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日本のウエディングプランナー育成プログラム(サンプル)

 

第1章 ブライダル業界

1. ブライダルの業態
2. ブライダル関連企業
3. ブライダルスペシャリストの職種

第2章 ブライダル市場

1. ブライダル市場とは
2. ブライダル市場の移り変わり
3. ブライダル市場の実態
4. ブライダル市場の地域性

第3章 ブライダルの歴史と慣習

1. 日本の歴史と慣習
2. 欧米の歴史と慣習

第4章 挙式と披露宴のスタイル

1. 挙式
2. 披露宴のスタイル

第5章 婚礼衣裳

1. 婚礼衣裳の種類
2. トータルコーディネート
3. 衣裳業務

第6章 ウエディングプランナーの業務と流れ

1. ウエディングプランナーの業務
2. ウエディングプランナーの業務の流れ

第7章 新規接客業務

1. 新規接客業務とは
2. 新規接客
3. 成約手続き業務

第8章 婚礼打合せ業務

1. 婚礼打合せ業務とは
2. 招待状
3. 婚礼料理
4. スペシャリストによる婚礼商品
5. 引出物と引菓子
6. 披露宴の進行と演出
7. テーブルレイアウトとペーパーアイテム
8. 装飾
9. 重要な書類
10. 手配(発注)業務
11. 最終打合せと確認事項
12. 打合せに必要なスキル

第9章 婚礼施行・進行管理業務

1. 婚礼施行・進行管理業務とは
2. 施行・進行管理

第10章 販売促進

1.ブライダルマーケティング
2.販売促進のツール
3.販売促進企画

付録

1.ブライダルサービス接遇
2.飲料サービスの基礎知識
3.日本の婚姻に関する法律的事項

練習問題

第1章 練習問題
第2章 練習問題
第3章 練習問題
第4章 練習問題
第5章 練習問題
第6章 練習問題
第7章 練習問題
第8章 練習問題
第9章 練習問題
第10章 練習問題

はじめに

 株式会社ジャスマックは1989 年、ハウスウエディングのパイオニアとしてゲストハウスの運営を始めました。「10 組のカップルには10 通りのウエディングを」という思いのもと、従来の日本にはなかったフリースタイルのウエディングのお手伝いをしてまいりました。そのかたわら、2000 年には米国のウエディングプランナーの資格『ウエディングスペシャリスト』を認定する『ウエディングスビューティフルワールドワイド』の日本支部として、ウエディングプランナーのスキルアップと人間力を高めることを目的とした人材育成・教育事業をスタートし、2013 年7 月にはウエディングスビューティフル協会を発足、ウエディング現場の運営から得られる情報をもとに、いま求められているブライダル教育のあり方を常に念頭に置きながら事業に携わっています。

 こうした歩みの中で数年来、米国スタイルのウエディング教育プログラムとともに“日本のウエディング”を学べる教材を望む声が、ブライダル関連の教育現場から高まってきたことから、このたび本書「日本のウエディングプランナー育成プログラム」を作成、上梓いたしました。

 本書は、日本のウエディングの歴史から伝統・慣習、そして現場での様々な実務の内容やその実践方法、さらに現在のブライダル事情まで網羅。最大の特色は、ウエディングの現場を持ち、ブライダル教育に力を注いできた『ウエディングスビューティフルジャパン』ならではの現場の声を反映させた「活きた知識の使い方」や、「研修マニュアルをもとにした実務」まで細部にわたり効率的に学習できる内容になっていることです。結婚を決意したカップルが結婚式を迎えるまでの流れに沿って、どのタイミングでどんな業務を行うのか、その業務に必要な知識は何かをわかりやすく構成し、解説しています。

 カップルのニーズが多様化する昨今、ウエディングプランナーに求められるスキルは高まる一方です。この実務テキストで幅広く実践的なスキルを身につけ、今後のブライダル現場での活動に活かしていただければ幸いです。

株式会社ジャスマック
ウエディングスビューティフルジャパン


CONTENTS

第1章 ブライダル業界

1. ブライダルの業態

 婚礼とは、婚姻を成立させるため、また確認するための儀式であり、人生の通過儀礼である。婚礼には多彩な様式があるが、日本においては一般に挙式と披露宴を行う。挙式は結婚を誓う儀式であり、披露宴は婚姻の報告とお披露目をする祝宴である。

