第7回
2019/5/13
放送
劇場版 長崎ミッケ オーシャンブルーの悪魔<伊王島>
マゴノテの長崎ミッケはこちらからもお聞きいただけます
作家の西垣です。
何を隠そう、この日一発目のロケである。
前日は鍋冠山で銀竜草を探す収録で終えていた。
気持ちも身体も冷え込んだ。
鍋冠山も、もうこれ以上探しても何もないと言っていた。
鍋冠山「銀竜草なんてないよ。
そもそも見つけたところで、どうってことないんじゃない?」
西垣「いやーけど盛り上がるかもしれないじゃないですか?」
鍋冠山「盛り上がらないよ、そもそもレアかどうかも分からないし。
しかも銀竜草って腐生植物よ、
虫の中であのもっとも嫌われているあいつが…」
西垣「すみませんやめてください」
鍋冠山「では、さいなら」
と鍋冠山の口のから、ぺっと吐き出されて、どさっとたどり着いたのは、
思案橋にある、お寿司屋さんである。
NBCの今福さんがよく行くお店らしく
店内にはラジオのポスターが貼られていた。
「僕たちラジオをとってきたんですよ」
と今福さんが寿司屋の大将に言いやがった。
「おお、すごいね」
と、僕らが客であるがために、最低限の感想を言った大将。
今福よ、ラジオのことなんて言うなよ、恥ずかしい、と思っていた。
なおも、恥福さんはとどまることを知らず。
「長崎ミッケという番組です」
「ほへー」
からっからの、ほへーが寿司屋の大将の口から溢れる。
寿司屋の大将は、これ以上お前はしゃべるなと口をふさぐように、
今福さんに寿司を突き出した。
彼は、寿司をかわすや、いなや
「5分間の外ロケ番組です」
もうやめろ、もう番組もなにもかもやめだ。一人で抱えきれなくなった大将が、
「ラジオとってきたんだってよ」と奥の店員に声をかえた。
「えっ、そうなんですか」
と勢いよく暖簾をくぐって、現れた店員。
カウンターを見ると、全く知らない顔が4つ並んでいる。
「あ、そうなんですか」と、さっきとは抑揚の違う、
同じ「そうなんですか」を聞くことになってしまった。
そんなことで、その日は多いに痛飲し、お互いが、ああすればよかった、
実はこうだったんじゃないか、と当てずっぽうな反省会をし、解散となった。
で、そのあくる日の一発目の収録である。
山がダメなら、海!ということで海にやってきた。
バカである。
NBCの厚顔無恥福さんは、古藤が海の感想を言い終えたにも関わらず
「この海どうですか?」と聞いてやがる。
重光くんは4月なのにビーチサンダルだ。白昼夢のような光景にくらっとする。
この日は重光くんの鼻息が荒かった。足手まとい福の体たらくぶりをカバーしようと思っているのだろうか。
写真を撮ってくれるのは、いつも重光くんだ。
なんだがちょっとでもいい構図にしてやろうと、
はなれてとってやがる。
撮った写真は後日、わざわざタイトルをつけて送ってくれた。
このように律儀である。あたまが下がる丁寧な仕事だ。
しかしこれを見てほしい。
これだけでも今回のロケを、重光くんが期待しているのかが分かる。
「水が透き通るキレイな…!」
いや、シンプルにタイトルは「海」で十分だ。
さらにこれである。
「あっ!サンゴ!」
完全に重光くんの主観が入ってしまっている。
「あっ!」は絶対に必要がない。
彼は「経費」のファイルにも「あっ!経費!」と書くのか、
「契約書」のpdfファイルにも「あっ!契約書!」と書くのだろうか。
書くなら仕方ない。なんだかそれも悪くないような気がしてきた。
早く処理しなきゃ!契約しないと!という感じが出てくる。
その他のファイルを見返してみると、
こういうのもあった。
途中で切れているが、
「優しい!めっちゃ案内してくれる!」だった。
確かに、このおじさん案内してくれて助かったと思い出してきた。
写真にタイトルをつけるのはいい方法かもしれない。
ちなみにこれは僕が撮った写真。
タイトルは
「よく分からないものを見つめる古藤」である。
ベンチの下に何かがある。けど写真を拡大しても何かは分からない。
次回も、海です。
伊王島です。実は伊王島は、なかったのではないかと謎に迫るミステリアスな企画です。
劇場版コナン風につけると
「劇場版長崎ミッケ 14番目の幻島(ファントムアイランド)」です。
ぜひお聞きください!