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ススキノちかくの銀行で働くサラリーマン。
38歳。最近いきつけのバーでよく寝てしまう。
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バー【JM】のマスター。甘いものに目がない。
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札幌の大学に通い、ちょうど就職活動の真っ最中。
はくとの夢の中に登場。
「自分なら、こんなお店を…」と、
言いかけたところで、ジンフィズが運ばれてきた。
暖房の風に吹かれた、グラスの氷がカランと音を立てる。
レモンの香りが、日頃の銀行業務の疲れを癒してくれる。
僕が入社した当初、たまたま同僚と入った、このバー【JM】。
月に2度3度と通い、15年たった今では常連になってしまっていた。
しまっていたというのは、バーに失礼だけど、別に色気のある店じゃないし、
マスターはいい人だけど、ちょっと太りすぎていて、
バーカウンターに腹がこすれて、歩くたびに、グラスがちんちんと鳴った。
僕は勤めていた銀行で、札幌支店長・補佐になっていた。
はたから見れば順風満帆、
だけど、どこか空虚なチクっとした痛みがある。