 ブライダルビジネスはそうした「婚礼」を商品化して販売するサービス産業であり、日本には以下のような業態がある。新郎新婦が婚礼を行う際には、そのほとんどがこのうちのいずれかを利用する。また、ブライダルの仕事に就くというのは、このうちのいずれかに関わることを意味する。近年の傾向としてブライダルの業態は、新郎新婦のニーズの多様化に伴って様々な対応が必要となったため、業態による差がなくなりつつある。

1)ホテル

 今日の一般的な婚礼のスタイルはホテルブライダルから発祥し、ブライダル業界はホテルスタイルの婚礼を礎に発展してきた。ホテルとは宿泊施設であるが、その多くに宴会を取り扱う「宴会部門」があり、婚礼は宴会部門の主要な収入源となっている。

 ホテルの婚礼は一般的に、施設内に設けられた神殿やチャペルでの挙式と、宴会場(バンケットルーム)での披露宴で構成される。ホテルブライダルの特徴としては、館内の多種多様なバンケットルームで小規模から大規模まで幅広い婚礼ニーズに対応できること、控室などの設備が充実していること、衣裳・美容・装花・写真といったブライダルに不可欠なサービスの専門業者がテナントとして入っており、新郎新婦が効率よく、かつ安心して利用できる点などが挙げられる。さらにホテルは一般に地域的な知名度が高く、格調の高さやサービスの質も一定以上の水準を期待できることから、フォーマルな婚礼を望む新郎新婦には特に人気がある。

2)専門式場

 専門式場とは、婚礼を専門に取り扱う施設で、第二次世界大戦後に発展した日本特有の業態である。施設およびサービスの内容はホテルに似ているが、多くは宿泊施設を持たない。また、ブライダルが主業であるが、一般の宴会も受注し、双方により利益を得ている所もある。

 専門式場は、互助会系・公共系・一般に区別することができ、また、ブライダルをメインとした業態であるため、華やかなイメージを建物全体で表現していることも大きな特徴である。チャペルや神殿のほか多彩なバンケットルームが用意され、様々な規模の披露宴が可能であること、衣裳・美容・装花・写真などのテナントが入っていること、婚礼専門施設ならではの安心感も、新郎新婦にとって大きな魅力となっている。

互助会制度:会員制。一定期間会費を納め、積み立てることにより、葬儀や婚儀の際の高額な費用負担を軽減するシステム。

3)ゲストハウス

 ゲストハウスは、1990 年代半ばに生まれた邸宅型のブライダル施設である。「ゲストハウス」と称するものの、「家」ではなく商業施設で、宿泊設備も持たないため、主に挙式・披露宴のサービスで収益を得ており、戸建てタイプの専門式場といえる。

 特徴は大邸宅へゲストを招くイメージの婚礼をコンセプトとしている点で、敷地内に庭付き一戸建てを有することが多い。スタイリッシュな施設と他の新郎新婦と顔を合わせることのない「プライベート感」を大切にし、一軒丸ごと、あるいはフロア単位で貸し切れることをセールスポイントにしている。近年都市部では、利便性を重視した新たなビルインタイプのゲストハウスも登場し、フロアを貸し切り、従来の邸宅と同様のコンセプトを打ち出したウエディングを提供している。いずれにせよ欧米スタイルの婚礼を意識しているため、挙式用の施設はチャペルのみであることが多い。

 また、以前は衣裳や美容、装花、写真など、ブライダル関連のテナントが入っていることは少なく、各種アイテムは施設と提携している専門企業からの出張業務などにより手配されていたが、近年は関連事業を内製化する企業も増え、施設内に専門部署を構えるケースもでてきている。ゲストハウスは建物や雰囲気への憧れやプライベート志向が強く、アットホームな婚礼を求める新郎新婦に人気が高い。

4)レストラン

 レストランは、くつろいだ雰囲気とおもてなしの料理を何より重視する新郎新婦から支持を得ている業態である。形式ばらず自由度の高い婚礼が可能であること、少人数の披露宴に向いていることなども魅力とされ、新郎新婦が形式化された婚礼に疑問を抱き始めた1990 年頃から急速に人気を高めた。

