の中で何を築くことか答えなさい。

②コンセプトは販売促進において何の役割となるのか答えなさい。

③マーケティングにおいて戦術よりも重要なものは何か答えなさい。

④インターネット上で交友関係を構築できるウェブサービスの総称を何というか答えなさい。

⑤ホームページの利点を答えなさい。

⑥ブライダルフェアを開催する目的を2つ答えなさい。

⑦ブライダルフェアにおける取引先のメリットを答えなさい。

⑧ブライダルフェアなどで、取引先から協力を得ることを何というか答えなさい。

⑨パッケージプランとは何か答えなさい。

⑩パッケージプランが新郎新婦に好まれる理由を2つ答えなさい。

⑪パッケージプランのお得感を出す方法は、内容の充実度と何にこだわり作成しているか答えなさい。

⑫ 企業がパッケージプランの作成に力を入れるのは、パッケージプランが重要な役割を果たすためである。その重要な役割を2つ答えなさい。

 

 解 答 


①独自性
②指針
③戦略
④ SNS
⑤最新の情報を提供できる  多くの情報を掲載できる
⑥新規顧客の獲得
 既存顧客の単価アップ
⑦顧客に自社製品を直接宣伝できる
⑧協賛
⑨婚礼に必用なアイテムをセットにした商品
⑩安心感
 お得感
⑪金額の見せ方
⑫来館促進
 新規顧客獲得



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日本のウエディングプランナー
育成プログラム


2010年3 月14日 初版  第1 刷
2021年3 月1日 第5 版 第1 刷
編 集:ウエディングスビューティフルジャパン
発行所:株式会社 ジャスマック
    ウエディングスビューティフルジャパン
    〒107-0062 東京都港区南青山4-11-1
    TEL.03-5785-3311 FAX.03-5412-0303
    www.weddingsbeautifuljapan.com
    https://www.jasmac.co.jp

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