 レストランは本来、料理と飲物を提供することが本業であるため、ブライダルはその延長上のサービスの1つに位置づけられ、婚礼であっても料飲サービスに主眼が置かれているのが特徴であった。施設面もブライダルを意識した造りは少なく、レストランスペースを婚礼で使用するという形が一般的で、かつては挙式スペースや来賓控室、新郎新婦の支度室、駐車場などの不備が指摘されやすかった。近年はそうした問題が徐々に改善され、ウエディングの運営を前提とした設備設計をして開業するレストランも現れ、ブライダルデスクを設置するなど、ゲストハウスと同様の施設・サービスを誇るレストランも増えてきている。

5)海外ウエディング

 近年は海外での挙式を希望する新郎新婦も多く、それに伴って海外へ進出し、日本人向けの婚礼ビジネスを展開している企業もある。海外ウエディングとは文字通り海外で結婚式を挙げることで、日本にはない、海外ならではのロケーションに憧れる新郎新婦が、新婚旅行を兼ねてこのスタイルを選ぶことが多い。最も人気の高い地域はハワイ・グアムで、ロケーションの素晴らしさや日本からのアクセスのよさ、日本人観光客の受け入れ態勢が整っていることなど数多くの利点があり、実施組数を見ても他の地域を大きく引き離している。

 挙式・披露宴に関しては、現地に日本企業が進出しているため、日本とほぼ同様のスタイルで行うことも可能であるが、現地では挙式のみ、あるいは挙式と家族の会食を行い、披露宴を行う場合は、日本に帰国後行うことが大半である。しかし、近年は海外での挙式のみで済ませ、披露宴を行わないケースも増えてきている。

 1980 年代までは挙式・旅行とも個人が 自力で手配する必要があったため、手配方法や現地の対応に不安を抱く人も多かったが、近年は海外ウエディング専門のエージェントや旅行会社が国内の各社サロンで打合せをし、挙式・旅行はもちろん、衣裳やヘアメイク、祝宴に至るまで一括手配が可能となっている。海外ウエディングは華やかな反面、いかに安心かつ確実なサービスを提供できるかが鍵といえる。

6)リゾートウエディング

 ロケーションを重視した新郎新婦のニーズは国内を対象としても高まっており、国内リゾート(避暑地・避寒地)での挙式・披露宴を扱うリゾートウエディングの企業も増えている。人気の高い地域は、沖縄・軽井沢・北海道などで、いずれも自然に囲まれ、ホテル・専門式場・ゲストハウス・レストランなどの様々な施設が都市部並みに充実している地域もある。

 舞台がリゾートというだけで一般的な挙式・披露宴が行われる場合もあるが、二人だけの挙式や、リゾート挙式後に居住地で披露宴を催すなど、その需要は多岐にわたる。国内リゾートウエディングは海外と違い、両親や親族、友人が参加しやすいことも大きな特徴である。予約方法は実施地の施設や教会に直接行う場合と、居住地付近の手配会社に依頼する方法がある。

プチウエディング・フォトウエディング
 ブライダル業界は、第二次世界大戦後の経済成長とともに、業界主導で発展してきた。しかし近年は新郎新婦の価値観やニーズが多様化・複雑化した影響で、業界主導のスタイルから、新郎新婦主導のスタイルへと移行し、ブライダル市場の変化にいち早く対応した業態も生まれてきている。その代表が「プチウエディング」である。

 プチウエディングには様々な形態があるが、共通するイメージは「小さな結婚式」で、「挙式+衣裳+記念写真」を中心としたプランを展開する企業が大半を占める。披露宴を催すつもりのないカップルでも「挙式だけはきちんとしたい」「花嫁衣裳を着た写真だけは残したい」と考えていることが多く、従来の「披露宴を中心にした婚礼」を販売する業態では、カバーしきれなかった層を主要のターゲットにした点で急成長してきた。

 また、近年は写真だけを残す「フォトウエディング」にも注目が集まっている。以前のフォトウエディングは、ウエディングドレスの写真を残すのみが主流だったが、近年は景観の良い場所でのロケーション撮影やテーマごとに装飾された専用スタジオなどを使用して撮影するフォトウエディングも人気となっている。
いずれにせよ、新郎新婦のニーズの変化に伴い、様々なカジュアルスタイルのウエディングが出現し、それらを略語で「○○婚」と表現している。


CONTENTS

2. ブライダル関連企業

1)ブライダルプロデュース会社

 ブライダルプロデュース会社とは、新郎新婦が思い描くスタイルの婚礼を形にし、実現することを主業とする企業である。

 業務形態としては、プロデュース会社が施設紹介から婚礼のプランニングおよび打合せ、当日の施行・進行管理までトータルに行うケースと、提携施設にプロデュース会社からプランナーを配属し、その施設の婚礼業務全般を請け負うケースに大別される。しかし近年は、直営婚礼施設を持たないのが一般的であったプロデュース会社が、自社の施設を経営することも増え、事業形態も複雑化してきている。収入源は、新郎新婦から直接得るプロデュース料と、契約している施設からのFB(Food & Beverage =料飲)コミッション、および付帯商品のリベートであることが多い。

コミッション:委託業務に対する手数料のことで、委任・委任状も指す。

リベート:支払い代金の一部を謝礼金・報奨金として支払い者に戻すこと。

2)ブライダルエージェント

 ブライダルエージェントとは、新郎新婦が婚礼施設を検討し選ぶ際に利用する企業である。ここでは二人が希望する婚礼のイメージや予算などをヒアリングし、希望に沿う婚礼施設を紹介する。基本的にブライダルエージェントと新郎新婦の間に費用は一切発生せず、ブライダルエージェントは婚礼施設から、婚礼が行われた後、FB(Food & Beverage =料飲)費用の5~ 10%を紹介料として得る。かつてはブライダルエージェントが主要駅周辺などにサロンを構える形態が多くみられたが、現在は少なくなっている。

結婚相談所
 結婚を希望する男女の出会いをプロデュースするのが結婚相談所である。ほとんどが会員制で、それぞれの写真・プロフィールや相手に対する希望などを登録し、結婚へ結びつけて成功報酬を得ることを目的としている。近年はインターネットを活用した出会いの場を提供する企業も増えており、気軽さから人気となっている。結婚が決まった二人に対して婚礼施設の紹介を行っている企業も増え、ブライダルエージェントと同じく、報酬として婚礼施設から紹介料を得る。

3)パートナー企業(取引先)

 パートナー企業(取引先)とは、婚礼に関連する様々な専門商品およびサービスを提供する企業である。代表的なパートナー企業には衣裳・美容・装花・写真の事業者があり、婚礼施設へテナントとして入る場合と、委託販売契約を結んで商品・サービスを受注する場合がある。基本的に、テナントとして入る場合はテナント料を婚礼施設へ支払い、委託販売では契約内容によるリベートが発生する。

1 衣裳
 新郎新婦が婚礼衣裳を入手する方法は、「借りる」または「買う」方法があり、一般的には「借りる」場合が多く、各婚礼施設では、主に「貸衣裳」を取り扱う企業とパートナー契約を結んでいる。貸衣裳業者は婚礼施設外の店舗で接客する場合と、婚礼施設にテナントとして入店する場合がある。婚礼施設との契約は、テナント料を支払うか、衣裳の売上に対して契約したパーセンテージのリベートが発生するのが一般的である。近年では婚礼施設が直営衣裳室を開設し、貸衣裳業を運営する例も多くなっている。

2 美容
 新郎新婦が婚礼衣裳を身にまとう際には、美粧や美容が施される。美粧とは、美しく化粧し、身なりを飾ることで、美容とは、髪や顔、肌を手入れして容姿を美しく整えることである。その新郎新婦の支度を一般的には「美容」といい、この「美容」を行う企業が、婚礼施設と業務提携し、パートナー企業として業務を担当する。基本的には婚礼施設内に美容テナントとして入るが、施設によっては常駐ではなく、パートナー企業からその都度スタッフが派遣されることもある。婚礼施設との契約は、テナント料を支払うか、美容の売上に対して契約したパーセンテージのリベートが発生するのが一般的である。一部ではあるが、婚礼施設が美容室を直営している場合もある。

3 装花
 花は婚礼に欠かせないものであり、用途も装飾、演出、フラワーアイテムと幅広い。その花に関するすべての業務を行う企業が、パートナー企業として婚礼施設と業務提携を結んでいる。婚礼施設内にテナントとして入る場合と、外部のフラワーショップや作業場で商品を制作し、納品・装飾を行う際にスタッフが出向く場合がある。婚礼施設との契約は、テナント料を支払うケースと、装花の売上に対して契約したパーセンテージのリベートが発生するケースが一般的である。婚礼施設が生花部を設け、直営していることもある。

フラワーアイテム:花で作られたヘア小物やアクセサリー、フラワーシャワー用の花びらなど、小さなアイテムのこと。

4 写真と映像
 新郎新婦は婚礼の記念にプロによる写真や映像の撮影を希望するが、この写真や映像に関する業務全般を請け負うのが、婚礼施設と業務提携を結んだパートナー企業である。婚礼施設内にテナントとして入り、撮影スタジオを運営する場合と、スタジオは持たずにフォトグラファーを派遣し、施設内のロケーションを利用して撮影する場合がある。婚礼施設との契約は、テナント料を支払うか、商品の売上に対して契約したパーセンテージのリベートが発生するのが一般的である。一部ではあるが、婚礼施設が撮影スタジオを直営している場合もある。

5 その他
◆ 引出物・引菓子
祝宴の際に主催者側から招待客に贈る記念品や祝い菓子を取り扱う企業で、婚礼施設内で見本を展示したり、カタログやPCデータを用いたりして商品を案内する。商品決定後は、搬入も行う。婚礼施設へは、売上に対するリベートが発生する。
◆ 印刷物
招待状・席次表・席札などの印刷物を取り扱う企業で、婚礼施設に見本を置き、商品を案内する。商品決定後は印刷業務も行い、納品する。婚礼施設へは、売上に対するリベートが発生する。
◆ 演出
挙式・披露宴で行われる演出商品を取り扱う企業で、ブライダルフェアでの実演や、PR用イメージ画像などで商品を案内する。商品決定後は搬入と、場合によっては当日のオペレーション業務も行う。婚礼施設へは、売上に対するリベートが発生する。
◆ 旅行
ハネムーンなどの旅行商品を取り扱う企業で、婚礼施設にパンフレットを置くなどして商品を案内する。最近では来館者が多い日のみ、婚礼施設内に旅行デスクを構える企業もある。決定後は手配業務を行う。婚礼施設へは、売上に対するリベートが発生する。
◆ ジュエリー
婚約指輪・結婚指輪を取り扱う企業で、ブライダルフェアでの展示やパンフレットで商品を案内する。新郎新婦が購入を希望した場合は、婚礼施設外の直営店舗などで商品を販売する。
婚礼施設へは、売上に対するリベートが発生する。
◆ 配膳会
婚礼当日のバンケットルーム内の料飲サービス業務を担う企業で、婚礼施設から婚礼に必要なサービススタッフの人数の派遣依頼があり、その人数を派遣する。スタッフの雇用形態は様々で、常勤の場合もある。契約内容に沿ったリベートが発生する。

持込料(保管料)とは
 持込料とは、新郎新婦が婚礼施設外で手配した衣裳・引出物などを持込む際に、婚礼施設へ支払う費用のことである。持込料は「保管料」ともいわれ、商品を預かる時点で商品の保管責任義務が婚礼施設側に生じることを理由に請求される。しかし基本的には、婚礼施設と委託業務契約を結んだパートナー企業の売り上げ減を防止し、業務提携を良好に保つことを目的としている。


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3. ブライダルスペシャリストの職種

 ブライダルの業務は多種多様であり、それぞれにスペシャリストを必要とする。各スペシャリストはプロフェッショナルとしての専門知識と技術を習得していることはもちろん、チームワークを円滑に進める「コミュニケーション力」や、新郎新婦とゲストを温かく迎える「ホスピタリティ」も求められる。ブライダルの職種と業務内容、必要なスキルは下記の通りである。

1)ウエディングプランナー

 婚礼施設やブライダルプロデュース会社に在籍し、「新規接客」「婚礼打合せ」「婚礼施行・進行管理」を行う。業務範囲は在籍する企業の体制や方針などによって異なるが、大きく分けると「分業スタイル」と「トータルスタイル」がある。

施行(せこう):「施行」は一般的には「しこう」と読むが、ブライダル業界では婚礼会場の当日に関わる業務を施行(せこう)という。

◆ 分業スタイル
以下のタイプがある。
①「新規接客」・「婚礼打合せ」・「婚礼施行・進行管理」の各業務に分業される。
②「新規接客+婚礼打合せ」と「婚礼施行・進行管理」に分業される。
③「新規接客」と「婚礼打合せ+婚礼施行・進行管理」に分業される。

◆ トータルスタイル
「新規接客+婚礼打合せ+婚礼施行・進行管理」を一人のプランナーがすべて担当する。

 ウエディングプランナーに求められる能力は、新郎新婦との信頼関係を築き、パートナー企業やバンケット内のサービススタッフとのスムーズな連携をはかるためのコミュニケーション力、そして新郎新婦の期待以上の婚礼を叶えるための企画力や提案力である。また、新郎新婦と長期間にわたり関わっていくため、新郎新婦を精神的にケアする支援力、相手の立場に立って真剣に話を聞く傾聴力などのヒューマンスキルも求められる。

ヒューマンスキル:良好な人間関係を築くために必要な能力。技術力や知識力などの「テクニカルスキル」に対する能力で、近年の企業採用では、この両方を備えていることが重視される。

2)ドレスコーディネーター

 貸衣裳店やドレスショップ、婚礼施設内の衣裳室などに在籍し、婚礼衣裳全般の業務を行う。企業によって業務範囲が異なるが、打合せ、フィッティング、コーディネート、衣裳直し、メンテナンス(クリーニング、プレス)、婚礼施設への搬入・搬出、買付け、ディスプレイ、在庫管理などの業務を担う。

ドレスコーディネーターに求められるのは、婚礼衣裳に関する豊富な知識とコーディネートのセンス、お客様が相談しやすい雰囲気をつくるコミュニケーション力、マナーをわきまえた接客技術などである。衣裳選びは新婦の大きな楽しみであり、夢を叶えるひとときでもあるので、満足感を高めるきめ細かな配慮も必要である。

3)ブライダルアテンダント(介添え)

 婚礼施設内に非常勤として在籍し、当日の新郎新婦のエスコートや身の回りの世話を担当する。新郎新婦が来館した時、もしくは支度完了後から披露宴終了後のお引上げまで、婚礼の進行に沿ってサポートするだけでなく、両親や列席者への細やかな配慮も大切な業務となる。

ブライダルアテンダントに求められる能力は、婚礼全般に関する知識、いかなる人とも良好な人間関係を築けるコミュニケーション力、礼儀正しく控えめな態度などである。また、婚礼当日は、温かな気配りで新郎新婦を支え、安心感を与えられる人物であることが望ましい。なお、ユニフォームが和装の場合は「介添え」、洋装の場合は「ブライダルアテンダント」と呼び分けるのが一般的に多いようだが、業務内容は同じである。近年はヘアメイクを担当するスタッフやウエディングプランナーが兼任することも増えてきている。

お引上げ:挙式・披露宴の衣裳とヘアメイクから日常の服とヘアメイクに戻すこと。

4)ブライダルヘアメイクアーティスト

 ヘアメイクサロンや婚礼施設内の美容室などに在籍し、婚礼の美容を業務とする職種である。美容師資格や和装着付け技術の有無によって担当する業務内容が異なり、新郎新婦だけでなく、両親やゲストの美容を行うことも多い。業務範囲は、ヘアメイクの打合せと当日の支度からお引上げまでが基本で、希望があればヘアメイクリハーサルを行うこともある。

ヘアメイクアーティストに求められる能力は、美容技術・着付け技術に加え、婚礼全般の知識、衣裳・ブーケ・花の知識、豊かな提案力とコミュニケーション力など多岐にわたる。新郎新婦の不安や緊張をほぐす気配りや、流行をほどよく取り入れる感性も不可欠である。

5)ブライダルフラワーコーディネーター

 生花店または婚礼施設内の生花部に在籍し、ブライダルフラワー全般の業務を行う。ブライダルフラワーは、ブーケ、装飾、演出、小物と多彩なアイテムで展開される。フラワーコーディネーターの業務も、打合せからデザイン、制作、当日の施行までと幅広い。

ブライダルフラワーは新郎新婦の婚礼のイメージを伝える重要なアイテムであるため、デザイン力、制作技術、装飾技術はもとより、新郎新婦への的確なアドバイスを含めた提案力が必要となる。説得力のある提案を行うには、婚礼全般の知識や衣裳・ヘアメイクの知識、スムーズに打合せを進めるためのコミュニケーション力なども備えておきたい。

6)ブライダルフォトグラファー・ビデオグラファー

 写真館や映像制作会社、婚礼施設の写真室などに在籍し、婚礼写真・動画の撮影やアルバム制作・映像編集などの業務を行う。また、フリーランスのフォトグラファー・ビデオグラファーが婚礼アルバム制作会社や映像制作会社などに所属(登録)し、当日の撮影のみを請け負うこともある。婚礼写真や動画は一生の記念として残る重要なアイテムで、撮り直しもきかないため、ミスが許されない厳しい職種である。

撮影技術およびセンスはもとより、当日の進行を把握して他のスタッフと連携をとるコミュニケーション力、撮影ポイントを把握するための婚礼知識なども欠かせない。さらに円滑に撮影を進めるには、新郎新婦およびゲストに対するマナーを心得ていることも大切である。また、アルバム制作や動画の編集も行う場合、昨今の新郎新婦はデザイン性の高い商品を求める傾向にあるため、高度な制作テクニックも必要となる。

7)ブライダルMC(司会者)

 MCとは「Master of Ceremony」の略で、婚礼の司会進行を専門とするスペシャリストである。司会専門の企業に在籍または所属(登録)し、婚礼当日に婚礼施設へ派遣され、業務を行う。ブライダルMCは、婚礼の進行打合せや演出の提案など、プランナーの打合せ業務の一部を担うこともある。

人前式や披露宴の司会進行を婚礼担当スタッフと連携をとりながら行う必要があるため、婚礼全般の知識、企画・提案力、コミュニケーション力が求められる。また、パフォーマンス力やハプニングにも冷静に対応できるヒューマンスキルも重要である。

8)ディレクター(キャプテン)

 婚礼施設内の宴会部門または配膳会に在籍し、婚礼に関するディレクション業務の責任者として施行確認、当日の進行管理を担当する。新郎新婦との打合せを担当したウエディングプランナーより事前に引き継ぎが行われ、バンケット内のサービススタッフに指示を与えて連携をとりながら、バンケット内での新郎新婦の先導やサポート業務を行う。

ディレクターに求められる能力は、婚礼全般の知識、スタッフとのスムーズな連携をはかるためのコミュニケーション力、洗練されたサービス接遇スキルやマナー接遇スキルなどである。司会者同様、どのようなハプニングにも冷静かつ臨機応変に対応できるヒューマンスキルも必要である。

9)音響オペレーター

 音響専門の企業や婚礼施設内に在籍または所属(登録)し、音響オペレーションを業務とする。当日のオペレーション以外に、音響の打合せから音の編集、場合によっては映像や照明のオペレーションを行うこともあり、音と光で披露宴を効果的に演出する。

音響オペレーターに求められる能力は、オペレーション技術、音楽や婚礼全般の知識、企画・提案力、スタッフとの連携をはかるためのコミュニケーション力などである。最近では新郎新婦が希望の曲をリクエストすることも多いため、曲の編集技術などのスキルも必要である。

10)その他

 ブライダルの仕事は、多くのスタッフのチームワークで成り立っている。前述した仕事以外にも以下のようなスペシャリストが婚礼に関わっている。
◆ 調理士(キッチンスタッフ)
婚礼施設に在籍し、婚礼料理の調理と盛り付けを担当する。
◆ サービススタッフ(バンケットスタッフ)
配膳会または婚礼施設に在籍し、主に料飲サービスを担当する。
◆ 演出オペレーター
演出のパートナー企業に在籍し、婚礼の演出の施行とオペレーションを担当する(花火・光の演出など)。
◆ 装飾スペシャリスト
装飾のパートナー企業に在籍し、婚礼装飾の施行を担当する(バルーンなど)。

コンセプトウエディング
 近年はフリーランスのウエディングプランナーを中心に、装飾や演出など、各分野のスペシャリスト数名とチームを組んで、新郎新婦からニーズを引き出し、ゼロからオリジナルウエディングを創り上げる「コンセプトウエディング」を行っているスペシャリストも増えている。このスペシャリストたちは必ずしもブライダル業界専任とは限らず、それぞれの専門分野で活躍しているケースも多い。いずれにせよ、デザイン性の高い技
術やセンスを兼ね備えていることが魅力の一つとなっているようだ。


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